Fosi Audio V3 Mono
TPA3255とPFFB技術を採用したClass Dモノブロックアンプ。透明レベルの測定性能を持つが、グローバル市場でのコスト評価は厳しい。
概要
Fosi Audio V3 Monoは、Texas InstrumentsのTPA3255チップを搭載したClass Dモノブロックパワーアンプです。2024年に発売された本製品は、同社初のPFFB(Post-Filter Feedback)技術を採用し、従来のClass Dアンプの負荷依存性問題を解決することを目指しています。4Ω負荷時240W、8Ω負荷時120Wの出力を持ち、日本製ニチコンフィルターコンデンサやドイツ製WIMAコンデンサなど高品質部品を4層PCB上に実装することで、THD 0.006%という優秀な測定性能を達成しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]V3 Monoの測定性能は優秀な結果を示しています。THD+N 0.006%、SINAD 101dB(XLR入力時)、SNR 123dBという数値は、測定結果基準表の透明レベルに近い水準を達成しています。THD+N 0.006%は基準表の理想値0.01%以下を大幅に下回っています。PFFB技術により負荷インピーダンスに関わらずフラットな周波数特性を維持し、ダンピングファクターも100以上を確保しています。240W@4Ω、120W@8Ωの出力は十分な駆動力を提供します。ただし、RCA入力時のSINAD 93dBはXLR入力時の101dBと比較して劣化が見られるため、若干の減点要素となります。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]TPA3255チップの採用とPFFB技術の実装は技術的に先進的です。PFFB技術はClass Dアンプに共通する負荷依存性問題を効果的に解決し、スピーカーインピーダンス特性に関わらず一貫した周波数特性を維持します。日本製ニチコンコンデンサ、ドイツ製WIMAコンデンサ、住田インダクタなど高品質部品を使用し、オペアンプ交換によるカスタマイズも可能です。ただし、基本的にはTIのリファレンス設計構成をベースとしており、革新的な独自技術は限定的です。また、モノブロック構成の技術的必然性が不明確な点も評価を下げる要因となります。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.5}\]グローバル市場での価格を基準に評価します。同等以上の性能を持つ最安の代替製品として、AIYIMA A07 MAXが存在します。A07 MAXは同じTPA3255チップを搭載し、SINADも同等レベルの性能を持ちながら、ブリッジ接続でV3 Mono同様のモノラルアンプとしても、単体でステレオアンプとしても使用可能です。V3 Monoの価格169 USDに対し、A07 MAXは約83 USDで入手可能です。計算式は 83 USD ÷ 169 USD = 0.49
となり、四捨五入して0.5の評価となります。(日本国内参考価格:V3 Mono 約19,999円、A07 MAX 約13,999円)
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]Fosi Audioは比較的新興のメーカーで、長期的な信頼性データは限定的です。保証期間とサポート体制は業界平均水準にあると推定されますが、具体的な故障率やMTBFデータは公開されていません。無音状態が10分間続くとスタンバイモードに移行する自動電源ON/OFF機能を備えた省エネ設計は評価できます。ファームウェア更新が不要な純粋なアナログ回路のため、この面での問題は発生しません。ただし、新興メーカーとしての実績不足が評価を下げる要因となります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.7}\]PFFB技術による負荷不変性の実現は科学的に合理的なアプローチです。測定性能向上に直接寄与する技術的改善を実装し、オカルト的要素を排除しています。ただし、モノブロック構成の必然性には疑問があります。同じTPA3255チップを使用するステレオアンプでも同等の音質を実現できる可能性が高く、2台構成に加えて別途プリアンプが必要な構成は、ユーザーにとって複雑さとコストの増加を招くかもしれません。オペアンプ交換による「音質調整」も、測定上有意な差が生じる可能性は低い範囲での変更に留まる可能性が高く、完全に合理的とは言えません。
アドバイス
V3 Monoは優秀な測定性能を持ち、PFFB技術による負荷不変性は実用的なメリットを提供します。しかし、ステレオ再生には本機が2台(グローバル価格で約338 USD)必要となり、コストパフォーマンスに課題があります。より合理的な選択肢としてAIYIMA A07 MAX(約83 USD)が挙げられます。A07 MAXは単体で高性能なステレオアンプとして機能する上、ブリッジ接続でV3 Monoと同等のモノラルアンプとしても使用でき、はるかに安価で柔軟性も高いです。PFFB技術に強いこだわりがない限り、ほとんどのユーザーにとってA07 MAXやFosi Audio V3ステレオ版がよりコスト効率の良い選択となるでしょう。
(2025.7.23)