Hegel H80

参考価格: ? 310000
総合評価
2.3
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.3

ノルウェーの老舗Hegelによる生産完了済みインテグレーテッドアンプ。SoundEngine技術を搭載したクラスAB設計で堅実な測定性能を示すものの、同等以上の性能を大幅に安価で実現する代替品の存在により、コストパフォーマンスは低い。

概要

Hegel H80は、ノルウェーの高級オーディオメーカーであるHegel Music Systemsが開発したインテグレーテッドアンプ兼DACです。同社独自のSoundEngine技術を搭載したクラスAB設計により、定格75W(8Ω)の出力を持ちながら、実測では90.8W(8Ω)を達成しています。デジタル入力(USB、光学、同軸)とアナログ入力(RCA、XLR)を備えた多機能性と、1000を超えるダンピングファクターが特徴的です。現在は生産完了となっており、中古市場でのみ入手可能となっています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

SoundStageによる第三者測定では、THD+Nが70Wまで0.02%以下、12kHz以上で0.01%以下という歪み特性を示していますが、S/N比100dBは透明閾値105dBに達していません。クロストークは-100dB以下で基準を満たします。周波数特性は70Hz以下でロールオフが見られ、10Hzで-0.5dBですが、20Hz-20kHzで±0.5dBを完全に達成していません。ダンピングファクターは100Hz-4kHzで1000以上と優れています。全体として測定結果は透明基準を部分的に満たしますが、全指標をクリアしておらず、科学的に有効な可聴改善は限定的です。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

Hegel独自のSoundEngine技術は、クラスAの利点を保持しながらクラスABのクロスオーバー歪みを軽減する設計思想に基づいています。実測90.8W(8Ω)、135.8W(4Ω)という定格を上回る出力性能と、1000を超えるダンピングファクターは確実な実装の証拠です。デジタル回路とアナログ回路の統合により、USB、光学、同軸のデジタル入力を内蔵DACで処理します。しかし、基本回路はクラスABの範疇で革新的要素は限定的です。現在の水準から業界平均をやや上回る程度です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

Fosi Audio ZA3(約23,000円)は、H80と同等以上の機能・性能を提供します。48V PSU使用で最大90W(8Ω)出力、THD 0.006%以下、S/N比106dB以上という測定性能はH80に匹敵または上回っています。RCA、XLR入力、TPA3255チップによるデジタル処理、サブウーファー出力、モノモードも備え、機能面で同等です。H80の当初価格約310,000円に対し、23,000円 ÷ 310,000円 = 0.074という計算が示すように、同等性能を約7.4%の価格で実現可能であり、コストパフォーマンスは低いです。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

Hegelは1988年創業のノルウェーの老舗メーカーとして信頼性を確立しています。シンプルなクラスAB設計により故障リスクは低いと考えられます。ただし、生産完了により新品購入や長期サポートに制約があります。ノルウェー本社からの距離で日本国内サポートは限定的です。総合的に業界平均をやや上回りますが、生産完了が評価を下げます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.3}\]

SoundEngineによるクラスAB改良アプローチは理論的に合理的で、高ダンピングや低歪みの測定益が確認できます。デジタル入力統合は現代音源対応に寄与します。しかし、クラスD設計で同等以上の性能を大幅に安価に実現可能となっており、高価格クラスAB専用機器の必然性は著しく低いです。Fosi Audio ZA3のような製品が同様機能と優位指標を低価格で提供する現実から、市場位置づけと旧来トポロジーへの固執の合理性は限定的です。

アドバイス

Hegel H80は測定性能が堅実ですが、生産完了で新品入手は不可能です。中古検討時も、Fosi Audio ZA3のような現行品が同等以上の性能(THD 0.006%、S/N比106dB)を約23,000円で実現している点を考慮してください。ブランド以外の客観的優位性は見出しにくいです。予算重視ならFosi Audio ZA3を、最新技術を求めるなら他の現行品をお勧めします。

(2025.8.3)