HiBy R1

参考価格: ? 16800
総合評価
2.8
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.5
コストパフォーマンス
0.3
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.6

HiBy R1は16,800円のエントリーレベルDAP。CS43131 DACを搭載し優秀な測定性能を示すが、スマートフォン+DACドングルの組み合わせと比較してコストパフォーマンスに課題がある。

概要

HiBy R1は中国のHiBy社が開発したエントリーレベルのデジタルオーディオプレーヤー(DAP)です。16,800円という手頃な価格でありながら、Cirrus Logic製のCS43131 DACチップを搭載し、32bit/384kHzのPCMおよびDSD256までの高解像度音源再生に対応します。83.5×51.1×12.35mmのコンパクトな筐体に800×480のIPSタッチスクリーンを搭載し、Bluetooth 5.1によるLDAC、aptXコーデックサポート、さらにWi-Fi接続によるTIDALやQobuzストリーミングサービスにも対応した多機能なポータブル音楽プレーヤーです。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

HiBy R1の測定性能は優秀な結果を示しています。最小歪率0.001%は透明レベルである0.01%を大幅に下回り、ダイナミックレンジ122dBは透明レベルである105dBを大きく超える性能です。低ノイズ設計により、微細な音楽信号も正確に再現できます。最大出力電圧1.8V、最大出力101mWにより600オームまでの高インピーダンスヘッドホンにも対応可能です。CS43131 DACの性能を適切に活用し、科学的に可聴な音質改善効果が期待できる設計となっています。

技術レベル

\[\Large \text{0.5}\]

技術面では業界平均的な水準にとどまります。搭載されるCS43131 DACは確立された設計のチップであり、X1600E SOCも標準的な処理能力を提供します。独自技術としてはMSEB(MageSound 8-Ball)による音質調整機能を搭載していますが、これは既存のDSP技術の応用範囲内です。筐体設計はプラスチック製で軽量化を図っているものの、技術的な革新性は限定的です。全体として堅実な設計ではありますが、業界をリードする先進技術の投入は見られません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.3}\]

コストパフォーマンス評価では課題が明確になります。同等のCS43131 DACを搭載したShanling UA Mini DACドングルが5,500円で入手可能であり、スマートフォンとの組み合わせで同等の音質性能が実現できます。計算式5,500円÷16,800円=0.327となり、四捨五入で0.3の評価となります。専用DAPとしての利便性は認められるものの、純粋な音質性能で比較した場合の価格優位性は限定的です。より安価な代替手段が存在することで、コストパフォーマンスの評価が低下しています。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

HiByは中国のオーディオメーカーとして一定の実績を有しており、製品サポート体制も標準的な水準を維持しています。1150mAhバッテリーによる15時間の連続再生、400時間のスタンバイ時間は実用性の観点で評価できます。ファームウェア更新による機能追加も定期的に実施されており、製品の継続的な改善が図られています。ただし、老舗メーカーと比較すると企業としての歴史は浅く、長期的なサポート継続性については注視が必要です。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.6}\]

音質重視の設計思想は合理的ですが、専用DAPとしての存在意義に一部疑問が残ります。CS43131 DACの性能を適切に引き出す回路設計は評価できるものの、スマートフォン+外付けDACの組み合わせで同等性能が達成可能である現状では、専用機器としての必然性が弱くなっています。ストリーミング対応やタッチスクリーン搭載など利便性向上の取り組みは認められますが、汎用機器による代替可能性を覆すほどの差別化要因は限定的です。音質測定値の改善を目指す方向性は合理的といえます。

アドバイス

HiBy R1の購入を検討される方には、使用目的の明確化をお勧めします。純粋な音質性能を求める場合、同じCS43131 DACを搭載したShanling UA Mini(5,500円)とスマートフォンの組み合わせが大幅に安価で同等性能を実現します。ただし、専用音楽プレーヤーとしての操作性、バッテリー持続時間、ストリーミング対応を重視される場合はR1の価値が高まります。特に音楽ライブラリ管理の利便性や、スマートフォンのバッテリー消費を避けたい用途では意味ある選択となります。予算制約がある場合は、まずDACドングルでの音質改善効果を確認してから専用DAP購入を検討されることをお勧めします。

(2025.8.4)