HiBy RS6

参考価格: ? 215000
総合評価
2.6
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.3
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.2

離散R2R DACアーキテクチャを採用した高級デジタルオーディオプレイヤー。印象的な技術設計だが、スマートフォン代替品との比較でコストパフォーマンスに疑問

概要

HiBy RS6は、HiBy独自のDarwinアーキテクチャを採用し、完全離散抵抗ラダー(R2R)DAC実装を特徴とするフラッグシップデジタルオーディオプレイヤーです。価格は1399 USD(約215,000円)で、96個の個別マッチング抵抗(0.1%許容差)とAndroid 9を搭載したQualcomm Snapdragon 660プロセッサを組み合わせています。DSD256および768kHz PCM再生に対応し、オーバーサンプリング/ノンオーバーサンプリングモードの切り替えが可能で、R2R DAC技術による専用ポータブルオーディオソリューションを求めるオーディオファイルをターゲットとしています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

HiByは、メーカーデータによると114dB SNRと0.003% THDを含む印象的な仕様を謳っており、両方とも透明性能閾値を超えています。離散R2R実装は、シングルエンドで180mW@32Ω、バランスで690mW@32Ωの出力パワーを実現します。しかし、Audio Science Reviewなどの確立されたテスト機関による包括的な第三者測定は入手できないため、性能検証は暫定的です。R2R アーキテクチャは、技術的にはデルタシグマ設計と異なりますが、より「アナログ」な音質特性というマーケティング主張にもかかわらず、本質的に優れた測定性能を保証するものではありません。なお、外部透明性の高い携帯代替品として、Apple USB-Cアダプタの高SINADおよび0.9Ω出力インピーダンス等の測定値が公開されています[1]。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

RS6は、直線性補償アルゴリズムを備えた96個の離散マッチング抵抗を特徴とするDarwinアーキテクチャを通じて、優れた技術的成果を実証しています。これは、チップベースソリューションを大幅に上回る技術的進歩を表し、切り替え可能なフィルタリングモード、DSDバイパス機能、および高度な信号処理を組み込んでいます。OPA1642/1612/1622オペアンプを使用した電流モード増幅は、慎重なアナログ設計を示しています。オープンアプリインストール機能を備えた完全なAndroid 9実装は、専用オーディオプレイヤーではまれに見られる現代的な機能を提供し、ポータブルオーディオ分野における真の技術革新を表しています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.3}\]

1399 USDのRS6は、スマートフォン+測定透明なポータブルDAC/AMP構成と比較して大きな不利があります。等価以上の最安構成として、スマートフォン(Motorola moto g play 2024、149.99 USD、公式サイトの価格タイル)[2]+Topping G5ポータブルDAC/AMP(299 USDの現行価格)で、測定透明性と大幅に高い出力(≈1200mW@32Ω)が確認できます[3][4]。等価性(ユーザー視点):スマホアプリによる再生機能は同等、[3]により測定透明、出力はRS6(32Ωで690mW、メーカー値)以上で高負荷ヘッドフォン対応。

コストパフォーマンス計算:(149.99 USD+299 USD) ÷ 1399 USD = 0.32 → 0.3(小数1桁丸め)。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

HiByは、標準的な保証範囲と妥当なカスタマーサポート体制を備え、ポータブルオーディオ市場において確立されたポジションを維持しています。Android 9基盤は、将来のファームウェアアップデートとアプリ互換性の可能性を提供しますが、よりシンプルな専用オーディオプレイヤーと比較して複雑さも導入します。具体的な長期信頼性データや故障率は公開されていません。Snapdragon 660プロセッサは古いですが、モバイルアプリケーションにおいて実績のある安定したハードウェアを表しています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.2}\]

RS6の設計思想は、混在した合理性を示しています。離散R2R実装は印象的な技術的実行を実証していますが、同等または優れた測定性能がはるかに安価な代替品で利用可能な場合、基本的な前提は科学的支持を欠いています。R2R DACがより「アナログ」または「自然」な音を生成するという主張は、客観的測定によって立証されていません。離散コンポーネントと複雑なアナログ回路への高投資は、透明性能が現代のスマートフォンDACによって大幅に低コストで達成可能な場合には非合理的に見えます。Android実装は合理的なユーザーエクスペリエンス上の利益を提供しますが、オーディオ回路だけでは大幅な価格プレミアムを正当化できません。

アドバイス

具体的にR2R DAC技術を求める方、または専用音楽再生での運用が必要な方には、RS6は有能な性能とビルド品質を提供します。しかし、客観的性能重視なら、Topping G5のようなポータブルDAC/AMPをスマートフォンと組み合わせる方が、測定透明性と出力能力を低コストで得られます[3][4]。可聴改善の余地が大きいヘッドフォンやスピーカーへの投資を優先することを推奨します。離散R2RやスタンドアロンDAPの運用性に特別な価値を見出す場合のみRS6を選択してください。

参考情報

[1] Audio Science Review, “Review: Apple vs Google USB-C Headphone Adapters,” https://web.archive.org/web/20240426072401/https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/review-apple-vs-google-usb-c-headphone-adapters.5541/, 2025年8月アクセス(SINAD/DNR、33Ω/300Ωの出力、出力インピーダンス等の測定を含む)

[2] Motorola US, 公式ホームページの価格タイル「moto g play - 2024」, https://www.motorola.com/us/en/homepage, 2025年8月アクセス

[3] Audio Science Review, “Topping G5 Review (Portable DAC & HP Amp)”, https://web.archive.org/web/20231002155709/https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/topping-g5-review-portable-dac-hp-amp.36542/, 2025年8月アクセス

[4] HiFiGo, “TOPPING G5 LDAC Audio Built-in NFCA HPA Portable Bluetooth DAC & AMP”, https://hifigo.com/products/topping-g5, 2025年8月アクセス(現行価格の参照)

(2025.8.11)