HiFiMan HE400se

総合評価
3.6
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.5

1万円台という価格帯で、駆動方式の枠を超えた優れた測定性能とコストパフォーマンスを実現するエントリークラスのオープンバック型ヘッドホン

概要

HiFiMan HE400seは、同社のエントリークラスに位置するオープンバック型ヘッドホンです。駆動方式には平面磁界駆動型を採用し、2020年代に発売されました。約16,500円という価格帯で、Stealth Magnetsと呼ばれる独自の磁気回路設計を搭載しています。その構造上、静かな環境でのリスニングに特化しており、開放的な音場感を特徴とします。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

HiFiMan HE400seは20Hz~20kHzの周波数特性を持ち、25Ωの低インピーダンスで91dB SPLの感度を実現しています。実測では感度は86.6dB/mWと比較的低く、十分な音量を得るには相応の駆動力を要します。THD特性については、平面磁界駆動型の利点である低歪み特性をこの価格帯で実現しており、多くの同価格帯のダイナミック型ヘッドホンと比較しても、特に低域の歪みにおいて優位性があります。チャンネルマッチングは良好ですが、1-3kHz帯域にはHiFiMan製品に典型的な窪みが存在します。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

Stealth Magnetsと呼ばれる磁気回路設計により、音響的な干渉を低減する技術を採用しています。80mm径の平面磁界ドライバーは同社の上位モデルから受け継いだ技術を使用していますが、基本的にはエントリークラス向けの設計となっています。インピーダンス特性は26.5Ωでほぼ純抵抗的であり、位相シフトも最小限に抑えられています。ただし、約51,000円のSony MDR-MV1や約69,000円のTAGO STUDIO T3-01といった上位機種と比較すると、ドライバーの精度や筐体設計の洗練度には明確な差があります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

HiFiMan HE400seの実売価格は16,500円(2025年8月時点、Amazon.co.jp)です。本製品が提供する「オープンバック型の音響体験」という機能と、その測定性能を基準にすると、同機能を持つ製品群の中でこれより安価な選択肢は市場に実質的に存在しません。駆動方式を問わず、純粋な性能対価格比で評価すると、コストパフォーマンスは最高評価の1.0となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

HiFiMan Japanによる1年保証が付属し、国内正規品として販売されています。同社は平面磁界駆動型ヘッドホンの老舗メーカーとして一定の実績を持っていますが、サポート体制や修理対応については業界標準レベルです。製品の故障率に関する公開情報は限られていますが、エントリークラス製品として一般的な信頼性を有していると評価できます。ファームウェア更新等の対応は有線ヘッドホンのため該当しません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

低インピーダンス25Ωの設計は、ポータブル機器での使用を意図したものと考えられます。しかし、同時に感度が実測86.6dB/mWと非常に低いため、結果としてほとんどのスマートフォンやポータブルプレーヤーでは十分な駆動力を得られず、性能を全く発揮できません。ポータブル機器での使用を想定しながら、実際には据え置きアンプが必須となるこの仕様の組み合わせは、設計思想と実際の性能に乖離があり、合理性が高いとは言えません。

アドバイス

このヘッドホンを検討する上で最も重要な点は、あなたがヘッドホンを使用する環境と、専用アンプの有無です。本機は「オープンバック型」であるため、構造上、音が外に大きく漏れ、また周囲の騒音もほとんど遮断しません。電車内やカフェなど、少しでも静粛性や音漏れ防止が求められる環境での使用には全く適していません

また、スマートフォンやPCに直接接続した場合、その感度の低さから、十分な音量と歪みのないクリアな音質を得ることは困難です。本機の優れた音響性能を体験するには、専用のヘッドホンアンプが実質的に必須となります。

もしあなたの利用環境が自宅などの静かな場所に限定され、ヘッドホンアンプを用意できるならば、HiFiMan HE400seは1万円台で最も有力な選択肢の一つです。この条件下では、駆動方式を問わず本機を上回る測定性能の製品をより安価に見つけるのは困難でしょう。

補足情報

本製品は91dB SPLの感度を謳っていますが、実測では86.6dB/mWであり、仕様と実測値に差があることに注意が必要です。この感度の低さが、十分な音量を得るためにヘッドホンアンプを必要とする主な理由です。また、1-3kHz帯域の特徴的な窪みは、HiFiManの多くの製品に共通する特性であり、この音響特性を好むかどうかが製品選択の重要な要素となります。

レビュー日時

(2025.8.1)