iFi audio ZEN DAC 3

総合評価
4.5
科学的有効性
0.9
技術レベル
1.0
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
1.0
設計思想の合理性
0.9

34,794円という価格でTHD+N 0.0015%、SNR 113dBという高性能を実現したデスクトップDAC/ヘッドホンアンプ。同価格帯のFiiO K7と比較しても測定性能で明確に優位。DSD512/PCM768対応、MQAフルデコードなど機能面も充実しており、コストパフォーマンスは極めて優秀。

概要

iFi audio ZEN DAC 3は、イギリスのiFi audioが開発したデスクトップ型DAC/ヘッドホンアンプで、現在価格34,794円で販売されています。前世代からUSB-C入力に変更され、16コアXMOSプロセッサとBurr-Brown DACチップを搭載し、DSD512/PCM768kHz/MQAフルデコードに対応しています。4.4mmバランス出力とRCA出力を備え、THD+N 0.0015%(バランス)、SNR 113dBという高い測定性能を実現しています。XBass+機能も搭載し、コンパクトなデスクトップオーディオシステムの中核として設計されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

ZEN DAC 3の測定性能は、THD+N 0.0015%(バランス出力)、SNR 113dB、ダイナミックレンジ113dBという数値で、可聴閾値を大きく下回る優秀な性能を示しています。これらの数値は、人間の聴覚限界(THD約0.1%、SNR約90dB)を十分に上回っており、理論的には完全に透明な音質再生が可能です。ABXテストにおいても、高品質な録音では他の高性能DACとの区別は困難なレベルです。同価格帯のFiiO K7と比較しても、測定性能では明確に優位に立っています。

技術レベル

\[\Large \text{1.0}\]

16コアXMOSプロセッサ(2000MIPS、512KB)の採用により、前世代比で処理能力が大幅に向上し、DSD512/PCM768kHzという最高レベルのデジタル音源に対応しています。Burr-Brown製DACチップとの組み合わせによる回路設計は、測定結果に現れる通り極めて高水準です。フルバランス回路設計、低出力インピーダンス(1Ω以下)、豊富な出力オプション(4.4mmバランス、RCA、6.3mmヘッドホン)など、技術的完成度は同価格帯では最高水準にあります。MQAフルデコード対応も技術的な先進性を示しています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

34,794円でTHD+N 0.0015%を実現している製品は、同価格帯では他に存在しません。直接の競合であるFiiO K7(30,580円)はTHD+N約0.005%であり、測定性能では明確にZEN DAC 3が優位です。CP = 30,580円 ÷ 34,794円 = 0.88となり、4,214円の価格差に対して測定性能の向上が得られています。さらに上位の性能を求める場合、10万円以上の製品が必要となるため、この価格帯では極めて優秀なコストパフォーマンスを示しています。

信頼性・サポート

\[\Large \text{1.0}\]

iFi audioは英国の老舗オーディオメーカーとして、製品の信頼性とサポート体制に定評があります。ZEN DACシリーズは2019年の初代から継続的に改良が続けられており、長期的な製品開発とサポートが期待できます。ユーザーレビューでも故障報告は少なく、価格.comでの満足度評価4.33/5点という高い評価を得ています。国内正規代理店による保証とサポートも整備されており、同価格帯では最高水準の信頼性を提供しています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.9}\]

ZEN DAC 3の設計は、測定性能の向上と実用性のバランスを合理的に追求しています。USB-C入力への変更、16コアプロセッサの採用、フルバランス回路など、全ての要素が音質向上に直結する合理的な設計です。XBass+機能のようなDSP処理も、ユーザーの選択に委ねられており、純粋主義的な音質追求と実用性の両立を図っています。コンパクトなデスクトップ設計も現代的な使用環境に適しており、技術的・実用的観点から極めて合理的な製品と評価できます。

アドバイス

iFi audio ZEN DAC 3は、34,794円という価格で高性能デスクトップDACを求める方に強く推奨できる製品です。特にヘッドホン使用がメインで、バランス接続による高音質を重視する場合には最適な選択です。競合のFiiO K7と比較する場合、約4,000円高いものの測定性能の明確な向上があり、その価格差は十分に正当化されます。ただし、複数の入力が必要な場合やより高出力が必要な場合は、K7の方が適している可能性があります。予算が許すなら、長期的な投資として考えてもZEN DAC 3の方が満足度は高いでしょう。DSD対応やMQA再生を重視する場合も、ZEN DAC 3が明確に有利です。

(2025.7.7)