JBL Project Everest DD66000
デュアル15インチ+ホーンの拡張2ウェイ構成。ベリリウム圧縮ドライバーとバッテリーバイアス(チャージカップルド)ネットワークを採用し高感度と指向性制御に優れますが、同等以上の測定性能を示す低価格機が存在するためコストパフォーマンスは極めて低いです。
概要
Project Everest DD66000は「拡張2ウェイ」構成で、15インチウーファー1基が~150 Hz、もう1基が700 Hzまでを担当し、その上を大型Bi-Radialホーン+4インチ・ベリリウム圧縮ドライバーが受け持ち、20 kHz以上は超高域ベリリウムドライバーで補強します[1][2]。メーカー公称は45 Hz–50 kHz(–6 dB)、低域–10 dB点32 Hz、感度96 dB(2.83 V/1 m)、公称8 Ω、推奨アンプ出力100–500 Wです[1][2]。外形は高さ38インチ×幅43-5/8インチ×奥行18-1/2インチ、質量はグリル無し約302 lb/台[1]。本機は生産終了し、後継のDD67000に引き継がれました[1]。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]DD66000の独立した実験室レベルの測定公開は乏しく、本項はメーカー資料に基づく暫定評価です[1][2]。広帯域(45 Hz–50 kHz、–6 dB)と高感度(96 dB)を備え、クロスオーバーは150 Hz/700 Hz/20 kHz[1][2]。ホーンによる指向性制御と高ダイナミクスが示唆されますが、±1 dB級の線形性や低歪みの網羅的な第三者データが不足しているため、評価はやや控えめに設定します。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]476Be/045Be-1ベリリウム圧縮ドライバー、アルニコ磁気回路1501ALウーファー、Bi-Radialホーン、バッテリーバイアス(チャージカップルド)受動ネットワークなど、エンジニアリング水準は高いです[1][2]。700 Hzの単一点中域クロスで分割数を抑える設計も合理的です[2]。一方で現代的なDSP/アクティブ整合は非搭載で、技術新規性の面では一部見劣りします。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]比較対象(同等以上で最安): JTR Noesis 212RT(ペア)。デュアル12インチ+大口径同軸圧縮ドライバー/定指向性ウェーブガイドのパッシブ・フロアスタンディングで、第三者測定にてリスニングウインドウがほぼフラット(粗さは概ね±2 dB程度)かつ良好な指向性を示します。実用低域も同等(±3 dBで約35 Hz、フリースペース–10 dBで約30 Hz)です[3][4]。
価格根拠: メーカー直販4,299 USD/台(ペア8,598 USD)[3]。日本語記事では金額表記は円を基本としますが、本スコアは両言語でUSD計算に統一します(8,598 USDは概算1,324,092円、参考)。
計算(USD): 8,598 USD ÷ 65,000 USD = 0.132 → 0.1(小数1桁に丸め)。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.4}\]Harman/JBLの米国向け案内では非電源スピーカーは5年保証(その他多くのカテゴリは1年)です[5]。本機はパッシブでファームウェア不要という利点がある一方、専用ドライバー等の部品供給は生産終了機ゆえ将来的に不確実性があります。Harmanのグローバルネットワークで基本的サポートは受けられますが、特殊部品の修理は認定拠点依存となる可能性があります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.3}\]大口径ホーンと高感度化によるダイナミクス/指向性制御の追求は科学的整合性があります。一方、重厚筐体や高価素材への投資が測定上の透明性向上に直結しているエビデンスは乏しく、DSPやアクティブ整合の不採用もコスト効率の観点で不利です[1][4]。設計志向は一部合理的ながら、価格に対する数値的裏付けは弱いと判断します。
アドバイス
幅43-5/8インチの設置占有とリアポートを踏まえたレイアウトが重要です[1]。アンプはJBL推奨の100–500 W帯で電流供給力に余裕のある機種を選定してください[2]。ホーン直進性と巨大ダイナミクス、意匠を重視するなら本機は魅力です。対して数値性能あたりの価格を重視するなら、JTR 212RTのような機種が大幅に有利です[3][4]。
参考情報
[1] JBL(ブロシュア,DD66000)“Project Everest – DD66000 (Key Specifications)” https://files.d-tools.com/Visualizations/Approved/JBL%20Synthesis/Documents/JBL%20Synthesis_DD66000EB_Brochure1.pdf (2025-08-26参照)周波数特性、–10 dB点、感度、寸法、推奨出力。
[2] JBL(取扱説明書)“Project Everest DD66000 – Product Commentaries and User Guide” https://www.audioclassics.com/manual/DD66000_OM.pdf (2025-08-26参照)方式・クロスオーバー、アンプ推奨。
[3] JTR Speakers(公式)“Noesis 212RT – Home Audio” https://www.jtrspeakers.com/home-audio (2025-08-26参照)価格・基本仕様。
[4] AV NIRVANA(第三者測定)“JTR Noesis 212RT – Review and Measurements” https://www.avnirvana.com/threads/jtr-noesis-212rt-review-and-measurements.6779/ (2025-08-26参照)リスニングウインドウの平坦性、指向性、低域–10 dB点。
[5] JBL Support(公式)“JBL Warranty Information (US)” https://support.jbl.com/howto/jbl-warranty-information-us/000028546.html (2025-08-26参照)保証期間(非電源スピーカー5年)。
(2025.8.27)