JBL S4600

参考価格: ? 1020000
総合評価
2.0
科学的有効性
0.3
技術レベル
0.4
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.2

JBL S4600は2007年発売の3ウェイフロアスタンディングスピーカーですが、現代の高性能アクティブモニターと比較すると、特に機能性と設計思想の合理性において技術的に時代遅れとなっています。

概要

JBL S4600は2007年9月に発売された3ウェイ・フロアスタンディング型のパッシブスピーカーです。35cmのLE14H-4ウーファー、5cmの175Nd-3コンプレッションドライバー、19mmの138Ndコンプレッションドライバーを搭載し、35Hz~40kHz(-6dB)の周波数レンジを実現しています。JBLの上位機種から技術を継承したSonoGlassホーンが特徴です。発売当時の価格は460,000円(1本)で、現在は新古品がペアで6,800USD前後で取引されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.3}\]

S4600の周波数特性35Hz~40kHz(-6dB)は2007年当時としては良好でしたが、現代の高性能アクティブモニターの基準では平凡なスペックです。パッシブ設計のため、現代のスタジオモニターでは標準機能であるアクティブクロスオーバー、DSPによる位相補正、ルーム補正機能などを搭載していません。THD(総高調波歪率)やSNRといった詳細な性能データが公式に開示されておらず、客観的な性能評価は困難です。最新のアクティブモニターが達成する透明レベルのスペック(THD 0.1%以下など)と比較した場合、2007年当時のパッシブ技術では性能的に劣る可能性が高いと判断されます。

技術レベル

\[\Large \text{0.4}\]

ウーファーに採用されたAqua-Plas強化ピュアパルプコーンや、コンプレッションドライバーの純チタンダイアフラムは、当時としては先進的な素材選択でした。また、SonoGlassホーンによる不要共振の排除という設計思想も評価できます。しかし、技術の根幹であるパッシブクロスオーバーは、現代のDSPで緻密に制御されるアクティブクロスオーバーと比較して技術的に劣ります。現代のスタジオモニターが標準採用するデジタル入力、ルーム補正、ドライバーとアンプの統合最適化といった技術革新が一切なく、2025年の技術水準から見れば時代遅れと言わざるを得ません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

新古品価格である6,800USD(ペア)に対し、より少ない投資でS4600をあらゆる音響性能で上回る製品が存在します。例えば、Neumann KH 310 A(ペア約5,000USD)は、3ウェイ・アクティブモニターであり、周波数特性は34Hz (-3dB)とS4600を凌駕する低域再生能力を持ちます。アクティブ設計による低歪み特性や最適化された性能を考慮すると、S4600はコスト効率の悪い選択肢です。コストパフォーマンス計算:5,000USD ÷ 6,800USD = 0.735 → 0.7。同等以上の性能を約7割の価格で実現できるため、コストパフォーマンスは低いと評価します。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

JBLはオーディオ業界で長い歴史を持つブランドであり、基本的な信頼性はあります。しかし、S4600は2007年に製造を終了しており、18年以上が経過した現在では、修理に必要な純正部品の供給やメンテナンスサポートには大きな制約があります。パッシブ設計のためソフトウェア更新は不要ですが、それは機能改善の機会がないことも意味します。新古品として購入した場合でもメーカー保証は限定的であり、長期的な信頼性には懸念が残ります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.2}\]

S4600の設計思想は2007年当時のパッシブスピーカー技術に立脚しており、現代のスタジオワークフローの観点からは非合理的です。別途高性能なパワーアンプを必要とするため、総コストと設置の複雑性が増大します。ルーム音響への適応機能、デジタル入力、アンプとスピーカー間の統合設計といった、現代のアクティブモニターが標準装備する科学的な音質改善機能を持たないため、その設計思想は時代遅れと評価せざるを得ません。

アドバイス

S4600の購入を検討する場合、現代の高性能アクティブスタジオモニターとの比較を強く推奨します。同等の予算(6,800USD)があれば、より少ない投資でNeumann KH 310 A(ペア約5,000USD)のような、S4600をあらゆる性能で上回る3ウェイ・アクティブモニターが購入可能です。また、Genelec 8341A(ペア約6,700USD)を選択すれば、最先端の同軸設計とSAM技術による自動音場補正機能により、比較にならないほど高次元で正確なモニタリング環境を構築できます。歴史的価値や特有の音色に強いこだわりがない限り、2025年現在においてS4600を選ぶ合理的な理由はありません。科学的に優れた音響性能を求めるなら、最新のアクティブモニター技術を採用した製品を選ぶべきです。

(2025.7.31)