JBL Stage A180
深いベース再生能力を持つ予算フロアスタンディングスピーカーですが、問題のある高音チューニングにより刺さる高音を生み出し、EQでの修正が困難です。
概要
JBL Stage A180は、デュアル6.5インチ・ポリセルロースコーンウーファーと1インチ・アルミドームツイーター、JBLのHDI(High Definition Imaging)ウェーブガイドを採用した2.5ウェイのフロアスタンディングスピーカーです。米国公式価格は1本399.95 USD(ペア約800 USD)で、JBL公式ストアに記載があります [3]。クラスとしては予算帯のタワーで、低域拡張とJBLらしい広い水平方向の指向性が特長です。
科学的有効性
\[\Large \text{0.4}\]Klippel NFSによる第三者測定では、線形性と高出力時の歪みに明確な制限が示されています [1]。オン軸/予測インルーム応答は40Hz〜20kHzで約±4.8dBの偏差と上部中音〜低高音域のピークを示します。86dB SPLでは歪みは抑制されていますが、96dB SPLでは0.8〜2kHz帯で数%程度まで顕著に上昇し、可聴感度の高い帯域と重なります [1]。リスニングでは浅いインルーム傾斜とピークに一致して「刺さる高音」の指摘がありました [1]。一方、F10がおおよそ35Hz、感度は約89dB(300Hz〜3kHz窓)で、低域拡張は強みです [1]。総合すると透明性目標は満たしません。
技術レベル
\[\Large \text{0.6}\]HDIウェーブガイドはJBLのプロ系譜に由来する実質的な技術で、デュアル6.5インチを含む2.5ウェイトポロジーも構造的には妥当です。ただし測定結果はクロスオーバー/ドライバー統合に起因するピークと高出力時の歪み上昇を示し [1]、目標とするリニアリティ達成は限定的です。MDF筐体とデュアルリアポートはクラス標準的な実装で、技術的野心は中庸、客観性能は混在です。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]米国公式価格は1本399.95 USD(ペア約800 USD)です [3]。同等以上の測定性能を示すタワーとしてMonoprice Monolith Encore T6(1本約400 USD、ペア約800 USD)があり、第三者NFS測定でより整ったリニアリティと低歪みが確認できます [2]。同等以上でより安価な比較対象を本稿時点で特定できなかったため、ポリシーに基づきCPは1.0とします。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]JBLの米国保証条件では、非電源(パッシブ)スピーカーは5年保証と明記されています [4]。サポートはJBL/Harmanの標準チャネルで提供されます。広域の実地故障率データは限定的で、引用ソースに系統的欠陥の記載はありません。保証水準はエントリー帯としては良好で、サポート体制も一般的です。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.4}\]成果重視の観点では、プロ由来のウェーブガイドを取り入れつつも、オン軸の平滑化とオフ軸の整合を十分に達成できておらず、客観的に明るい傾向と高出力時の歪み帯域が残ります [1]。応答リニアリティ最優先のクロスオーバー/ドライバー統合に回帰する設計が合理的と考えられます。現状は透明性志向の設計目標と整合が限定的です。
アドバイス
同程度の総額で客観性能を優先するならMonoprice Monolith Encore T6が有力です [2]。一方で予算タワーで深い低域を重視し、主に中音量で聴く用途ならA180の拡張性は魅力です。高域の明度に敏感な場合は慎重に検討してください。EQでピーク帯を抑えることは可能ですが、96dB級では歪み帯域の制約が残ります [1]。
参考情報
[1] Audio Science Review, “JBL A180 Tower Speaker Review”, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/jbl-a180-tower-speaker-review.34846/, 2025年8月13日アクセス, Klippel NFS測定 [2] Erin’s Audio Corner, “Monoprice Encore T6 Tower Speaker Review”, https://www.erinsaudiocorner.com/loudspeakers/monoprice_encore_t6/, 2025年8月13日アクセス, Klippel NFS測定 [3] JBL, “JBL Stage A180 | Home Audio Loudspeaker System”, https://www.jbl.com/loudspeakers/STAGE+A180.html, 2025年8月13日アクセス, 公式価格・製品ページ [4] JBL Support, “JBL Warranty Information (US)”, https://support.jbl.com/howto/jbl-warranty-information-us/000028546.html, 2025年8月13日アクセス, パッシブスピーカー5年保証
(2025.8.13)