Kali Audio LP-6 V2

参考価格: ? 37100
総合評価
2.9
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.5

測定重視の6.5インチパワードスタジオモニターでDSPルーム補正機能を搭載。性能は問題レベルを示すものの、限られた保証サポートにもかかわらずDSP搭載モニタリングにおいて最もコストパフォーマンスに優れた選択肢です。

概要

Kali Audio LP-6 V2は、Project Lone Pineスタジオモニターシリーズの第二世代モデルで、6.5インチ最適化ペーパーウーファーと1インチテキスタイルドームツイーターを組み合わせています。2018年に元JBLエンジニアによって設立されたKali Audioは、音響設計への科学的アプローチを重視する測定重視の企業として位置づけられています。LP-6 V2は初代モデルから大幅な改良が施され、セルフノイズ12dB削減、DSP処理の強化、Class-Dバイアンプ駆動による総出力80Wのアンプリフィケーションプラットフォームのアップグレードが実現されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

LP-6 V2は、Klippel Near-Field Scannerを使用したErin’s Audio Cornerによる信頼できるサードパーティ測定 [1] に基づくと、問題レベル境界線での性能を示しています。周波数特性は47Hz-21kHz(±3dB)で、測定基準におけるスピーカーの±3dB問題閾値を満たしています。システムTHDは1700Hz以上で3%を超え、スピーカーの問題レベル(1%閾値以上)に達しています。最大SPLは115dBに達し、適切なダイナミックレンジを持つものの、問題閾値での周波数特性偏差と問題レベルを超えるTHDの組み合わせにより、全体的な測定性能は問題範囲に位置しています。V2におけるノイズフロア12dB削減は、初代モデルからの測定可能な改善を示しています。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

LP-6 V2は、堅実なエンジニアリング基盤を持つ現代的な技術を採用しています。機能にはFEA最適化トランスデューサー設計があり、最大リニアリティのためのモーターフォースとコンプライアンスの協調、低歪みのためのデュアルレイヤーボイスコイル、ルーム最適化のための境界EQ設定を提供する高度なDSPが含まれます。Class-Dアンプリフィケーションは各ドライバーに40Wを供給し、適切なデジタル/回路統合を実現しています。元JBLエンジニアリング専門知識を持つKali Audioによる設計所有権は、高いノウハウの蓄積を示しています。しかし、技術レベルは適切な現代基準にとどまり、競合他社と大きく差別化するような画期的な革新や最先端実装はありません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

現在の市場価格37,100円において、LP-6 V2は同等機能において最も安価な選択肢を提供しています。より低コストで同等またはより優れたユーザー向け機能と測定性能を提供する競合製品は確認されませんでした。競合モニターは、基本的なDSPルーム補正機能を欠いている(PreSonus Eris E5は包括的な境界EQではなくアナログ音響空間制御のみを提供)、より小さなドライバーとより低いパワーを提供(Eris E5:5.25インチウーファー、総計70W対LP-6 V2:6.5インチウーファー、総計80W)、またはLP-6 V2の価格帯を超えています(同等のDSP機能を持つ上位代替品)。LP-6 V2は、包括的なDSPルーム補正機能を備えた6.5インチモニタリングを必要とするユーザーにとって最もコストパフォーマンスに優れた選択肢です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

Kali Audioは1年間の限定保証を提供していますが、これは業界標準の平均2年を下回っています。カスタマーサービスは電子メールで運営され、通常1営業日の応答時間です。サポートインフラストラクチャは主にディーラーベースで、グローバルなメーカーサポートシステムはありません。2018年設立の企業として、確立されたメーカーと比較して広範な信頼性実績を欠いています。保証は水損害と無許可サービスを除外し、米国内でのみ適用されます。構造は標準的なパワードモニター設計に従い、固有の信頼性上の利点や欠点はありません。この製品カテゴリーでは、拡張サポートプログラムや包括的なファームウェアアップデートシステムは文書化されていません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

Kali Audioの測定重視の科学的アプローチは、設計思想において合理的な妥当性を示しています。「ニュートラル周波数特性、制御された指向性、高出力、広帯域、低歪み、低ノイズ」という企業の表明された目標は、科学的に意味のある音響目的と一致しています [2]。しかし、実際の測定性能はこれらの目的を達成できておらず、周波数特性は問題閾値(±3dB)で、THDはクロスオーバー周波数以上で問題レベルを超えています。FEA最適化手法とサードパーティ測定データの透明な公開は証拠に基づく開発アプローチを支持していますが、実装結果は科学的目標を測定性能に転換することの限界を示唆しています。V2世代はノイズフロアの改善を示しますが、問題レベルの歪み特性を維持しています。

アドバイス

LP-6 V2は、ルーム適応機能を備えた正確なモニタリングを必要とするプロフェッショナルオーディオアプリケーションに適しています。包括的なDSP機能により、DSPルーム補正を備えた6.5インチモニタリングを必要とするユーザーにとって最もコストパフォーマンスに優れた選択肢となります。長期設置を計画する際は限定的な1年保証を考慮してください。重要なプロフェッショナル用途では、追加の保証範囲やサービス契約を検討してください。科学的測定アプローチと透明な性能データは、ブランドの威信よりも客観的性能を優先するユーザーに信頼性を提供します。ステレオモニタリングアプリケーションではペアで購入し、完全なステレオセットアップの総投資額は約74,200円となります。

参考情報

[1] Erin’s Audio Corner, “Kali Audio LP-6v2 (Second Wave) 2-Way Studio Monitor Review”, https://www.erinsaudiocorner.com/loudspeakers/kali_lp-6v2/, 2025年9月20日アクセス, Klippel Near-Field Scanner測定、2.83V/1m、無響室条件

[2] Head-Fi.org, “An Interview with Charles Sprinkle — Director of Acoustics for Kali Audio”, https://www.head-fi.org/threads/an-interview-with-charles-sprinkle-%E2%80%94-director-of-acoustics-for-kali-audio.918189/, 2025年9月20日アクセス

[3] PreSonus, “Eris E5 Active Studio Monitor”, https://www.presonus.com/products/Eris-E5, 2025年9月20日アクセス

(2025.9.21)