Klipsch RP-500M II

参考価格: ? 90915
総合評価
2.3
科学的有効性
0.3
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.4
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.4

Klipsch RP-500M IIは、5.25インチウーファーと1インチチタンツイーターを搭載した2ウェイブックシェルフスピーカーで、高感度設計により優れた効率性を実現しますが、周波数応答の問題や技術的独創性の制約により評価が限定されます。

概要

Klipsch RP-500M IIは2022年に発売されたReference Premiere第二世代の2ウェイブックシェルフスピーカーで、1インチチタニウムLTSベンテッドツイーターとより大型化されたHybrid Tractrixホーン、5.25インチCerametallic コーンウーファーを搭載し、70%大型化されたボイスコイルによる制御性・速度・精度の向上を実現している。実売価格439-499USD(ペア)で提供され、従来モデルからの改良により中音域の明瞭度と精度を向上させた製品として位置付けられる。

科学的有効性

\[\Large \text{0.3}\]

RP-500M IIの公称仕様では感度92dB、周波数特性50Hz-25kHzを謳っているが、実際の無響室測定では感度約85dB @2.83V/1m、周波数特性48Hz-25kHzとなり、公称値との重大な乖離が見られる。特に重要な問題は、感度の7dB乖離(92dB公称 vs 85dB実測)で、これは仕様表示の科学的透明性において重大な問題である。約30度のオフアクシス角度での高域減衰により、正面軸上での聴取では高域が過度に強調される傾向があり、問題レベル(20Hz-20kHz ±3.0dB)を一部で上回る可能性がある。科学的有効性の評価では、仕様偽装と測定性能の両面で問題がある。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

RP-500M IIは70%大型化されたボイスコイルの採用、アルミニウムショートリングによる歪み低減、改良されたHybrid Tractrixホーンによる指向性制御など、従来モデルからの技術的改良が施されている。Cerametallic振動板技術とLTS(Linear Travel Suspension)ツイーターシステムは歪み低減に寄与する設計である。しかし、これらの技術的アプローチは基本的にはKlipschの従来技術の改良版であり、業界全体から見て革新的な技術的独自性は限定的である。技術レベルとしては業界標準を上回る部分があるものの、最高水準には達していない。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.4}\]

RP-500M IIの日本での価格は90,915円(ペア)であり、同等またはより優れた性能の2ウェイブックシェルフスピーカーとしてYamaha NS-B330(36,279円)が存在する。Yamaha NS-B330は13cmウーファー、3cmアルミツイーター、周波数特性55Hz-40kHz、感度87dB、推奨アンプ出力40W、ハイレゾ対応という仕様を持つ。測定データによると、RP-500M IIの実際の感度は85dB @2.83V/1m(公称92dBに対し)であり、Yamaha NS-B330の87dB公称値より劣る。またYamaha NS-B330はより深い低域再生(55Hz vs 48Hz)と通常設置での使用が可能であり、RP-500M IIの30度オフアクシス調整を必要としない。CP = 36,279円 ÷ 90,915円 = 0.40となり、Yamaha製品が約2.5倍安い価格で優れた性能を実現している。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

Klipschは米国のオーディオ企業として70年以上の歴史を持ち、製品品質と信頼性において一定の評価を得ている。RP-500M IIも標準的な保証とサポートを提供している。家具グレードのMDF製キャビネットと内部ブレーシング構造により、物理的な耐久性は確保されている。しかし、ホーンツイーターの特性上、高域の指向性に関する設置・調整の専門知識が必要であり、一般ユーザーにとっての使い勝手において制限がある。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

RP-500M IIの設計思想は高感度・高効率を重視したKlipschの伝統的アプローチに基づいているが、現代的な音響設計の観点から見ると深刻な問題がある。最も重要な問題は、公称感度92dBと実測85dBの7dB乖離で、これは仕様表示の透明性において重大な問題である。正面軸上での高域強調とオフアクシス特性の劣化により約30度のオフアクシス角度での使用が必須となり、通常のステレオ設置での使い勝手を大幅に制限する。同価格帯のELAC B6.2やKEF Q150のような設計では、このような制約なしに優れた音響性能を実現している。測定データに基づく比較では、Klipschの設計思想の合理性は著しく限定的である。

アドバイス

RP-500M IIは高感度設計により小出力アンプでも十分な音量を得られる利点があり、映画音響での迫力ある再生や、突然の大音量効果に対する耐性において優れている。同価格帯のMonitor Audio Bronze 100 6Gとの比較では、より大型のウーファー(8インチ vs 5.25インチ)とより深い低域再生(37Hz vs 48Hz)を持つMonitor Audio製品が低域性能で優位である。購入を検討される場合は、Klipschの特徴的な音響特性(高域強調、高感度)に明確な価値を見出すか、あるいは約30度のオフアクシス角度での設置が可能な環境での使用を前提とすることを推奨する。一般的なニアフィールドモニタリングやバランスの取れた音響再生を求める場合は、Monitor Audio Bronze 100 6Gがより適している。

(2025.7.9)