KZ AS16 Pro
8基のBAドライバーを搭載したIEMで、高感度(129.0dB/V SPL)を実現するが、より安価な代替品によりコストパフォーマンスは制限される
概要
KZ AS16 Proは2022年に発表されたインイヤーモニターで、片側8基のバランスドアーマチュアドライバー(総計16基)を搭載し、3ウェイクロスオーバー設計を採用しています。片側あたり2基の22955低音BA、2基の29689中音BA、4基の31376高音BAを使用し、20Hz-40kHzの包括的な周波数帯域をカバーします。イヤホンは着脱式QDCタイプ2ピンケーブルを採用し、26dBを超える受動的遮音性能を実現しています。2008年にKeith YueとZen Liによって設立された中国のオーディオ企業Knowledge Zenithが製造するAS16 Proは、継続的な技術向上により高品質なオーディオを民主化するという彼らの理念を表現しながら、手頃な価格を維持しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.5}\]Reference Audio Analyzerによる第三者測定では129.0dB/V SPLの感度(100Hz-10kHz平均)と61.2Ωのインピーダンス(40Hz-15kHz平均)[1]が示されており、測定ポリシーに従い製造者仕様の114dB感度と18Ωインピーダンスよりも優先されます。129.0dB/V SPLの高感度は透明レベル(105dB)を大幅に上回り、低出力源からの容易な駆動を可能にしています。周波数応答は20Hz-20kHz範囲をカバーし、測定データが利用可能です。26dBの受動的遮音は10dBの問題レベル閾値を大幅に超えており、ほとんどの聴取環境で適切な遮音性を提供します。しかし、THD、S/N比、周波数応答偏差を含む包括的測定データは独立源からは限られており、包括的な科学的評価には不十分なデータとなっています。利用可能な測定では感度と遮音性能で適切な性能を示していますが、完全な測定検証の欠如により科学的有効性評価はベースラインレベルに留まります。
技術レベル
\[\Large \text{0.5}\]AS16 Proは片側8基の高度なバランスドアーマチュアドライバー構成と、精密な周波数分割とドライバーマッチングを要求する洗練された3ウェイクロスオーバー実装を採用しています。特定のドライバー配分(片側あたり2基の22955低音BA、2基の29689中音BA、4基の31376高音BA)で総計16基のドライバーを協調させる技術的複雑さは、マルチドライバー統合における重要な工学的達成を実証しています。独自のBAドライバー設計よりも確立されたBA技術を利用していますが、実装の複雑さとドライバー数は相当な技術的洗練を示しています。アナログ信号処理を通じて包括的な周波数カバレッジを達成していますが、現代的なデジタル機能や独自の革新は欠けています。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.2}\]現在の市場価格8,100円(54 USD)において、KZ AS16 Proは同等以上の測定性能を持つ最も安価な製品と比較されます。KZ ZSN Pro X(1,800円、12 USD)[3]は同等のユーザー向け機能(着脱式ケーブル)、同等の周波数応答範囲(20Hz-40kHz vs 20Hz-40kHz)、および適切な感度(112dB/mW vs 129.0dB/V SPL)を提供します。AS16 Proは優れた感度性能(129.0dB/V SPL vs 112dB/mW)を提供しますが、ZSN Pro Xは同等のユーザー向け機能と測定性能を大幅に低コストで実現しています。両製品とも同等の着脱式ケーブル機能と同等の周波数応答カバレッジを提供します。
CP = 1,800円 ÷ 8,100円 = 0.2
この製品のコストパフォーマンスは、同等の測定性能とユーザー機能を提供する大幅に安価な代替品の存在により制限されています。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.4}\]KZ AS16 Proは標準的な1年保証を含んでおり、典型的な業界平均の2年を下回っています。ユーザーレポートでは、ケーブル故障、ドライバー不具合、購入から数ヶ月以内に発生する片側故障を含む信頼性問題が記録されています。複雑な8ドライバー構成は、よりシンプルな単一ドライバー設計と比較して複数の潜在的故障ポイントを導入します。サポートインフラストラクチャは直接的な製造者サポートよりも主に販売店ネットワークに依存しており、保証請求と修理を複雑にする可能性があります。ビルド品質は「通常のKZ標準」と説明されており、適切ですが特筆すべきものではありません。短い保証カバレッジと記録された信頼性問題の組み合わせにより、この製品はこのカテゴリーでは平均を下回ります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]KZはAS16 Proで先代製品に対するチューニング改善を示し、測定重視の開発理念を実証しています。片側8基ドライバー構成は、低音、中音、高音の最適化に専用ドライバーを配置した周波数範囲カバレッジを提供します。同社の中核理念は「Knowledge Zenith」を重視し、手頃な価格を維持しながら継続的な技術的進歩により高品質オーディオを民主化することを掲げています[2]。コスト配分は各ドライバーが周波数応答最適化に貢献する音響性能に奉仕します。しかし、片側8基というドライバーの多用は、コスト効率性と必要性に疑問を投げかけます。よりシンプルな構成でも同等の性能を低コストで達成できる可能性があります。設計思想は漸進的改善を示していますが、マルチドライバーアプローチは純粋な性能最適化よりもマーケティングアピールを優先している可能性があります。同社は合理的な工学的進歩を示していますが、8ドライバー構成の複雑さ対利益比により全体的な合理性評価は制限されます。
アドバイス
KZ AS16 Proは、優れた感度性能を持つ実証済みのマルチドライバーバランスドアーマチュア技術を求めるユーザーに適していますが、コストパフォーマンスは大幅に安価な代替品により制限されています。この製品は優れた感度(129.0dB/V SPL)と片側8基ドライバー構成による技術的洗練を提供しますが、価値を優先するユーザーは同等のユーザー向け機能を提供する12 USDのKZ ZSN Pro Xを好む可能性があります。ドライバー数と技術的複雑さを優先するユーザーはAS16 Proの高度な実装に価値を見つけるでしょうが、包括的な測定検証を必要とするユーザーはより豊富な第三者データを持つ代替品を好む可能性があります。潜在的な購入者は1年の保証カバレッジを考慮し、使用開始から1年以内の潜在的なケーブル交換を予算に計上すべきです。
参考情報
- Reference Audio Analyzer, KZ AS16 Pro Measurement Report, https://reference-audio-analyzer.pro/en/report/hp/kz-as16-pro.php, 2025年9月12日参照, 測定条件: 129.0 dB/V SPL感度(100Hz-10kHz平均), 61.2オームインピーダンス(40Hz-15kHz平均)
- KZ Audio Official, AS16 Pro Product Specifications, https://kz-audio.com/kz-as16-pro.html, 2025年9月12日参照
- KZ Audio Official, ZSN Pro X Product Specifications, https://kz-audio.com/kz-zsn-pro-x.html, 2025年9月12日参照
(2025.9.12)