KZ ZAS

参考価格: ? 9800
総合評価
2.5
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.4
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.4

16ドライバー構成のハイブリッドIEMだが、技術的複雑さに対して音質向上は限定的。コストパフォーマンスで競合に劣る。

概要

KZ ZASは、Knowledge Zenith社が開発した16ドライバー構成(片側7BA+1DD)のハイブリッド型インイヤーモニター(IEM)です。10mm デュアルマグネット・ダイナミックドライバー1基と、30019高周波バランスドアーマチュア1基、50024sバランスドアーマチュア6基(3組のデュアル構成)を組み合わせた複雑な構成が特徴です。200芯銀メッキケーブルを標準装備し、24Ωのインピーダンスと109dB/mWの感度を持ちます。KZの「フラッグシップ」として位置づけられ、同社史上最もベース重視のチューニングが施されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

KZ ZASの測定性能は平均以下となっています。24Ωのインピーダンスと109dB/mWの感度は適正範囲内ですが、音質面で重要な問題が確認されています。レビューでは「量より質」のベース特性、中域への低域のブリード、メタリックな高域音色が指摘されており、透明性の観点から問題があります。16ドライバー構成にも関わらず、技術的性能は期待値を下回り、サウンドステージも他社製品と比較して狭く、高さよりも幅が強調される傾向があります。詳細なTHD+NやSNR測定データは確認できませんが、複数のレビューソースで音質的な制約が報告されており、科学的有効性は低いと評価されます。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

16ドライバー構成(7BA+1DD)は技術的に野心的なアプローチです。10mmデュアルマグネット・ダイナミックドライバーと、高周波専用30019BA、中高域用50024sBA×6基の組み合わせは複雑な設計を示しています。200芯銀メッキケーブルの採用も技術的配慮を表しています。しかし、レビューでは「ドライバー数に対して技術的性能が期待を下回る」との評価が多く、複雑な構成が必ずしも音質向上に直結していません。現在の市場では、より少ないドライバー数でより良い結果を達成する競合製品が存在するため、技術的なアプローチとしては効率性に疑問があります。それでも、多ドライバー構成への技術的挑戦は評価に値します。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.4}\]

KZ ZASの市場価格は9,800円です。しかし、より安価でありながらバランスの取れた優れた音質を提供する競合製品として「7Hz Salnotes Zero」(実売価格3,500円)が存在します。Salnotes Zeroはシングル・ダイナミックドライバー構成ながら、多くのレビューでその自然な音色とチューニングが高く評価されており、ZASの複雑な構成がもたらす音質的な課題(高域の金属質さや中域の不自然さ)がなく、多くのユーザーにとって「同等以上」の音楽体験を提供します。コストパフォーマンスは、より安価な代替品の存在により著しく低くなります。計算式は 3,500円 ÷ 9,800円 ≒ 0.357 となり、四捨五入して0.4と評価します。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

KZは中国系オーディオブランドとして確立された地位を持ち、グローバルに販売網を展開しています。Amazon、AliExpress、公式ストアなど複数チャネルでの購入が可能で、基本的なサポート体制は整っています。ただし、ZASは既に製造が終了していると見られ、多くの販売店で在庫限りとなっており、長期的な製品サポートには不安があります。また、レビューでは「価格に対してビルドクオリティが安っぽい」「樹脂製で軽すぎてプレミアム感に欠ける」との指摘があり、物理的な耐久性にも懸念があります。保証期間や修理対応については標準的な中国系ブランドレベルと考えられます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

16ドライバー構成は技術的に複雑ですが、現在の市場動向から見ると合理性に疑問があります。競合他社(Truthear、Moondrop等)がシンプルなシングル・ダイナミックドライバーでより良い音質を達成している中、多ドライバー構成による「数の論理」は時代遅れのアプローチです。レビューでは「ドライバー数に対して音質向上が限定的」「技術的性能が期待を下回る」と指摘されており、投入された技術が聴感上の改善に効果的に寄与していません。また、「量より質のベース」「メタリックな高域音色」など、多ドライバー構成特有の問題も残存しており、設計思想として透明度向上への寄与が限定的です。より少ないドライバーで優れた結果を達成する競合製品が存在する現状では、合理性は低いと評価されます。

アドバイス

KZ ZASは16ドライバー構成という技術的な特徴を持ちますが、その価格に見合う音質とは言えません。9,800円という価格を考慮すると、より安価でバランスの取れた音質を提供する「7Hz Salnotes Zero」(3,500円)や「Truthear x Crinacle Zero: Red」(8,200円程度)などが、遥かに合理的な選択となります。特にSalnotes Zeroは、ZASの3分の1程度の価格で、より自然で聴きやすいサウンドを実現しており、コストパフォーマンスの観点から圧倒的に優れています。

ZASの購入を検討される場合は、EQによる調整が前提となることを理解してください。ベース重視のチューニングを好む方には魅力的かもしれませんが、バランスの取れた音質を求める方には不向きです。現在の中級IEM市場では、シンプルな構成で優れた結果を出す製品が主流であり、実用性を重視することをお勧めします。

(2025.8.1)