Laiv Harmony DAC
Intel FPGA搭載のR2R DAC。しかし測定性能は凡庸で、コストパフォーマンスに致命的な問題を抱える。
概要
Laiv Harmony DACは、2023年にシンガポールで設立されたLaiv社の主力製品です。Intel Altera Cyclone FPGAと独自設計のR2Rラダーモジュールを搭載し、価格は2,700 USDです。ソリッドアルミニウム削り出しシャーシやAudio Note Kaisei電解コンデンサなど、高級部品を採用している点を特徴としています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]本機の測定性能(THD+N 0.0035%、SNR 123dB)は、レビューポリシーの基準表における「透明レベル」の最低限の閾値は満たしています。しかし、この数値は現代の基準では凡庸であり、数万円で購入可能なDACでさえ、これを遥かに凌ぐ0.0001%以下の歪率を達成しています。2,700 USDという価格帯を考えると、本機が提供する科学的な忠実度は価格に見合う卓越したものとは到底言えず、評価は標準レベルに留まります。
技術レベル
\[\Large \text{0.6}\]Intel Altera Cyclone FPGAを用いたデジタル処理や、0.05%精度の抵抗を用いたディスクリートR2Rモジュールの採用には、一定の技術的こだわりが見られます。しかし、R2R技術自体は古典的な手法であり、結果として得られる測定性能が最新のデルタシグマ方式に及んでいません。より安価な技術で遥かに高い性能が実現できている現状を考慮すると、業界をリードする革新的な技術レベルにあるとは評価できません。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]本機の価格は2,700 USD(約410,000円)です。しかし、わずか199 USD(約30,000円)で販売されているS.M.S.L D-6Sは、本機を全ての測定性能で圧倒し、機能面でも同等以上です。10分の1以下の価格で、より優れた製品が市場に存在するという事実は、本機のコストパフォーマンスが実質的に存在しないことを示しています。計算式は 199 USD ÷ 2,700 USD ≒ 0.074
となり、スコアはこれを四捨五入した値です。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.4}\]24ヶ月の工場保証は業界平均を上回りますが、Laivは2023年設立の新興企業であるため、長期的な信頼性に関する実績データがありません。創設者の経歴は評価できるものの、企業としてのサポート体制や修理対応の実績は未知数です。海外メーカーである点も、国内でのサポートを重視するユーザーにとっては懸念材料となります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.3}\]R2R方式の採用は、しばしば特有の音質を求めて行われますが、これは科学的根拠に乏しい感性的な主張です。音源を忠実に再現するというハイフィデリティの観点から見れば、より低コストで、かつ遥かに高い測定性能を達成できる現代のデルタシグマ方式を選択しないことに合理性はありません。高級部品の採用も、基本設計の非合理性を補うものではなく、結果として製品価格を不必要に引き上げています。
アドバイス
Laiv Harmony DACの購入は、いかなる観点からも推奨できません。本機はその高額な価格に見合う性能や価値を提供しておらず、設計思想も科学的合理性を欠いています。約2,700 USDという予算があれば、S.M.S.L D-6Sのような、本機をあらゆる性能で凌駕するDAC(約199 USD)を購入しても、まだ2,500 USD以上が残ります。この差額をスピーカーやアンプ、ルームアコースティックの改善に投資すれば、システム全体の音質は比較にならないほど向上するでしょう。公正な評価に基づけば、本機は避けるべき製品です。
(2025.7.24)