Lo-D HMA-9500mkII

総合評価
0.8
科学的有効性
0.2
技術レベル
0.2
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.1
設計思想の合理性
0.1

世界初のパワーMOS FET採用アンプ。しかし現代基準では測定性能が大幅に劣り、コストパフォーマンスも極めて低いヴィンテージ製品。

概要

Lo-D HMA-9500mkIIは、1980年から1984年にかけて日立が製造したステレオパワーアンプです。1977年に発売された初代HMA-9500は「世界初のパワーMOS FETを使用したパワーアンプ」として歴史的意義を持つ製品でした。mkII版は当時270,000円という高価格で販売され、パワーMOS FETの採用により高周波特性と直線性に優れるとされていました。回路構成は初段から電力増幅段まで3段のシンプルな設計で、DCアンプ構成によりカップリングコンデンサを排除し、忠実な信号再生を目指した設計思想でした。

科学的有効性

\[\Large \text{0.2}\]

現代の測定基準と比較すると、本製品の科学的有効性は極めて低い評価となります。具体的な測定データは限定的ですが、1980年代のアナログ技術で設計された本機が、現代の透明レベル基準(THD 0.01%以下、S/N比 105dB以上)を満たすことは不可能です。当時先進的であったパワーMOS FET技術も、現代のクラスDアンプが実現する測定性能には遠く及びません。周波数特性についても、当時の±1dB程度の性能では現代の±0.5dB基準を満たせず、可聴域での差異を生む可能性があります。アナログ回路固有の経年劣化も性能低下の要因となります。

技術レベル

\[\Large \text{0.2}\]

世界初のパワーMOS FET採用という歴史的意義は認められるものの、現代の技術水準から見ればその優位性は完全に失われています。当時の2SK134/2SJ49パワーMOS FETは高速応答を誇りましたが、これは現代の優れたアンプ設計において特別なアドバンテージにはなりません。3段構成の回路やDCアンプ構成は当時としては合理的でしたが、より洗練された現代の増幅技術と比較すると陳腐化は否めません。全体として、1980年代の技術的限界内での実装であり、現代において特筆すべき技術的価値を見出すのは困難です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

現在の中古市場価格約110,000円に対し、性能で全面的に上回る現代アンプがはるかに安価に存在します。例えば、Fosi Audio V3(約20,999円)は、本機を凌駕する出力と、THD+N 0.005%以下、SNR 110dB以上といった、比較にならないほど優れた測定性能を誇ります。コストパフォーマンスは「20,999円 ÷ 110,000円 ≒ 0.19」となり、四捨五入して0.2という極めて低いスコアになります。ヴィンテージとしての価値を除けば、純粋な性能対価格比では現代製品の足元にも及びません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.1}\]

1980年代に製造された製品であり、メーカーサポートは完全に終了しています。修理に必要な専用部品、特にパワーMOS FETの入手は絶望的です。40年以上が経過した電解コンデンサなどの部品は劣化が避けられず、いつ故障してもおかしくありません。修理できる技術者も極めて限られており、維持は非常に困難です。動作保証もなく、購入後の故障リスクは極めて高いと言わざるを得ません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.1}\]

当時としては先進的であった設計思想も、現代の視点からは多くの非合理的な側面が目立ちます。アナログ回路による音質追求は、デジタル信号処理技術によって低コストかつ高性能に置き換えられました。大きく重い筐体は、現代の小型・高効率な設計思想とは対極にあります。スマートフォンと高性能なUSB-DACの組み合わせで同等以上の性能を容易に実現できる現在、本機のような大型専用アンプの存在意義は、合理性の観点からはほぼ失われています。

アドバイス

Lo-D HMA-9500mkIIは、オーディオ史におけるマイルストーンとしての価値を持つ製品ですが、純粋な音質や性能を求める現在のオーディオファイルには全く推奨できません。約2万円で手に入るFosi Audio V3のような現代のクラスDアンプを選択すれば、測定性能、信頼性、機能性の全てにおいて、このヴィンテージアンプを圧倒する体験が得られます。もしコレクション目的で購入する場合でも、高額な維持費と常に故障のリスクが伴うことを十分に覚悟する必要があります。現代的なリスニング環境を構築するなら、より合理的で高性能な選択肢に目を向けるべきです。

(2025.7.21)