Luxman P-750U Mark II

参考価格: ? 346500
総合評価
2.4
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.3

高い測定性能を実現するもS/N比に課題があり、コストパフォーマンスに極めて大きな課題を抱えるハイエンドヘッドホンアンプ

概要

Luxman P-750U Mark IIは、2021年に発表された同社のフラッグシップヘッドホンアンプです。初代P-750Uの発売から4年間で進化した回路技術を反映し、ODNF-u(Only Distortion Negative Feedback-ultimate)技術を搭載しています。バランス出力8W+8W/16Ω、アンバランス出力4W+4W/8Ωの高出力を実現し、4ピンXLRバランス出力を含む多様な接続端子を備えています。重量13.3kg、消費電力42Wの大型筐体に、高純度6N導体を主要信号経路に採用するなど、物量投入による高音質を追求した設計となっています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

測定性能は複数の領域で優秀で、THD+N 0.0005-0.009%(20Hz-20kHz)、周波数特性20Hz-20kHz(+0, -0.1dB)、10Hz-170kHz(+0, -3.0dB)を達成しています。出力インピーダンス500mΩ以下により異なるヘッドホンに対しても安定した特性を維持し、チャンネル分離度は90dB以上、チャンネルバランスは70dBダイナミックレンジ内で0.05dB以内と、多くの指標で透明レベルに到達しています。ただし、S/N比95.3dB(A特性)は105dBの透明レベルに達しておらず、中間領域に位置します。世界最高レベルの測定性能を持つ競合製品が存在するため、相対的な評価となります。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

ODNF-u技術は従来のODNFから進化し、サブアンプの誤差検出精度を向上させることで歪み特性を改善しています。高純度6N導体の採用、4段階のゲイン設定、完全バランス回路設計など、技術的完成度は高水準です。しかし、基本的な回路アプローチは従来技術の延長線上にあり、革新的な技術要素は限定的です。物量投入による性能向上は確認できるものの、同等の測定性能をより効率的に実現する現代的なアプローチと比較すると、技術的アドバンテージは相対的に限定されます。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

現在の市場価格346,500円に対し、同等以上の機能・測定性能を持つSMSL SH-9(約40,000円)が存在します。40,000円 ÷ 346,500円 = 0.12となり、コストパフォーマンスは極めて低水準です。バランス出力、高出力(6W/16Ω)、低歪み率(THD+N 0.0001%未満)、高S/N比(130dB以上)という主要機能において、約1/10の価格で同等以上の性能を実現する製品が市場に存在するため、価格競争力に極めて大きな課題があります。筐体や内部配線の質感、ブランド価値を除けば、純粋な音響性能対価格比では大幅に劣位に立ちます。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

Luxmanは1925年創業の老舗オーディオメーカーとして、業界内での信頼性は確立されています。3年間の保証期間、全国の正規サービス網による修理体制は業界標準レベルです。ただし、故障率や長期信頼性に関する具体的なデータは限定的で、新興メーカーの高性能製品と比較して特別な優位性は確認できません。ファームウェア更新の必要がない純アナログ設計のため、ソフトウェア関連の問題は発生しませんが、アップデートによる機能拡張も期待できません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.3}\]

透明レベルを多くの領域で達成する方向性は合理的ですが、同等以上の性能をはるかに低コストで実現する現代的なアプローチが存在する中で、大型筐体と高価格による従来型の設計思想には疑問があります。ODNF技術の進化は評価できるものの、根本的な回路アプローチは1970年代から継続する伝統的手法の延長にとどまります。高純度導体や物量投入による音質向上を謳っていますが、より優れた測定結果を大幅に安価に実現する製品の存在により、設計思想の経済合理性に重大な課題があります。科学的に意味のある改善を追求している点は評価できるものの、極めて効率性に欠ける設計といえます。

アドバイス

P-750U Mark IIは主要領域で確実に高い測定性能を実現しており、S/N比の制限はあるものの音響的な透明性を重視するユーザーには満足度の高い製品です。しかし、純粋に音響性能を求める場合、同等以上の測定結果を約1/10の価格で実現するSMSL SH-9などの代替製品を強く推奨します。Luxmanブランドの価値や日本製の安心感、高級感のある筐体デザインに特別な価値を見出し、価格差を許容できるユーザーに限定される製品といえるでしょう。客観的な音響性能のみを重視する場合は、より合理的な選択肢が複数存在することを認識すべきです。予算に余裕があり、ブランド価値を含めた総合的な満足度を求めるユーザーには適していますが、コストパフォーマンスを重視するユーザーには推奨できません。

(2025.8.4)