Marantz Model 50
純アナログ設計のプリメインアンプ。測定性能は良好だが、最新D級アンプには及ばず、デジタル入力もないため、コストパフォーマンスと合理性に大きな課題がある。
概要
Marantz Model 50は、同社が2023年に発売した70W+70W出力のプリメインアンプです。最大の特徴はデジタル入力を完全に排除し、アナログ回路のみに特化した点にあります。この設計は、レコードやCDプレーヤーといったアナログソースの高品位な再生を追求するユーザーを明確なターゲットとしています。HDAMモジュールや電流帰還型パワーアンプなど、Marantzの伝統的な技術を投入し、5つのアナログライン入力とMM対応フォノ入力を搭載。日本市場では約197,505円で販売されています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.7}\]測定性能は全体的に良好で、多くの項目で聴感上の透明性を確保できるレベルにあります。SoundStageの測定によれば、周波数特性は20Hz-20kHzでほぼフラット、高調波歪率(THD)や混変調歪率(IMD)も低い値に抑えられています。しかし、この性能はもはや特別なものではありません。例えば、Topping PA5 IIのような最新の低価格D級アンプは、THD+Nが0.0004%、SN比が124dB といった、本機を部分的に凌駕する測定結果を示します。Model 50は優秀なアナログアンプですが、今日の最高水準の性能というわけではなく、科学的な優位性は限定的です。
技術レベル
\[\Large \text{0.5}\]Marantz独自のHDAMモジュールや伝統的なClass A/B方式のアナログ回路は、長年培われた手堅い技術です。しかし、技術の先進性という観点では業界平均レベルに留まります。最新の高性能D級アンプが、より優れた効率と測定性能を両立している現状において、伝統的なClass A/B方式に固執する技術的優位性は見出し難くなっています。「純アナログ」という設計は、ノイズ対策など丁寧な実装が求められますが、それが最新技術を超える結果には結びついておらず、技術レベルとしては保守的と言わざるを得ません。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.2}\]コストパフォーマンスには深刻な課題があります。例えば、YAMAHA A-S301(34,020円)は、同等のアナログ機能に加えデジタル入力まで備え、価格は約1/6です。さらに、Topping PA5 II(約34,000円) のように、より安価で本機を上回る測定性能を持つD級アンプも存在します。計算式:34,020円 ÷ 197,505円 = 0.172となり、四捨五入すると0.2です。ユーザーは、より高性能かつ多機能な製品を、ごくわずかなコストで入手可能です。ブランド価値やデザイン以外の性能面で、この価格差を正当化する要素は見当たりません。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.8}\]Marantzは長年のオーディオメーカーとして確立された保証・サポート体制を持っています。Model 50には所有者登録により5年間の部品・労務保証が付帯し、これは業界標準を上回る手厚いサポートです。同社の製品は一般的に故障率が低く、修理体制も整備されています。ファームウェア更新が不要な純アナログ設計のため、ソフトウェア関連の問題が発生せず、長期的な安定動作が期待できます。国内正規代理店によるサポート体制も確立されており、アフターサービスは業界上位水準にあります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.5}\]「純粋なアナログ」にこだわる設計思想は、特定のオーディオ愛好家の哲学には合致するかもしれません。しかし、そのこだわりが必ずしも最高の性能に結びついていないのが実情です。より安価な最新D級アンプが同等以上の測定性能を達成している以上、「純アナログだから高音質」という主張の合理性は揺らぎます。デジタル入力を排したことで利便性は大きく損なわれ、多くのユーザーにとって別途DACが必須となります。結果として、システムは高コストで複雑になり、汎用性も失われます。その設計思想は、現代のオーディオ市場においては合理的とは言い難いです。
アドバイス
Model 50の購入を検討する前に、最新の低価格・高性能なD級アンプの存在を認識することをお勧めします。例えばTopping PA5 IIやFosi Audio V3 といった製品は、3万円台でModel 50に匹敵、あるいは部分的に上回る測定性能を提供します。これらの製品と別途DACを組み合わせても、総コストはModel 50を大幅に下回り、より高い柔軟性が得られます。どうしてもMarantzのデザインやブランドに価値を見出す場合を除き、性能とコストを合理的に判断するならば、他の選択肢を強く推奨します。
(2025.7.28)