Marantz NA-11S1

参考価格: ? 115000
総合評価
2.7
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.4
コストパフォーマンス
0.5
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.4

2013年発売のリファレンス級ネットワークオーディオプレーヤー。優秀な測定性能を持つものの、現代の代替手段と比較して極めて高価で合理性に欠ける

概要

Marantz NA-11S1は2013年に発売されたリファレンスシリーズのネットワークオーディオプレーヤー兼DACです。24bit/192kHz PCMおよびDSD対応、110dB S/N比、0.001% THD+Nという優秀な測定性能を誇り、当時のハイエンド機として設計されました。現在は生産終了となっており、中古市場では約115,000円で取引されています。マランツの国内工場で製造された日本製の高級機として、ブランドの威信をかけた製品でした。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

測定データは現在でも十分に透明レベルに達しています。THD+N 0.001%、S/N比110dB、チャンネルセパレーション110dB以上という性能は、人間の可聴閾値を大きく上回る水準です。周波数特性は192kHz対応時に2Hz-50kHz(-3dB)、44.1kHz時に2Hz-20kHzと良好で、Stereophile誌の実測でも20bit相当の分解能が確認されています。現代の基準と照らし合わせても、すべての項目で透明レベルをクリアしており、科学的に有効な音質を提供します。

技術レベル

\[\Large \text{0.4}\]

2013年当時としては高水準でしたが、現在の基準では平均以下です。DACチップや回路設計に特筆すべき独自技術はなく、ネットワーク機能も有線LANのみでWi-Fi非搭載という制約があります。ストリーミングサービス対応も限定的で、現代的なRoon Ready認証やMQA対応もありません。マランツの設計思想は感じられるものの、技術的なブレイクスルーや業界をリードする革新性は見当たりません。既存技術の丁寧な実装に留まっており、他社が欲しがるような独自技術は搭載されていません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.5}\]

中古市場価格115,000円に対し、同等以上の機能・測定性能を持つWiiM Ultra(59,400円)が存在します。計算式:59,400円 ÷ 115,000円 = 0.52となり、四捨五入で0.5です。さらに廉価な選択肢として、PCにTopping E30 II Lite(約15,000円)のような高性能USB DACを組み合わせることで、本機を上回る測定性能を遥かに安価に実現可能です。ネットワーク再生、DACとしての基本機能、測定性能のすべてにおいて、圧倒的に安価な代替手段が複数存在するため、コストパフォーマンスは劣悪です。専用機として存在する意義が現代では失われています。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

マランツブランドとしての品質は一定水準を保っていますが、2013年発売の生産終了品のため公式サポートは限定的です。部品調達や修理対応の継続性に不安があり、故障時のリスクが高くなっています。当時の製品としての作りは堅牢ですが、現在入手するのは中古品のため個体差や経年劣化の影響を受ける可能性があります。保証期間も中古販売店の短期保証に限られるため、長期使用における信頼性は新製品と比較して劣ります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

2013年当時の設計思想としては合理的でしたが、現代では非合理的な側面が目立ちます。専用ネットワークオーディオプレーヤーという製品カテゴリ自体が、PC + DAC構成やスマートフォン + 外付けDACによって代替可能となっており、存在意義が薄れています。Wi-Fi非対応、限定的なストリーミングサービス対応など、現代的な利便性を欠いた設計です。測定性能の透明レベル達成は評価できますが、同等性能を遥かに安価に実現できる現在では、高コストな専用機アプローチの合理性は失われています。

アドバイス

購入は推奨しません。115,000円という予算があれば、WiiM Ultra(59,400円)とより高性能なパワーアンプやスピーカーの購入、またはPC + 高性能USB DAC構成で同等以上のシステムを構築できます。マランツブランドへの愛着やヴィンテージ価値を求める場合を除き、音質面での客観的優位性は全くありません。現代的な利便性(Wi-Fi、豊富なストリーミングサービス対応、Roon Ready等)を求めるなら尚更です。予算を現代的な製品に投じることで、遥かに優れた音楽体験を得られるでしょう。

(2025.8.2)