Marantz NR1200
2チャンネル対応ながら5つのHDMI入力を備える現代的なステレオレシーバー。コンパクトな筐体に必要十分な機能を詰め込んだ「ポストAV」市場向けの製品。
概要
Marantz NR1200は、従来のAVレシーバーの半分の高さという薄型筐体に2.1チャンネル構成を採用したステレオレシーバーです。出力75W(8Ω)を発揮し、5つのHDMI入力と4K対応、Wi-Fi・Bluetooth・HEOSストリーミング機能を搭載しています。AVレシーバーから2チャンネルオーディオへの移行を検討するユーザーを対象とした「ポストAV」カテゴリの製品として位置づけられており、現代的な接続性と従来のHi-Fi品質の両立を図った設計となっています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]第三者測定値ではSINAD約75dB(THD+N約0.018%相当)、出力75W(8Ω)・100W(6Ω)の値が示されており、問題レベルには達していませんが、透明レベル(例: THD+N 0.01%以下)からは距離があります。チャンネルあたり2つのDACを使用したデュアル差動構成により、S/N比の改善が図られており、低レベル信号の再現性向上に寄与しています。周波数特性は20Hz-20kHzの可聴帯域をフラットにカバーしますが、具体的な偏差データは限定的です。独立したL/R電力増幅回路と専用電源トランスにより、クロストークの低減効果が期待できます。しかし、測定データが限定的であり、業界最高水準の透明レベルには到達していない評価となります。
技術レベル
\[\Large \text{0.6}\]8チャンネル24bit/192kHzのDACをデュアル差動モードで動作させる設計は堅実な技術実装です。高電流ディスクリートアンプ回路と独立電源トランスによる左右分離設計は、チャンネルセパレーションとサウンドステージの明瞭性向上に技術的根拠があります。HDMI処理回路では4K/60Hz映像とHDR対応を実現していますが、これらは既存技術の組み合わせであり、特別な独自性はありません。HEOSプラットフォームの統合も適切ですが、業界標準的な実装レベルに留まっています。現在の技術水準からみると平均的な技術レベルです。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]現在価格約60,000円で、5つのHDMI入力を持つ2チャンネルレシーバーとしては競合が限定的です。主要な比較対象であるYamaha R-N602(約70,000円)はHDMI入力を持たず、Cambridge Audio AXR100(約70,000円)も同様にHDMI非対応です。HDMI対応ステレオレシーバーとしてはDenon DRA-900H(69,300円)がありますが、69,300円÷60,000円=1.15となり、NR1200が同等機能で最安価格です。同等以上の機能・測定性能を持つより安価な製品が存在しないため、コストパフォーマンススコアは最高評価となります。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]Marantzブランドは長年の実績があり、一般的に故障率は低いとされています。3年間の製品保証が提供され、国内サポート体制も確立されています。ただし本製品は既に生産終了しており、後継機種Stereo 70sへの移行が進んでいます。長期的なファームウェア更新や部品供給に関しては不確実性があります。レビューでは発熱の報告に加え、オーディオドロップアウト、ランダムシャットダウン、チャンネル故障が散見されますが、致命的な不具合の報告は少なく、業界平均的な信頼性レベルと判断されます。生産終了による将来的なサポート制約を考慮した評価です。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.8}\]「ポストAV」市場という新たなカテゴリを的確に捉えた設計思想は高く評価できます。従来のAVレシーバーから2チャンネル構成への移行ニーズに対し、HDMI入力の維持という実用的解決策を提示しています。薄型筐体は現代的なリビング環境に適合し、ストリーミング機能の統合も時代的要求に応えています。DolbyやDTSサラウンド非対応は設計目標との一貫性があり、2チャンネル特化による音質重視のアプローチは合理的です。汎用機器(スマートフォン+外付けDAC等)では実現困難なHDMI統合機能を専用機として提供する必然性が認められます。
アドバイス
NR1200は、既存のAVシステムから2チャンネル構成への移行を検討しているユーザーに最適な選択肢です。特に複数のHDMI機器(ゲーム機、ストリーミングデバイス等)を接続しつつ、高品質な2チャンネル音楽再生を重視する環境に適しています。生産終了品のため購入時期が限られますが、現在の価格水準では同等機能の代替製品が少なく、合理的な選択といえます。ただし、純粋な音楽専用途であればより音質特化した製品の検討も推奨されます。長期使用を前提とする場合は、サポート体制の制約を理解した上での判断が必要です。
(2025.8.3)