Moondrop Meteor

参考価格: ? 76500
総合評価
2.7
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.7

隕石を埋め込んだ独特なデザインと1DD+2BA+4Planar構成を持つトライブリッドIEMだが、76,500円という価格に対して、より安価に優れた性能を実現できる製品が存在する。

概要

Moondrop Meteorは2024年末にリリースされた同社のフラッグシップトライブリッドIEMです。1つのダイナミックドライバー、2つのバランスドアーマチュア、4つのマイクロプラナードライバーという7ドライバー構成と、実際の隕石を埋め込んだ独特なフェイスプレートが特徴的な製品です。XTM複合技術による専用クロスオーバー設計と、アコースティックメタマテリアルフィルターによる音響調整が施されています。価格は76,500円で、MoondropがVDSF Target Response curveに基づいてチューニングした高級IEMとして位置づけられています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

インピーダンス18.5Ω、感度120dB/Vrms、周波数特性9Hz-35kHzという測定値は、概ね良好な性能を示しています。感度120dBは100dB以上の優秀レベルをクリアし、低インピーダンス設計によりポータブル機器での駆動性も確保されています。しかし、公称の高調波歪率(THD)が≤0.6%という値は、製品カテゴリ別基準においてイヤホンで問題とされるレベルである0.5%以上に達しています。他のスペックは良好であるものの、この歪率はハイファイ製品としては明確な欠点となります。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

7ドライバーによるトライブリッド構成と、XTM複合技術によるクロスオーバー設計は技術的な独自性を示しています。4つのマイクロプラナードライバーによる高域再生と、アコースティックメタマテリアルフィルターによる4.7kHzと7.2kHz周辺のピーク抑制は合理的な設計アプローチです。実際の隕石を振動ダンパーとして活用するアイデアも興味深い取り組みです。しかし、最終的な測定性能、特にTHDを見る限り、この複雑な技術投入が聴覚上意味のある改善に直結しているかは疑問です。業界水準としては平均を上回る技術レベルですが、最高水準の自社設計とは言えません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

76,500円という価格に対して、Truthear ZERO:RED(約8,250円)のような製品が、より優れた測定性能を提供します。ZERO:REDは全周波数帯域で著しく低いTHDを示しており、ユーザー視点ではより高い忠実度を提供します。コストパフォーマンス計算では、8,250円 ÷ 76,500円 = 0.107… となり、約9分の1の価格で優れた性能が得られることを示しています。隕石埋め込みなどの装飾的要素は機能・測定性能評価には含めないため、純粋な性能対価格比では極めて低い評価となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

Moondropは中国の確立されたオーディオメーカーとして1年間の製品保証を提供しており、グローバルな販売網とサポート体制を持っています。ケーブルには3か月保証が設定されています。IEM製品として特別な故障リスクは報告されておらず、0.78mm 2ピンという標準的な接続方式により交換ケーブルの入手も容易です。ただし、複雑な7ドライバー構成は、単純な構成の製品より長期使用での故障リスクが高い可能性があります。サポート体制は業界平均水準と評価できます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

VDSF Target Response curveに基づくチューニングと、測定可能な音響特性の改善を目指した設計アプローチは合理的です。アコースティックメタマテリアルフィルターによる特定周波数の問題解決や、各ドライバーへの専用帯域の割り当ても科学的根拠に基づいています。XTM複合技術による位相整合への配慮も適切な方向性です。しかし、理想的とは言えないTHD性能に終わっている点を鑑みると、この複雑な7ドライバー構成が本当に必要だったのかは疑問が残ります。より簡素で最適化された構成で優れた測定性能を達成できる可能性は、一部の技術投入が過剰設計であった可能性を示唆します。

アドバイス

Moondrop Meteorは技術的な興味深さと独特なデザインを持つ製品ですが、コストパフォーマンスの観点では推奨できません。76,500円で得られる音響性能は、Truthear ZERO:REDのような8,250円程度の製品に劣ります。隕石埋め込みや複雑なドライバー構成に価値を見出し、予算に余裕がある場合にのみ選択肢となるでしょう。純粋な音質を重視する購入者には、ごくわずかな価格で入手できる、より優れた測定性能を持つ製品を検討することを強く推奨します。Moondropブランドや見た目のデザインに特別な価値を感じる場合を除き、合理的な選択とは言えません。

(2025.8.1)