MOTU 828 (2024)

参考価格: ? 149250
総合評価
4.0
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.8

ESS Sabre32 Ultra DACを搭載した28入力32出力のUSB 3.0オーディオインターフェース。優秀な測定性能を持ち、28入力以上のオーディオインターフェースとして世界最安価格を実現している。

概要

MOTU 828 (2024)は、同社の1Uラックマウント型オーディオインターフェースの最新モデルです。2001年に初代が登場して以来、プロオーディオ業界で広く使用されてきた828シリーズの最新版として、28入力32出力の豊富なI/O、ESS Sabre32 Ultra DACテクノロジー、USB 3.0接続を特徴としています。5kgの金属筐体による堅牢な構造と、3.9インチTFTディスプレイによる視覚的なメータリング機能を備え、スタジオとライブ両方での使用を想定した設計となっています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

測定性能は非常に優秀です。マイク入力のTHD+Nは-113 dB、アナログ出力は-114 dBを実現しており、0.01%を大幅に下回る透明レベルに達しています。ダイナミックレンジはマイク入力で120 dB、アナログ出力で123 dBと、105 dB以上の透明基準を上回る性能を示します。等価入力雑音(EIN)は-129 dBuと優秀で、96 kHzでの往復レイテンシーは約1.6msと実用的なリアルタイムモニタリングを可能にします。ESS Sabre32 Ultra DACと高性能A/Dコンバーターの組み合わせにより、ほぼすべての指標で透明レベルをクリアしています。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

ESS Sabre 9026PRO DACによる8チャンネル32bit DA変換、デジタル制御のBB PGA2500プリアンプなど、現在の業界標準に適合した高品質コンポーネントを採用しています。USB 3.0接続による5 Gbpsの帯域幅確保、24入力デジタルミキサーと内蔵DSPエフェクト、iPadとの直接接続対応など、実用的な機能統合が図られています。ただし、革新的な独自技術というよりは、既存の優秀なコンポーネントを適切に組み合わせた設計であり、技術的な突破口や業界に大きな影響を与える新規性は限定的です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

995 USDの価格設定は、28入力以上のオーディオインターフェース市場において世界最安価格を実現しています。競合製品としてはArturia AudioFuse 16Rig(1,079-1,299 USD、26入力28出力)、Cranborne Audio 500R8(1,799 USD、28入力30出力)、RME Fireface UFX III(3,000 USD以上)などが存在しますが、いずれも本製品より高価格です。28入力32出力という仕様を満たす現行製品の中で、本製品が実質的に最安であるため、コストパフォーマンススコアは1.0となります。同等以上の機能・測定性能を持つより安価な選択肢が存在しない状況です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

MOTUは長年にわたりプロオーディオ市場で実績を積んだ企業で、828シリーズは20年以上の歴史を持つ定番製品です。5kgの金属筐体による堅牢な構造は、プロ現場での使用に耐える品質を示しています。macOS、Windows、iOSに対応し、クラスコンプライアント設計によりドライバー不要での動作が可能です。ただし、新興メーカーの製品と比較して特別に優れた保証条件や革新的なサポート体制があるわけではなく、業界平均を上回る程度の水準です。長期的な信頼性については実績があるものの、突出した特徴は見られません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

測定可能な音質指標の改善に焦点を当てた合理的なアプローチを採用しています。ESS Sabre32 Ultra DACや高性能A/Dコンバーターなど、客観的に優秀な性能を持つコンポーネントの選択、デジタル制御による精密なゲイン管理、低レイテンシーの実現など、科学的根拠に基づいた設計判断が随所に見られます。24ビット192 kHzサポート、豊富なデジタルI/O、内蔵DSPによるリアルタイム処理など、現代的なデジタルオーディオワークフローに最適化された機能構成となっています。オカルト的要素を排除し、測定結果で検証可能な音質向上を追求する姿勢は高く評価できます。

アドバイス

MOTU 828 (2024)は技術的に優秀で、28入力以上のオーディオインターフェースとして世界最安価格を実現した製品です。この入力数を必要とする用途であれば、価格面での優位性は明確です。競合のArturia AudioFuse 16Rig(1,079-1,299 USD)やCranborne Audio 500R8(1,799 USD)と比較して、機能・測定性能・価格のバランスが優れています。28入力が必要ない場合は、より少ない入力数の製品を選択することで更なるコスト削減が可能ですが、この仕様が要求される用途では最適な選択肢となります。USB 3.0接続、ESS Sabre32 Ultra DAC、堅牢な金属筐体など、価格を考慮すれば十分に価値のある機能構成です。長期使用を前提とした投資として推奨できます。

(2025.8.5)