Neumann KH-150

参考価格: ? 300000
総合評価
4.4
科学的有効性
0.9
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.9

史上最高クラスの測定性能とDSP補正を両立。同等性能の代替品が見当たらないため、この性能を求めるなら最高のコストパフォーマンスを誇る。

概要

Neumann KH-150は、同社のミッドレンジに位置する6.5インチ2ウェイパワードスタジオモニターです。DSP制御エレクトロニクスとMA1自動モニターアライメントシステムとの組み合わせにより、設置環境に最適化されたモニタリング環境を構築します。ウーファー用145W、ツイーター用100Wのバイアンプ駆動により、最大118.7dB SPL(1m)という高い出力と、39Hzに達する低域再生能力を持ちます。プロフェッショナルな録音環境での使用を前提とした設計思想を反映し、その卓越した測定性能で業界から高い評価を受けています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

Audio Science Review(ASR)による測定で「今まで測定した中で最高のモニター/スピーカーの一つ」と評価され、異例の測定結果を記録しています。周波数特性は39Hzまでの低域拡張にも関わらず極めて平坦で、歪率は86dB SPLにおいて電子機器に匹敵するレベルの低歪み性能を実現しています。96dB SPLという大音量時でも100Hz以上で50dB以上のS/N比を維持し、このサイズのエンクロージャーからは想像し難いほどの低歪み特性を示します。この極めて高い測定性能は、聴感上でも有効な改善効果をもたらす可能性が高いです。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

DSP制御による線形位相特性の実現と、MA1システムによる自動ルームコレクションは技術的に先進的なアプローチです。6.5インチウーファーと1インチツイーターの組み合わせに、合計245Wのバイアンプ駆動を採用し、20リットルのバスレフエンクロージャーから39Hzの低域拡張と高い最大音圧を両立させる設計は、高度な音響工学の賜物です。ただし、基本的なドライバー構成やアンプトポロジーは既存技術の延長線上にあるため、完全に革新的とまでは言えません。Neumannが長年培ってきた設計ノウハウが結集された製品として評価できます。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

本機が提供する、極めて高い測定性能(特に低歪み、39Hzまでの低域再生、118.7dBの高SPL)と、DSPによる自動音場補正機能というパッケージを、これより安価に実現する代替製品は現行市場に見当たりません。調査の結果、本機と同等以上の物理性能と機能を持つ競合製品は、いずれも本機より高価でした。レビューポリシーに基づき、ある特定の機能・性能の組み合わせにおいて世界最安である製品のコストパフォーマンスは1.0と評価されます。したがって、本機のスコアは1.0となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Neumannは70年以上の歴史を持つドイツの老舗音響機器メーカーとして、業界標準の保証期間(2年)と充実したサービス体制を提供しています。プロフェッショナル向け製品として堅牢な設計が施されており、スタジオ環境での長期使用に耐える品質基準を満たしています。国内正規代理店による技術サポートも整備されており、業務用途での導入実績も豊富です。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.9}\]

DSPベースのアプローチによる線形位相特性の実現と、MA1による科学的なルーム測定・補正システムの統合は、極めて合理的な設計思想です。主観的な音作りではなく、測定可能な音響特性の最適化を目指すアプローチは科学的根拠に基づいています。39Hzまでの低域拡張と低歪み性能を両立させる設計は、物理的制約の中で最適解を追求した結果として評価できます。専用ハードウェアとして高度に統合されたシステムは、一貫した性能と利便性を提供し、その設計には高い合理性が見られます。

アドバイス

KH-150は、その測定性能において現行市場で最高峰に位置するスタジオモニターの一つです。本機が提供するトップクラスの性能、特に「39Hzに達する深い低域再生能力」と「118.7dBという極めて高い最大音圧レベル」の両方を、DSPによる自動音場補正付きで必要とするならば、これ以外に選択肢はありません。その意味で、この価格は完全に正当化されます。一方で、ここまでの物理性能を要求しないのであれば、より安価なDSP補正付きモニター(例えば、より小型のウーファーを持つ製品)も検討の価値があります。ご自身の制作環境で本当にこのクラスの性能が必要かどうかを慎重に見極めることが、最も賢明な購入判断に繋がるでしょう。

(2025.7.28)