Neumann KH-310-A

参考価格: ? 375000
総合評価
4.1
科学的有効性
0.9
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.9

科学的測定で卓越した性能を示すプロフェッショナル3ウェイスタジオモニター。34Hz-21kHz の広帯域再生と116dB超の最大音圧レベルを実現。MMD波面制御技術により正確な音像定位を提供します。

概要

Neumann KH-310-Aは、ドイツの老舗音響機器メーカーであるNeumannが開発した3ウェイ・トライアンプ構成のアクティブスタジオモニターです。8.25インチウーファー、3インチミッドレンジドライバー、1インチツイーターを搭載し、定格出力290W(バス150W、ミッド70W、ツイーター70W)の独立熱保護クラスABアンプで駆動します。34Hz-21kHzの周波数帯域と116dB超の最大音圧レベルを実現し、プロフェッショナルスタジオでの精密なモニタリング用途に設計されています。密閉型キャビネット設計により定在波共振を防止し、MMD(数学的モデル化分散)ウェーブガイド技術によって優れた指向性制御を実現しています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

測定データにおいて極めて優秀な性能を示しています。周波数特性は34Hzから21kHzまでの広範な帯域をカバーし、主要な聴取帯域において±1.5dB以内という極めてフラットな特性を実現しています。高調波歪率は非常に低く、95dBという大音量出力時でも85Hz以上の帯域で0.5%以下に抑えられており、透明レベルを達成しています。最大音圧レベルは100Hz-6kHz間で116dBに達し、ダイナミクスの大きな音源も正確に再生可能です。Sound on Sound誌の測定レビューでは「驚異的な音質と性能」「卓越した解像度、中立性、精度」と評価されており、科学的に可聴域での改善効果が明確に実証されています。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

高度な自社設計技術が投入されています。MMD(数学的モデル化分散)ウェーブガイド技術は、楕円形状の波面制御により水平方向の指向性を最適化し、音像定位の精度向上を実現する独創的なアプローチです。3ウェイ・トライアンプ構成では各ドライバーに最適化された独立アンプを配置し、ウーファー150W、ミッドレンジ70W、ツイーター70W(ピーク時はそれぞれ210W、90W、90W)の熱保護機能付きクラスABアンプを採用しています。密閉型キャビネット設計は優れた過渡応答を実現し、タイトで正確な低域再生に貢献します。これらの技術は業界標準を上回る水準です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

現在の市場価格は1台あたり約2,500USDです。比較対象として、同じNeumannの新しいモデルKH 150(約1,750USD)が存在します。素の性能で比較すると、本機はKH 150より優れた低域再生能力(34Hz vs 39Hz)を持ちますが、KH 150は最新のDSP制御により、特に中高域で本機を凌駕するほどの低歪み性能を発揮します。最も重要な違いはKH 150が持つ自動音場補正機能です。これにより、多くの実環境で最終的によりフラットな音響特性を得られる可能性が高くなります。より深い低域再生能力を持つ本機に対し、KH 150は優れた音場補正能力と極めて低い中高域の歪みをより低い価格で提供します。この価値のトレードオフを考慮し、計算式「1,750USD ÷ 2,500USD = 0.7」に基づき、スコアを0.7と評価します。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Neumannは1928年創立の老舗ドイツ音響機器メーカーで、世界中のプロフェッショナルスタジオで長期間使用される信頼性を持ちます。各アンプには独立した熱保護リミッターを搭載し、ウーファー、ミッドレンジ、ツイーターのボイスコイルを過熱から保護します。密閉型キャビネットは構造的に堅牢で、業務用途での長期使用に耐える設計です。国際的なサポート体制が整備されており、交換部品の供給やメンテナンスサービスが利用可能です。Sound on Sound誌では「コンパクトな3ウェイリファレンスモニターとして驚異的に高い基準を設定」と評価され、プロフェッショナル用途での実績が確認されています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.9}\]

音源への忠実度を最優先とする極めて科学的なアプローチを採用しています。MMDウェーブガイド技術は数学的モデリングに基づく波面制御により、主観的な「音の味付け」を排除して正確な音像再現を実現します。密閉型キャビネット設計は定在波共振を防止し、透明な低域再生を可能にする合理的選択です。3ウェイ・トライアンプ構成により各帯域に最適化されたアンプを配置し、相互干渉を最小化しています。周波数特性のフラットネスや低歪みの実現など、透明レベルを満たす性能向上に技術を投入しており、純粋に測定可能な音質改善を追求する設計思想は高度に合理的です。

アドバイス

サブウーファーなしでの深い低域再生と、純粋なアナログシグナルパスに価値を見出すプロフェッショナルにとって、本機は依然として最高峰の選択肢です。3ウェイ構成ならではの中域の解像度も大きな魅力です。一方で、よりコストを抑えつつ最先端のモニタリング環境を求めるなら、KH 150は極めて強力な対抗馬となります。KH 150の低域限界は本機に一歩譲りますが、DSPによる自動音場補正機能は、多くのスタジオ環境において本機単体よりもフラットな再生環境を構築できる可能性を秘めています。どちらを選ぶかは、絶対的な低域再生能力を優先するのか、それともDSPによる環境適応能力を優先するのか、という設計思想の違いによります。

(2025.7.28)