Nothing Ear Open
14.2mmチタンコーティングドライバーとIP54(本体・ケース)に対応するオープンイヤー型。オープンイヤーとしてはMDAQSで最高水準の測定結果ですが、物理的制約によるサブベース不足とサポート体験のばらつきが残ります。
概要
Nothingは2024年9月、初のオープンイヤー設計「Ear (open)」を149 USD(国内想定販売22,373円相当)で投入しました。14.2 mm動的型ドライバー(チタンコーティング振動板)、本体・ケースともIP54、Bluetooth 5.3のマルチポイント、8時間/30時間のバッテリー、片側8.1 gのフック式という構成です。遮音より周囲認識を優先する設計で、ランニングや通勤など安全性を重視する用途を狙います。 [1][2][6]
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]HEAD acousticsのMDAQSにて総合3.6/5を記録し、直近のオープンイヤー機の中では最高値が報告されています。一方で測定周波数特性はプリファレンスカーブから大きく外れ、サブベースは極小、高域に上昇が見られます。遮音0に近い開放放射ゆえの結果で、密閉型IEMと比べると透明域には達しません。クラス内では優秀、絶対評価では中庸という位置づけです。 [1][3][4]
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]Nothingは、Sound Seal System(指向性スピーカーによる漏洩低減)やチタンコーティング振動板、低域補正のBass Enhanceなど、開放型の課題に理にかなった技術で取り組んでいます。Bluetooth 5.3のマルチポイント、Fast Pair/Swift Pair、Nothing端末での低遅延モード(約120 ms)など無線周りも一通り揃っています。オープンイヤーという制約下で堅実にまとめた印象です。 [2][5][6]
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]CPは同等以上の機能と測定性能を持つ最安比較対象の価格で評価します。現時点でEar (open)の測定上の音質に匹敵または上回るオープンイヤー製品で、かつより安価なものは確認できません(例:Bose Ultra OpenはMDAQS総合2.3かつ高価、Soundcore AeroFit 2は1.8で安価だが測定上劣後)。したがってより安価な同等以上品は存在せず、CPは1.0とします。 [3][4]
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.4}\]公式のアフターサービスでは修理3–5営業日(物流除く)と明記されますが、2024–2025年のユーザー報告では遅延ややり取りの難航が散見されます。ハード面は本体・ケースともIP54で環境耐性は悪くありません。製品自体は平均的、運用面のばらつきが評価を下げます。 [7][8]
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.5}\]「周囲認識を保ちながら音を楽しむ」という目的は合理的で、Nothingの漏洩低減策や材料選択は理にかなっています。ただし開放型の物理制約により、サブベース拡張や遮音は根本的に得られず、DSPでの補正にも限界があります。安全・利便性用途には合理的、忠実度を最優先する用途には非推奨という判断です。 [1][2][5]
アドバイス
周囲認識が最優先なら、現状のオープンイヤー機の中では本機が測定上もっとも説得力のある選択肢です。音楽鑑賞重視なら、より安価な密閉IEMの方が周波数特性・遮音の面で有利です。最低限の認識性だけを安価に求めるなら低価格オープンイヤーもありますが、公開測定では本機に及ばないためCP比較対象には採用していません。サポート品質のばらつきも踏まえ、返品条件の明確な販売店での購入をおすすめします。 [1][3][4][8]
参考情報
[1] SoundGuys, “Nothing Ear (Open) review,” https://www.soundguys.com/nothing-ear-open-review-124038/ , 2024-09-24(MDAQS 3.6、FR傾向・サブベース記述)
[2] Nothing Technology, “Ear (open) 公式ページ(US), ” https://us.nothing.tech/products/ear-open , 2025-08-21参照(IP54、BT 5.3、バッテリー、低遅延モード)
[3] SoundGuys, “Bose Ultra Open Earbuds review,” https://www.soundguys.com/bose-ultra-open-earbuds-review-113271/ , 2025-05-15(MDAQS 2.3)
[4] SoundGuys, “Anker Soundcore AeroFit 2 review,” https://www.soundguys.com/anker-soundcore-aerofit-2-review-126119/ , 2024-10-29(MDAQS 1.8、価格)
[5] SoundGuys, “Hear everything with the new Nothing Ear (Open),” https://www.soundguys.com/hear-everything-with-the-new-nothing-ear-open-124248/ , 2024-09-24(指向性スピーカー/漏洩低減・Bass Enhance)
[6] The Verge, “Nothing Ear (Open) announced,” https://www.theverge.com/2024/9/24/24252192/nothing-ear-open-wireless-earbuds-headphones-available , 2024-09-24(発売時期・主要仕様)
[7] Nothing Support, “After-Sales Service Process,” https://us.nothing.tech/pages/support-after-sales-process , 2025-08-21参照(修理目安3–5営業日)
[8] Trustpilot, “Nothing Reviews,” https://www.trustpilot.com/review/nothing.tech , 2025-08-21参照(最近のサポート体験の報告)
(2025.8.21)