OASA Electronics Egretta TS-A200asB
OASA Electronics Egretta TS-A200asBは独自の全方位音響設計を採用していますが、限定的な周波数特性と、より安価で高性能な代替製品が存在するため、コストパフォーマンスが低い製品です。
概要
OASA Electronics(オオアサ電子株式会社)は、20年以上のOEM製造経験を基に2011年に自社ブランドを立ち上げた広島県の電子機器メーカーです。Egretta TS-A200asBは、同社の代表的な全方位アクティブスピーカーで、360度全方向への音の放射を特徴とします。高さ約26cmのコンパクトな円柱形の筐体に、ハイル型ツイーター、ドーム型ミッドレンジ、アクチュエーター振動ユニットによる3ウェイ構成を採用しています。内蔵アンプは18W+18Wの出力を持ち、多彩な入力端子を備えています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.4}\]Egretta TS-A200asBの公称周波数特性80Hz-45kHzは、特に音楽再生の土台となる80Hz以下の低域を完全に欠いており、測定結果基準表の透明レベル(20Hz-20kHz ±0.5dB)を著しく下回ります。全方位という設計は、原理的に明確なステレオイメージの定位を困難にし、一般的な室内環境では壁面反射による意図しない音響特性の悪化を招きます。出力18W+18Wというスペックも十分なダイナミックレンジの確保には限定的です。独立した第三者機関によるTHD、S/N比、クロストークなどの詳細な測定データが公表されておらず完全な評価は困難ですが、利用可能な情報からは複数の基本性能で透明レベルに達していないことが示唆されます。
技術レベル
\[\Large \text{0.3}\]本製品は、ポリマークレイコンポジットフィルムやリグニン含有炭素FRP振動板といった独自の素材技術、そしてアクチュエーターを用いたアクティブホーン構造など、ユニークな技術要素が認められます。しかし、ハイル型ツイーターやドーム型ユニットの採用は業界では標準的なアプローチであり、3ウェイ構成や内蔵アンプ(18W+18W)の仕様も、既存技術の組み合わせの範疇に留まります。全方位音響という設計自体は独自性がありますが、音響工学的なブレークスルーとは言えず、技術レベルとしては業界平均を下回る評価となります。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.3}\]Egretta TS-A200asBは公式チャネルで196,000円で販売されています。本製品はステレオペアであるため、同じ「全方位アクティブスピーカー」のステレオペア構成と比較するのが妥当です。この条件で最も有力な比較対象は、Amazon Echo Studioのステレオペア(市場価格 2台で約59,960円)です。Echo Studioペアは、より優れた低域再生能力、高出力なアンプ、そしてスマートスピーカーとしての豊富な機能を備えています。計算結果は 59,960円 ÷ 196,000円 ≒ 0.306 となります。約1/3以下の価格で、主要な音響性能と機能性において本製品を上回る選択肢が存在するため、コストパフォーマンスは低いと評価します。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.4}\]OASA Electronicsは20年以上にわたるOEMメーカーとしての実績があり、一定の製造品質は期待できます。しかし、自社オーディオブランドとしての歴史は2011年からと比較的浅く、KEFやBoseのような世界的なオーディオ専業メーカーと比較すると、長期的な製品信頼性に関するデータやサポート体制の網羅性では見劣りする可能性があります。特に本製品のような高価格帯の製品に求められる手厚いサポート体制が、業界トップレベルにあるとは考えにくいため、評価は業界平均よりやや下となります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.5}\]リスニングポイントを限定せず、空間全体に音を満たすという全方位スピーカーの設計思想は、BGM再生や長時間リスニングでの疲労軽減といった特定の用途において一定の合理性を持ちます。独自素材の採用など、音質向上を目指す技術的アプローチも評価できます。しかし、音楽鑑賞の基本である忠実再生の観点では、80Hz以下の低域を再生できない設計は合理的とは言えません。また、Amazon Echo Studioのステレオペアが、はるかに低価格で同等以上の全方位音響と基本性能を実現している現状を踏まえると、本製品が196,000円という価格で専用オーディオ機器として存在する必然性は低いと判断します。
アドバイス
Egretta TS-A200asBの購入は推奨できません。196,000円という価格に見合う客観的な性能的優位性が見出せないためです。
- 全方位のステレオ体験を求める場合:Amazon Echo Studioを2台使用したステレオペア(約59,960円)が、より広い周波数特性と高出力、多機能性を備え、圧倒的に優れたコストパフォーマンスを提供します。
- 全方位にこだわらず、デスクトップで高音質を求める場合:KEF LSX II LT(約150,000円)のような従来の指向性アクティブスピーカーは、正確なステレオイメージ、優れた周波数特性、豊富な接続性を備え、より満足度の高い選択肢となります。
オーディオ機器の選択においては、独自の設計思想やブランドイメージよりも、測定データに裏打ちされた客観的な音響性能とコストパフォーマンスを重視することを強く推奨します。
(2025.7.23)