Onkyo DP-X1A
デュアルESS SABREチップ搭載のAndroidベースデジタルオーディオプレーヤー。ハイレゾ再生対応だが、極めて低いコストパフォーマンスと信頼性の問題で厳しい評価。
概要
Onkyo DP-X1Aはプレミアムポータブルハイレゾオーディオソリューションとして位置づけられたAndroidベースのデジタルオーディオプレーヤーです。2017年にリリースされ、デュアルESS SABRE ES9018K2M DACと専用SABRE 9601Kアンプを搭載し、DSD 11.2MHzおよびPCM 384kHz/24bitまでの幅広いフォーマットサポートを特徴としています。Android 5.1.1とGoogle Playアクセスを提供し、シングルエンドとバランス出力の両方を搭載、16,384バンドリニア位相FIRイコライザーなどの先進機能を備えていました。当時としては革新的な機能を持ちながらも、信頼性の問題に悩まされ、現在は製造中止となり限定的なサポートしか受けられません。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]DP-X1Aは主要仕様において適切な測定性能を示しています。全高調波歪率は0.006%未満と規定されており、ヘッドホンアンプの透明レベル要件0.01%を大幅に上回ります[1]。S/N比115dBは透明レベル閾値105dBを超過しています[1]。周波数特性は20Hz~80kHzと可聴域を十分にカバーしています[1]。32Ωで150mW/chの出力は大部分のヘッドホンに十分な駆動力を提供します[1]。しかし、ダイナミックレンジ、相互変調歪み、クロストークなどの重要な測定値が公開されておらず、包括的な性能評価が制限されています。独立した第三者測定ではなくメーカー仕様に依存するため、保守的な採点を適用しています。
技術レベル
\[\Large \text{0.4}\]DP-X1Aは2010年代中期の技術をいくつかの注目すべき実装で採用しています。専用増幅回路を持つデュアルESS SABRE DAC構造は有能な設計を示し、独自のACG(Active Control GND)ドライブ技術は自社開発努力を表しています[1]。16,384バンドリニア位相FIRイコライザーは発売当時のポータブル機器としては革新的でした[1]。しかし、Android 5.1.1オペレーティングシステムは現在の基準では時代遅れの技術であり、長期的な関連性を制限しています。リアルタイムDSD変換機能はデジタル信号処理能力を示していますが、可聴上の利点は疑問視されます。全体的な技術実装は、2010年代中期のポータブルオーディオ製品に典型的な有能だが最先端ではない設計を反映しています。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.3}\]元の119,800円という価格設定で、DP-X1Aは現在の代替製品に対して深刻なコストパフォーマンス課題に直面しています。HiBy R4は37,300円で同等以上の機能と優れた測定性能を提供します:THD+Nが0.0007%(シングルエンド)および0.0005%(バランス)対DP-X1Aの0.006%未満、S/N比が120dB/123dB対115dB、出力が165mW/525mW対150mWと高性能です[2]。R4は現代的な4.4mmバランス接続、最新世代のオペレーティングシステム、DSD256および32bit/384kHz PCMを含む同等のハイレゾフォーマットサポートを提供します[2]。37,300円÷119,800円 = 0.31。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.2}\]DP-X1Aは重大な信頼性とサポートの欠陥を示しています。ユーザーレポートでは15ヶ月でバッテリー故障と充電回路の不具合が文書化されています[3]。カスタマーサービスは「ひどい」と特徴づけられ、修理店で「部品待ちで1ヶ月待機」し「回避的で効果がなく非倫理的なカスタマーサービス戦略」と報告されています[3]。この製造中止製品の部品供給は極めて限定的で、高価な機器が保証期限切れ直後に故障すると報告されています[3]。複数コンポーネントを持つ複雑なAndroidベースアーキテクチャは、よりシンプルな専用オーディオプレーヤーと比較して本質的な信頼性リスクを提示します。サポートインフラは一般的なハードウェア故障への対処には不十分と思われます。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.3}\]Onkyoの設計思想は科学的オーディオ原理に対して混合した合理性を示しています。同社が述べる「オーディオ信号に含まれるエネルギーと躍動感を捉え、損失なく再現する」ことへの焦点と「優れたダイナミックスと過渡応答」の重視は、測定可能な性能目標と一致しています[1]。DP-X1Aの具体的測定目標(THD 0.006%未満、S/N比115dB)の実装は音質への定量的アプローチを示しています[1]。しかし、いくつかの哲学的要素は科学的裏付けを欠いています:リアルタイムDSD変換の主張は、DSDがハイレゾPCMフォーマットより可聴上の利点がないとする確立された研究を無視しています。ACG(Active Control GND)ドライブ技術の「より大きな空間次元性」の主張は測定可能な証拠のない主観的マーケティングを表しています[1]。37,300円で同等性能の代替品が入手可能な中での119,800円の価格設定は、非性能要因への原価配分を示しています。「単なる機能性を超越」し「優雅さを醸し出す」製品の制作へのOnkyoの重視は、測定性能最適化より主観的属性の優先を示唆し、設計合理性を低下させています[1]。
アドバイス
DP-X1Aは根本的な信頼性とサポートの問題に加え、低いコストパフォーマンスのため推奨できません。ハイレゾポータブルオーディオを求める見込み購入者は、HiBy R4のような現行世代の代替製品を検討すべきです。これらは優れた測定性能、現代的接続規格、アクティブなメーカーサポートを大幅に低い価格で提供しています。Android機能を必要とするユーザーには、高品質外部DAC/アンプ組み合わせを使用する現代的スマートフォンが、製造中止された専用Androidオーディオプレーヤーより優れた性能、信頼性、費用対効果を提供します。
参考情報
[1] Onkyo DP-X1A 公式仕様, https://www.intl.onkyo.com/products/portable_audios/digital_audio_players/dp-x1a/index.html, 2025年9月26日アクセス [2] HiBy R4 仕様, https://store.hiby.com/products/hiby-r4, 2025年9月26日アクセス [3] カスタマーサービス報告, https://www.bbb.org/us/nj/u-saddle-riv/profile/wholesale-electronic-supplies/onkyo-corporation-0221-22001546/customer-reviews, 2025年9月26日アクセス
(2025.9.27)