Pioneer SP-BS22-LR
アンドリュー・ジョーンズ設計の定番ブックシェルフ。測定重視の作りで、販売当時の実勢価格帯では依然健闘
概要
Pioneer SP-BS22-LRは、1インチ・ソフトドームツイーターと4インチ・構造表面ウーファーを曲面キャビネットに収めた2ウェイ・バスレフ型のパッシブ・ブックシェルフです。フィルムコンデンサやエアコアインダクタを用いた6素子クロスオーバーと、ツイーターのウェーブガイドを備え、ホームシアター/音楽再生向けの実用機として設計されています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]第三者測定では、透明基準に近いが完全には到達していないことが示唆されます。Stereophileは感度を約86 dB/2.83 V/1 m(公称85 dB)と測定し、最小インピーダンスは約250 Hzで4.5 Ω、キャビネットの主共振は約297 Hz付近と報告しています[1]。Sound & Vision(HT Labs)はリスニングウィンドウが200 Hz–10 kHzで+2.29/−3.18 dB、−3 dBは63 Hz(−6 dBは59 Hz)と測定しています[2]。Spinorama(Klippel NFS)でも300 Hz–5 kHzの基準帯域で±3.2 dB、−3 dBは約64.5 Hzと整合します[3]。以上から、小さな偏差と高域の指向性の狭さにより、わずかに透明域に届かない評価です。
技術レベル
\[\Large \text{0.8}\]マルチエレメント受動ネットワーク、指向性の制御、キャビネット挙動の管理といった測定で裏付けられる要素にコストを集中。奇をてらわない正攻法の音響設計で、価格帯で合理的です。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]前提: 本機は生産完了品であり、評価では広く流通していた代表的な実勢価格 19,500円(130 USD) を分母とします[1][2]。同等のユーザー機能(受動ブックシェルフ)で、測定性能が同等以上かつより安価な現行候補を調査しましたが、代表例では条件を満たしません。
- Neumi BS5(本機より安価なことが多い): Spinorama/NFSで周波数応答の偏差が本機より大きく、同等以上ではないと判断[4][5]。
- Sony SS-CS5(割引事例がある): Spinoramaでフラットネス約3.4 dBと、本機(約±3.2 dB)よりわずかに劣ります[6][3]。
より安価で同等以上の比較対象を確認できなかったため、CPは規定どおり1.0とします。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.7}\]受動構成ゆえの堅牢さは利点ですが、本機はディスコンで新品流通は限定的です。Pioneer Home USAの保証は一般のスピーカーで1年(Eliteスピーカーは3年)であり、2年保証ではありません[7]。入手性・保証条件を踏まえ、やや控えめの評価です。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.8}\]クロスオーバー線形化や指向性制御、キャビネット対策など、可測・可再現な改善に注力する姿勢は合理的です。測定に裏付けられない主張や装飾的要素に依存しない点を評価します。
アドバイス
歴史的な実勢価格付近で状態の良い個体が入手できるなら、小~中部屋でのニュートラル志向用途に適しています。ツイーターを耳の高さに合わせ、軽いトーインで高域の指向性を最適化してください[1][2]。低域の量感は−3 dBが60 Hz台のため、70–80 Hz程度でサブウーファー併用を推奨します[2][3]。中古購入時はツイーター損傷やキャビネットの剛性を確認し、保証が一般スピーカーで1年、かつ本機は生産完了である点に留意してください[7]。
参考情報
[1] Stereophile — 「Pioneer SP-BS22-LR loudspeaker Measurements」 — https://www.stereophile.com/content/pioneer-sp-bs22-lr-loudspeaker-measurements — 参照日: 2025-09-01(MLSSA; DPA 4006; 2.83 V/1 m)
[2] Sound & Vision(HT Labs)— 「Pioneer SP-BS22-LR Speaker System: HT Labs Measures」 — https://www.soundandvision.com/content/pioneer-sp-bs22-lr-speaker-system-ht-labs-measures — 参照日: 2025-09-01(LW +2.29/−3.18 dB; −3 dB 63 Hz; −6 dB 59 Hz)
[3] Spinorama — 「Pioneer SP-BS22-LR(ASR / Klippel NFS)」 — https://www.spinorama.org/speakers/Pioneer%20SP-BS22-LR/ASR/index_asr.html — 参照日: 2025-09-01(±3.2 dB; −3 dB ≈64.5 Hz)
[4] Erin’s Audio Corner — 「Neumi BS5(NFS)」 — https://erinsaudiocorner.com/loudspeakers/neumi_bs5_nfs/ — 参照日: 2025-09-01
[5] Spinorama — 「Neumi BS5(Erin’s / Klippel NFS)」 — https://www.spinorama.org/speakers/Neumi%20BS5/ErinsAudioCorner/index_eac-v2-20211212-ported.html — 参照日: 2025-09-01(偏差 ≈10.7 dB)
[6] Spinorama — 「Sony SS-CS5(ASR / Klippel NFS)」 — https://www.spinorama.org/speakers/Sony%20SS-CS5/ASR/index_asr.html — 参照日: 2025-09-01(フラットネス ≈3.4 dB)
[7] Pioneer Home USA — 「Warranty」 — https://pioneerhomeusa.com/warranty — 参照日: 2025-09-01(一般スピーカー1年、Eliteスピーカー3年)
(2025.9.1)