RME ADI-2 DAC FS

参考価格: ? 158400
総合評価
3.8
科学的有効性
0.9
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.4
信頼性・サポート
0.9
設計思想の合理性
0.8

優秀な測定性能と豊富な機能を持つプロ仕様DACだが、コストパフォーマンスに課題

概要

RME ADI-2 DAC FSは、ドイツの老舗プロオーディオメーカーRMEが開発したハイエンドDAC・ヘッドホンアンプ複合機です。ESS ES9028Q2M DACチップをベースにRME独自の回路設計を施し、768kHz PCMとDSD256対応、5バンドパラメトリックEQやクロスフィード機能など、プロ仕様の充実した機能を搭載しています。2020年のAKM工場火災以降はESS版に完全移行していますが、音質的な差異は僅少とされています。現在の日本市場価格は158,400円です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

RME ADI-2 DAC FSの測定性能は透明レベルを大幅に上回る優秀な数値を示しています。SNR 120dB(無加重)、123dBA(加重)は透明レベル105dB以上を大きく超え、THD+N -116dBは0.00016%相当で透明レベル0.01%以下を遥かに下回ります。周波数特性は0Hz~80kHzで上端でも0.5dB減衰に留まり、ヘッドホン出力の出力インピーダンス0.1オームも理想的な値です。これらの測定値は人間の聴覚にとって完全に透明な領域に達しており、科学的に有効な音質改善効果を提供します。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

ESS ES9028Q2MチップにRME独自の回路設計を組み合わせた技術実装は業界高水準にあります。FemtoSecond精度のSteadyClockテクノロジー、デジタル音量制御、完全バランス設計など、測定性能向上に直結する技術が効果的に投入されています。5バンドパラメトリックEQやクロスフィード等のDSP機能も技術的価値があります。ただし、DACチップ自体は既存品であり、革新的な独自開発技術というよりは優秀な既存技術の最適化実装という側面が強く、業界最高水準には及びません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.4}\]

コストパフォーマンス評価では同等以上の機能・測定性能を持つSMSL DO400(77,000円)との比較により算出されます。DO400はES9039MSPRO搭載でTHD+N 0.000054%、SNR 133dB、6W@16Ω出力など、多くの測定項目でRME以上の性能を示し、MQA対応や豊富な入力端子も備えています。計算式は77,000円÷158,400円=0.486となり、四捨五入で0.5のスコアとなります。RMEの優位性は主にEQ機能やブランド信頼性にありますが、純粋な測定性能・機能対価格比では劣勢です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.9}\]

RMEは25年以上にわたるプロオーディオ機器製造の実績を持ち、業界トップクラスの信頼性を誇ります。3年間の製品保証、充実したファームウェア更新、詳細なマニュアル提供など、サポート体制は業界最高水準です。製品の故障率は極めて低く、長期使用における安定性も定評があります。日本国内でも正規代理店によるサポートが確立されており、プロフェッショナル用途でも安心して使用できる信頼性を備えています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

RME ADI-2 DAC FSの設計思想は測定可能な性能向上を重視する科学的アプローチに基づいており、極めて合理的です。透明レベルを超える測定性能の実現、DSP機能による実用的な音質調整、プロ仕様の堅牢性など、全て聴覚上の改善効果に直結する方向性を持っています。オカルト的要素は皆無で、エンジニアリング重視の姿勢は高く評価できます。ただし、最新の低コスト化技術やAI活用による価格破壊的アプローチは採用しておらず、従来の高品質・高価格路線に留まっている点で完全に先進的とは言えません。

アドバイス

RME ADI-2 DAC FSは測定性能と機能性において間違いなく優秀な製品ですが、158,400円という価格に見合った価値があるかは用途次第です。5バンドパラメトリックEQやクロスフィード機能を積極的に活用し、RMEブランドの信頼性に価値を見出すユーザーには推奨できます。しかし、純粋にDACとしての基本性能を求めるなら、SMSL DO400等の半額以下の選択肢が同等以上の測定値を提供しているのが現実です。購入前に自身の用途でRME特有の付加機能が必要不可欠か慎重に検討することを強く推奨します。プロ用途や長期使用を前提とするなら投資価値はありますが、一般的なリスニング用途では過剰スペックになる可能性があります。

(2025.7.30)