RME Babyface Pro FS

参考価格: ? 130000
総合評価
4.1
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.9
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.9
設計思想の合理性
0.8

プロフェッショナル向けUSB AudioInterface。測定値では透明レベルを達成するが、コストパフォーマンスは厳しい。

概要

RME Babyface Pro FSは、ドイツのRME Audio社が開発した24ビット/192kHz対応のポータブルUSBオーディオインターフェースです。12イン/12アウトの24チャンネル構成で、SteadyClock FS技術を搭載し、プロフェッショナル用途に最適化されています。アルミニウムブロックから精密加工された筐体に、最新世代のAD/DAコンバーターと独自のTotalMix FXエンジンを内蔵。USB 2.0バスパワー動作で、ケーブル1本での使用が可能な設計となっています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

測定性能では透明レベル基準を満たす優秀な結果を実証。マイクプリアンプのS/N比は113.7dB(117dBA)、ライン入力は116.3dB(120dBA)に達し、透明レベル基準105dB以上を大幅に上回ります [1]。THDは0.00024%以下を測定し、透明レベル閾値0.01%以下を大幅にクリア。周波数特性は44.1kHzで±0.1dB、192kHzで±1dBを達成し、透明レベル基準±0.5dBに接近。ダイナミックレンジ115dBも透明レベルを満たし、フェムト秒精度クロック技術による測定可能なジッター改善を実現。これらの測定値は人間の聴覚に意味のある音質改善を提供するレベルです。

技術レベル

\[\Large \text{0.9}\]

同社のADI-2 Proから派生したSteadyClock FS技術により業界最高水準のクロック安定性を実現し、前モデル比THD 10dB改善、S/N比1.5dB改善の測定可能な性能向上を達成。ヘッドフォン出力インピーダンス0.1Ωの実現やフェムト秒精度ジッター抑制など、先進的な技術アプローチを採用。FPGAベースのTotalMix FXリアルタイムDSP処理、USB2.0による安定したバスパワー動作技術も高い技術レベルを実証しています。ただし、コンバーターチップなど外部技術への部分的依存により完全な自社設計ではないため、満点には至りません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

現在価格130,000円(880 USD)に対し、Focusrite Scarlett 18i20 4th Gen 100,000円(700 USD)が12入力/12出力以上の同等機能で存在します [2]。18i20は18入力/20出力でADAT拡張により16追加チャンネルを実現、192kHzサポート、8個のマイクプリアンプを提供し、Babyface Pro FSと同等以上のI/O性能を備えています。ポータビリティではBabyfaceが優位。計算: 100,000円÷130,000円=0.77、0.7にラウンド。RMEが測定性能でわずかに上回るものの、18i20は実用的なI/O数と拡張性で優位のため、コストパフォーマンスは不利です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.9}\]

RMEは1996年創立以来、業界最高レベルの信頼性で知られ、The Who、Coldplay、Elton Johnなどメジャーアーティストや2012年オリンピック開閉会式で使用された実績があります [3]。自社開発ドライバーによる優れた安定性とローレイテンシー性能を提供。米国では2年、英国では5年保証を適用。独自インターフェースコア開発により、第三者依存なしでアップデートや修正が可能な体制を構築しています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

測定可能な音質改善を目指した科学的アプローチは評価できます。フェムト秒精度クロック技術、測定結果に基づくTHD改善、具体的な数値目標による性能向上など、合理的な開発方針を示しています。USB2.0安定動作とバスパワー設計の実現も実用性を向上させています。ただし、大幅に低コストで同等機能を実現する汎用技術が利用可能な中、専用オーディオ機器としてプレミアム価格設定の必要性は限定的。「プロフェッショナル品質」などの抽象的な表現に依存するマーケティング面も減点要因です。

アドバイス

Babyface Pro FSは確かに優秀な測定性能を持つ製品ですが、購入前に用途を慎重に検討することを推奨します。レコーディングスタジオや放送局など最高の測定性能とドライバー安定性が必須の環境では、投資価値があります。しかし12以上のI/Oチャンネルが必要な用途では、Focusrite Scarlett 18i20 4th Genが約3分の2の価格で同等以上の拡張性を提供。特に予算制約がある場合、価格差を他の機材投資に向けた方が総合的な音質向上につながる可能性が高いです。RMEの長期サポートと安定性、トップレベル測定性能を重視し、予算に十分な余裕があるプロフェッショナルユーザーにのみ推奨します。

参考情報

[1] Audio Science Review, “RME Babyface Pro FS Portable Interface Review”, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/rme-babyface-pro-fs-portable-interface-review.12313/, 2025年参照, THD+N測定条件: 90kHz帯域幅

[2] Focusrite, “Scarlett 18i20 4th Gen USB Audio Interface”, https://focusrite.com/products/scarlett-18i20, 2025年参照, 18入力/20出力、192kHz対応

[3] RME Audio, “About RME Audio”, https://rme-audio.de/company.html, 2025年参照, プロフェッショナル使用実績

(2025.8.10)