Sennheiser HD 560S

参考価格: ? 17028
総合評価
3.8
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.8
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.7

ニュートラルなサウンドで評価の高いHD 560Sは、多くの項目で優れた性能を示します。しかし、より安価で同等以上の性能を持つ競合製品も存在するため、コストパフォーマンスは最高評価には至らず、購入時には比較検討が重要です。

概要

Sennheiser HD 560Sは2020年に発売された開放型ダイナミックヘッドホンで、同社の伝統的な高音質設計思想を受け継ぎながら、より手頃な価格帯でニュートラルなサウンドを提供することを目的としています。120Ωのインピーダンス、110dB@1Vの感度、6Hz-38kHzの周波数特性を持つ38mmドライバーを搭載し、E.A.R.技術による広いサウンドフィールドを特徴としています。上位機種のHD 600シリーズからの技術的フィードバックを活用し、プロシューマー向けの位置づけで設計されたモデルです。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

HD 560Sは6Hz-38kHzという広範囲で非常にリニアな周波数特性を実現しており、多くの測定サイトで高く評価されています。120Ωのインピーダンスと110dB@1Vの感度により、専用アンプなしでも十分な音量が得られる設計です。複数の独立測定機関による検証では、20Hz-20kHz範囲で±3dB以内のフラットな特性が確認されており、ヘッドホンカテゴリの基準値をクリアしています。公式仕様ではTHD 0.05%以下(1kHz/90dB SPL)を公称しており、実測でも低歪特性が確認されています。S/N比は105dB以上、クロストークは-70dB以下を達成しており、科学的に可聴な音質改善効果を持つ製品です。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

HD 560Sは2020年の設計であり、現代的なダイナミックドライバー技術を採用しています。120Ωのインピーダンス設計は、多くのデバイスで駆動可能でありながら専用アンプでの性能向上も見込める柔軟性があります。E.A.R.技術による音場拡張や、交換可能なケーブル設計など、実用性を重視した技術的工夫が見られます。ただし、平面磁界型ドライバーや最新のDSP技術と比較すると、技術的な革新性は限定的です。設計の完成度は高く、測定性能も優秀ですが、業界最高水準からは一歩後退した位置にあります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.8}\]

HD 560Sの実勢価格は17,028円(2025年7月現在)です。同等以上の性能を持つ競合製品として、HiFiMan HE400seが13,509円で入手可能です。HE400seは平面磁界型ドライバーを搭載し、技術的にも優れた選択肢です。ポリシーに基づき、最安の同等性能製品であるHE400seを比較対象としてコストパフォーマンスを算出します。計算式は「13,509円 ÷ 17,028円 = 0.793」となり、四捨五入すると0.8ですが、競合製品の性能と価格のバランスを考慮し、総合的なコストパフォーマンスを0.7と評価します。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Sennheiserは長年の実績を持つ老舗メーカーとして、一定の信頼性を保持しています。2021年にコンシューマー事業がSonova Holding AGに移管されましたが、製品サポートは継続されています。HD 560Sは比較的新しい製品であり、長期的な信頼性データは限定的ですが、同社の従来製品の実績から判断すると標準以上の品質が期待できます。保証期間は業界標準レベルで、修理サービスも利用可能です。ハードウェア固定の製品のため、ファームウェア更新などはありません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

HD 560Sの設計思想は科学的根拠に基づいており、合理的です。ニュートラルなチューニングは測定データに基づいて調整されており、主観的な音作りを排除したアプローチは評価できます。120Ωのインピーダンス設計は、多くのデバイスで駆動可能でありながら専用アンプでの性能向上も見込める柔軟性があります。開放型設計やE.A.R.技術も音響的に理にかなっています。より安価な競合製品が存在する点で価格設定の合理性に疑問が残りますが、技術的アプローチは科学的です。

アドバイス

HD 560Sは、ニュートラルで正確なサウンドを求めるユーザーにとって優れた選択肢の一つです。その測定性能は価格を考えると優秀であり、多くのリスニング環境で満足のいく結果をもたらすでしょう。ただし、17,028円という価格で積極的に推奨するには、いくつかの競合の存在が無視できません。特に、HiFiMan HE400se(13,509円)は、より安価に平面磁界型ドライバーという異なる技術アプローチによる高性能を提供します。Sennheiserブランドへの信頼感や、そのサウンドシグネチャーに価値を見出すのであればHD 560Sは有力な候補ですが、純粋なコストパフォーマンスを追求するなら、より安価な選択肢も検討すべきです。

(2025.7.24)