Sennheiser HD 620S

参考価格: ? 49800
総合評価
3.0
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.5
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.7

空間イメージングのための角度付きトランスデューサー設計を採用した密閉型オーディオファイルヘッドフォン。優れた技術性能を提供しているが、代替製品との激しいコストパフォーマンス競争に直面

概要

HD 620Sは、2024年5月にリリースされたSennheiserの密閉型オーディオファイルヘッドフォンで、HD 600とHD 500シリーズのDNAを融合させた製品です。リファレンスグレードの42mm角度付きトランスデューサーに38mmダイアフラムと超軽量150オームアルミニウムボイスコイルを搭載し、Sennheiserのアイルランド・Tullamore工場で製造されています。HD 620Sは密閉型設計でありながら開放型の空間イメージングを再現することを目指し、角度付きバッフル設計により空気の動きを促進して開放型トランスデューサーの動作をモデル化しつつ遮音性を維持し、自然なサウンドキャラクターを妥協することなく集中したリスニングを求めるオーディオ愛好家をターゲットとしています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

測定データは平均以上の性能を実証しており、1kHz/90dB SPLでのTHD <0.05%を記録し、ヘッドフォンの問題レベル閾値である0.5%を大幅に下回っています[1][2]。周波数応答は6Hz-30kHzにわたり、狭いピークとディップを示しながらも中域と高域に上昇傾向があるものの、ニュートラルからの許容可能な偏差を維持しています[1][3]。第三者測定によると、HD 620SはHD 600のベース不足を改善し、より拡張された低域応答を実現していますが、高いSPLでベース歪みが増加し、95dB SPL付近で非線形要因が現れます[2]。150Ω インピーダンス(実測159Ω)で112dB/Vの高感度を提供し、高インピーダンスながら技術的には駆動しやすい特性を持っています[2]。最大音圧レベルはメーカー仕様で110dB SPLに達します[1]。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

HD 620Sは密閉型フォーマットでラウドスピーカー空間イメージングを再現するよう設計された独自の角度付き42mmトランスデューサー技術を用いた現代的なエンジニアリングを実証しています。カスタムチューンされたドライバーは38mmダイアフラムと超軽量アルミニウムボイスコイルを特徴とし、Sennheiserの最先端アイルランド工場で社内製造されており、密閉型空間再現における真の技術革新を表しています。しかし、専用設計ハウジングの開発ではなく既存の5シリーズシャーシを採用したコスト最適化が明らかで、レビュアーはこの決定が技術進歩よりもコスト削減に駆動されていると指摘しています。密閉型遮音性を維持しながら自由な空気移動を促進する角度付きバッフル設計は、意味のある音響工学革新を表しています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.5}\]

349.95ドル(49,800円)のHD 620Sは、同等の代替製品からの激しいコストパフォーマンス圧力に直面しています。Beyerdynamic DT 770 PRO(80Ω版)は176ドル(25,000円)で同等の密閉型性能と類似のインピーダンス特性を提供し、「この価格にしては驚くほど優秀」と評価されています[4]。密閉型設計とHD 620Sと同等の周波数応答性能を備えたDT 770 PROは、大幅に優れた価値を提供しています。CP計算:25,000円 ÷ 49,800円 = 0.502、四捨五入で0.5。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

Sennheiserは確立されたグローバルサポートインフラストラクチャと1-4週間の修理サービスによる標準的な2年間保証カバレッジを提供しています[5]。HD 620SはHD 600シリーズの系譜で実証されたロバストなドライバー技術の恩恵を受け、鋼鉄強化ヘッドバンドコンポーネントとSennheiserの確立されたアイルランド工場で製造されたドライバーを搭載しています。しかし、ビルド品質フィードバックでは、広範囲なプラスチック構造、強い締め付け力、長時間のリスニングセッション中の快適性の問題に関する懸念が示されています[6]。人工レザーイヤーパッドは熱の蓄積を引き起こす可能性があり、5シリーズシャーシにはプレミアムモデルにある満足のいくクリック調整機能が欠けています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

Sennheiserは測定重視の開発と明確な技術仕様により強力な科学的アプローチを実証しています。角度付きトランスデューサー革新は密閉型設計における実際の音響課題に直接対処し、遮音の利点を維持しながら開放型空間特性を達成することを試みています。設計思想は実用的なエンジニアリングソリューションによる機能優先のアプローチを重視し、Sennheiserの75年間にわたる技術的卓越性とニュートラルサウンド再現へのコミットメントと一致しています。しかし、純粋にアナログ/機械的アプローチはパフォーマンスをさらに最適化できる潜在的なデジタル強化技術を放棄しています。HD 620Sはコアストレングスを維持しながらHD 600シリーズの限界から論理的な進歩を表し、測定可能な音響改善に焦点を当てた合理的開発方向を示しています。

アドバイス

HD 620Sは開放型空間特性を持つ密閉型遮音を求めるオーディオファイルをターゲットとし、トランスデューサー設計における真の革新を表しています。しかし、49,800円では、DT 770 PROなどの強力な代替製品が大幅に低コストで同等の性能を提供しています。HD 620Sは主に空間イメージング革新とSennheiserの確立された評判を通じてプレミアムを正当化しています。潜在的な購入者は、角度付きトランスデューサー技術とブランド遺産が確立された代替製品に対する価格プレミアムを正当化するかどうかを検討すべきです。コスト効率を優先する人は他所でより良い価値を見つけるかもしれませんが、Sennheiserの特定の音響アプローチと空間イメージング革新を評価する人はプレミアムを価値あるものと見なすかもしれません。

参考情報

[1] Sennheiser 公式仕様、HD 620S製品ページ、https://www.sennheiser-hearing.com/en-US/p/hd-620s/、2025年9月3日アクセス

[2] Audio Science Review、Sennheiser HD 620S Headphone Review、https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/sennheiser-hd-620s-headphone-review.57952/、2024年

[3] DIY-Audio-Heaven、HD620S Measurements、https://diyaudioheaven.wordpress.com/headphones/measurements/brands-s-se/hd620s/、2024年5月9日

[4] RTINGS、Beyerdynamic DT 770 PRO vs Sennheiser HD 560S 比較、https://www.rtings.com/headphones/tools/compare/beyerdynamic-dt-770-pro-vs-sennheiser-hd-560s/440/18492、2025年9月3日アクセス

[5] Sennheiser サポート、保証の一般利用規約、https://www.sennheiser.com/en-us/support/terms-conditions-warranty、2025年9月3日アクセス

[6] Headphones.com、Sennheiser HD 620S Review、https://headphones.com/blogs/reviews/sennheiser-hd-620s-review、2025年9月3日アクセス

(2025.9.3)