Sennheiser HD 660S

参考価格: ? 75000
総合評価
3.6
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.5
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.9

HD 660Sは150オーム設計とTHD 0.04%以下の測定性能を持つオープンバック型ヘッドホンです。しかし、Drop HD 6XX等の競合製品が類似の性能をより低価格で提供しており、コストパフォーマンス面での優位性は限定的です。

概要

Sennheiser HD 660Sは、HD 600シリーズの伝統を受け継ぐオープンバック型ダイナミックヘッドホンです。150オームのインピーダンスと改良されたトランスデューサーにより、前世代モデルよりもスマートフォンやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)で駆動しやすい設計となっています。THD+N 0.04%以下という優秀な歪み特性と、10Hz-41kHzの広帯域再生能力を特徴とします。現在は後継機HD 660S2に置き換えられており、市場での新品入手は限定的です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

HD 660SのTHD+N 0.04%(@1kHz, 100dB)は透明レベル(0.01%以下)には達しませんが、ヘッドホンとしては優秀な数値です。150オームのインピーダンスは、高インピーダンス機と比べて駆動しやすい一方、超低インピーダンス機よりダンピングファクターの影響を受けにくいバランスの取れた設計です。感度104dB SPL/Vは標準的なレベルです。周波数特性は20Hz-20kHzの帯域で比較的フラットですが、高域に若干のピークが見られます。全体として、人間の可聴域における透明度は高い水準にあります。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

HD 660Sは、伝統的なダイナミック型ドライバー技術を基盤としています。前世代からトランスデューサーを改良し、振動板の制御を向上させることで高調波歪みを低減しています。また、軽量なアルミニウム製ボイスコイルの採用により、過渡応答特性の改善を図っています。しかし、基本的な技術は既存のものであり、平面磁界型や静電型といった他の駆動方式と比較して技術的な先進性は限定的です。業界全体で見れば、既存技術を洗練させた堅実な設計であり、標準的な技術水準に留まります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.5}\]

HD 660Sの発売時価格は約499USD(約75,000円)でした。しかし、Drop + Sennheiser HD 6XXが類似の音響特性と性能を約40,000円で提供しています。コストパフォーマンスは 40,000円 ÷ 75,000円 ≒ 0.53 となり、スコアは0.5となります。HD 6XXは名機HD 650をベースとしており、HD 660Sと極めて近い性能を持ちながら、大幅に安価です。また、HiFiMAN Sundara(44,000円)のような平面磁界型ヘッドホンも、より低い価格で優れた低歪み特性を提供しており、HD 660Sの価格設定は市場での競争力に欠けます。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

Sennheiserは2年間の製品保証を提供し、グローバルでの修理・サポート体制を構築しています。HD 600シリーズは長年にわたる耐久性で知られており、適切な使用下では長期間の安定した動作が期待できます。ただし、消耗品であるイヤーパッドは定期的な交換が必要で、使用頻度にもよりますが約1〜2年ごとの交換が推奨されます。本機は生産終了していますが、Sennheiserのサポートは継続しており、修理や部品供給は引き続き利用可能です。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.9}\]

HD 660Sは、測定性能に基づき音質を改善するという合理的な設計思想を持っています。特に、インピーダンスを300オームから150オームに引き下げた点は、スマートフォンやポータブルプレーヤーでの利用を想定した現代的な要求への合理的な対応です。THDの低減や周波数特性の調整も、マスター音源への忠実度を追求する科学的アプローチに基づいています。既存のダイナミックドライバー技術の枠内で、現実的なターゲットユーザーと用途を見据え、堅実に性能を向上させた点は高く評価できます。

アドバイス

HD 660Sは生産終了しており、新品での入手は困難です。中古市場で探す選択肢もありますが、より合理的なのは現行製品から選ぶことです。HD 660Sと非常に近い音質特性を求めるなら、Drop + Sennheiser HD 6XXが約40,000円という優れたコストパフォーマンスを提供しており、最優先候補となります(Drop公式サイトから直接購入が基本)。より現代的なサウンドや、さらに優れた低歪み特性を求める場合は、同価格帯の平面磁界型ヘッドホンHiFiMAN Sundara(44,000円)が強力な選択肢です。後継機であるHD 660S2も良い選択ですが、価格を考慮するとHD 6XXの優位性は揺るぎません。

(2025.8.2)