SENNHEISER MOMENTUM True Wireless 4

総合評価
3.6
科学的有効性
0.9
技術レベル
0.9
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.4

Qualcomm S5 Sound Gen 2プラットフォームを搭載し、aptX Lossless、24bit/96kHz対応など技術的には最先端を行く完全ワイヤレスイヤホン。7mm TrueResponseドライバーによる低歪み(0.08%@94dB)と5Hz-21kHzの広帯域再生を実現。プレミアム完全ワイヤレス市場において、Sony、Apple、Boseなどの競合製品と同価格帯で勝負する、技術的に洗練された製品です。

概要

MOMENTUM True Wireless 4は、Sennheiserの最新フラッグシップ完全ワイヤレスイヤホンです。Qualcomm S5 Sound Gen 2プラットフォームを基盤に、aptX Lossless、Bluetooth LE Audio、LC3、AURACASなど次世代オーディオ規格に対応。独自開発の7mm TrueResponseドライバーは、コンパクトながら5Hz-21kHzの広帯域再生と0.08%(@94dB)という低歪みを実現しています。IP54防塵防水、最大30時間のバッテリー、6マイクアレイによる高度なANCなど、機能面でも充実した仕様となっています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

測定された歪み率0.08%(@94dB)は、聴覚上の透明性を十分に達成する優秀な数値です。5Hz-21kHzという周波数特性は、人間の可聴域(20Hz-20kHz)を適切にカバーしており、実用上問題ありません。aptX Losslessによる最大24bit/48kHzのロスレス伝送は、CD品質(16bit/44.1kHz)を超える仕様ですが、Bluetooth伝送の制約下では理論上の優位性に留まる部分もあります。ただし、実測された低歪み特性は客観的に優秀であり、高い科学的有効性を認めます。

技術レベル

\[\Large \text{0.9}\]

Qualcomm最新のS5 Sound Gen 2プラットフォーム採用、独自開発の7mm TrueResponseドライバー、トリプルチャンネル通気システムによる歪み低減など、技術的には業界最高水準です。Bluetooth 5.4対応、将来的なAuracast対応(ファームウェアアップデート予定)など、先進的な仕様を積極的に採用。6マイクアレイによる音声ピックアップとANC性能の向上、Qi無線充電対応など、実装技術も洗練されています。ただし、これらの高度な技術が必ずしも聴覚上の優位性に直結するわけではない点に留意が必要です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

日本市場価格33,800円~37,990円は、同等の主要機能を持つプレミアム製品と比較して高価格帯に位置します。直接競合はSony WF-1000XM5(23,900円、LDAC対応、業界最高クラスANC)、Apple AirPods Pro 2(27,698円、H2チップ、空間オーディオ)、Bose QuietComfort Ultra Earbuds(28,880円、最高水準ANC)です。これらの製品はいずれもTHD 1%以下の低歪み、高度なANC、長時間バッテリーを備えています。本製品の0.08% THDは優秀ですが、聴覚上の差異は限定的です。最安のSony WF-1000XM5と比較すると、CP = 23,900 ÷ 33,800 = 0.71となり、コストパフォーマンスはやや劣ります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

Sennheiserブランドの信頼性は業界でも高水準にあり、2年間の保証期間も標準的です。ただし、消費者向け事業がSonova社に売却された後の長期的なサポート体制には若干の不透明感があります。IP54の防塵防水性能は日常使用には十分ですが、競合製品と比較して特別優れているわけではありません。ファームウェアアップデートによる機能追加(Auracast対応等)は評価できますが、高価格帯製品としては標準的な対応と言えます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

技術的には極めて高度な実装を行っているものの、その多くが聴覚上の改善に寄与しない過剰スペックとなっています。24bit/96kHz対応は理論的には優れていますが、Bluetooth伝送の帯域制限下では実質的な意味が限定的です。7mmドライバーのコンパクト化は技術的には興味深いものの、10mm以上のドライバーを搭載した低価格製品と比較して明確な優位性は認められません。高価格を正当化する設計思想というよりは、技術的な自己満足に陥っている側面が否めません。

アドバイス

本製品はプレミアム完全ワイヤレス市場において、技術的に最先端の実装と優れた音質を実現しています。主要競合のSony WF-1000XM5(23,900円)、Apple AirPods Pro 2(27,698円)、Bose QuietComfort Ultra Earbuds(28,880円)と比較して、0.08%という極めて低いTHD、aptX Lossless対応、将来的なAuracast対応など、技術面での優位性があります。価格面でもこれらの競合製品と同等レベルに設定されており、Sennheiserの音作りを好む方や、最新の音声コーデックを活用したい方には推奨できます。ただし、より低価格で基本的な機能を求める方には、1万円以下のミドルレンジ製品も検討の余地があります。絶対的な音質を追求する場合は、この価格帯では有線IEMも選択肢となることを付け加えておきます。

(2025.7.6)