Shanling UA4

参考価格: ? 14900
総合評価
3.4
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.7

ESS ES9069Q搭載の99USD小型ポータブルDAC/アンプ。優秀な測定性能を示すが、70USDのDUNU DTC-480と比較してコストパフォーマンスは限定的。

概要

Shanling UA4は、ESS ES9069Q DACチップとデュアルRT6863アンプを搭載した99USDのポータブルDAC/アンプです。3.5mm単端出力と4.4mmバランス出力の両方を備え、OLEDディスプレイとハードウェアボタンによる操作を可能とします。32-bit/768kHz PCMおよびネイティブDSD512、MQA 16xデコードに対応し、小型軽量ながら最大227mW@32Ωの出力を実現します。中国のShanlingは長年にわたりデジタルオーディオ機器を手がけており、UA4は同社のエントリーレベルUSBドングルDAC製品ラインアップの一翼を担います。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

UA4の測定性能は透明レベルに近い優秀な数値を示します。4.4mmバランス出力でTHD+N 0.0006%@32Ω、3.5mm単端出力で0.0008%@32Ωと、いずれも透明レベルの0.01%を大幅に下回ります。S/N比は120-124dB、ダイナミックレンジは116-120dBと透明レベルの105dBを大きく上回る性能です。周波数特性20Hz-40kHz(-0.7dB)は透明レベルの±0.5dBに迫る良好な数値です。チャンネルセパレーションは4.4mm出力で106dBと優秀ですが、3.5mm出力は71dBと透明レベルの70dB付近にとどまります。IMDは0.001%以下と透明レベルの0.02%をクリアします。全体として可聴域での音質に科学的に有意な改善効果をもたらす測定性能を実現しています。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

ESS ES9069Qは最新世代のESS DACチップで、32-bit処理と優秀なTHD+N性能を実現する現代的な設計です。デュアルRT6863アンプ構成により両出力で十分な駆動力を確保し、OLEDディスプレイとハードウェアボタンによる直感的な操作性を提供します。8種類のデジタルフィルターとゲイン設定により、多様な機器に対応可能な柔軟性を持ちます。ただし、技術的アプローチは確立された手法の組み合わせであり、業界を牽引する革新的要素は限定的です。堅実で効果的な設計ですが、技術的独創性の面では業界平均を上回る程度の評価となります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

UA4の99USDに対し、同等機能のDUNU DTC-480が70USDで入手可能です。DTC-480はデュアルCS43198 DACチップ、3.5mm単端および4.4mmバランス出力、ハードウェア音量制御など、UA4と同等以上の基本機能を提供しています。測定性能でもDTC-480はTHD+N 0.0002%、S/N 125-130dB、DR 125-130dB、FR ±0.1dBとUA4を上回るか同等です。コストパフォーマンス計算:70USD ÷ 99USD = 0.707となり、UA4は同等製品と比較して約30%高い価格設定です。OLEDディスプレイやより多くのフィルター選択肢などUA4固有の追加機能はありますが、基本的な音質性能の観点では価格差を正当化する決定的な優位性は認められません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

Shanlingは長年にわたりデジタルオーディオ機器を製造する実績のある企業で、標準的な1年保証とファームウェアアップデート対応を提供しています。各国の代理店を通じた修理サポート体制も整備されています。しかし、一部のユーザーから4.4mmバランス出力でのノイズフロア問題が報告されており、品質管理に一定の課題があることが示唆されます。これらの問題は全ての個体に発生するわけではありませんが、購入時の個体差リスクとして考慮が必要です。総合的には業界平均的な信頼性・サポート水準と評価されます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

UA4の設計は科学的根拠に基づく合理的なアプローチを採用しています。測定可能な性能改善を重視し、ESS DACと適切なアンプ回路の組み合わせにより透明レベルの音質を実現しています。デュアル出力による用途別最適化、ハードウェア音量制御による音質劣化の回避、複数のデジタルフィルター選択肢など、実用的な機能が適切に実装されています。一方で、設計アプローチは確立された手法の組み合わせであり、画期的な技術革新や価格破壊的な効率化は見られません。オカルト的要素は排除されており、堅実で科学的な設計思想に基づく製品です。

アドバイス

UA4は優秀な測定性能と使いやすさを両立したポータブルDAC/アンプですが、購入前にコストパフォーマンスと個体品質を慎重に検討することを推奨します。音質面では透明レベルに近い性能を実現しており、多くのIEMやヘッドホンを十分に駆動可能です。しかし70USDのDUNU DTC-480が同等機能を提供することを考慮すると、29USDの価格差に見合う付加価値があるかを判断する必要があります。OLEDディスプレイやより豊富な設定項目を重視する場合はUA4が適しています。一方、純粋に音質性能とコストを重視する場合はDTC-480が合理的選択となります。購入時は4.4mm出力のノイズ問題がないことを確認し、初期不良交換が容易な販売店を選択することを推奨します。

(2025.8.5)