Shure SE425
デュアルBA構成のプロ仕様IEMだが、現在では中華製品に性能・価格で大きく劣後
概要
Shure SE425は、デュアルバランスドアーマチュア(BA)ドライバーを搭載したプロフェッショナル向けIEM(In-Ear Monitor)です。専用ツイーター・ウーファーの2ドライバー構成により、2009年の発売当時は高い技術力を誇りました。37dBのパッシブ遮音性能とMMCXコネクタによる着脱式ケーブルを特徴とし、ステージモニタリング用途での信頼性を重視した設計となっています。現在の市場価格は32,500円です。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]周波数特性は20Hz-19kHzと狭く、現在の標準的な20Hz-20kHz範囲を満たしていません。測定結果では高域の早期ロールオフが確認され、楽器の倍音成分が切り落とされることで「ベールがかかった」ような音質となります。THD値は公表されていませんが、バランスドアーマチュア構成により低歪率は期待できます。37dBのパッシブ遮音性能は優秀ですが、同価格帯の現行製品と比較すると周波数特性の問題が顕著に現れます。低域は「タイトで高速、分離良好」とされますが、量的に不足し全体的にモニター的でありながらバランスを欠いた特性となっています。
技術レベル
\[\Large \text{0.5}\]デュアルBAドライバー構成は2009年当時としては先進的でしたが、現在では一般的な技術となっています。専用設計されたツイーター・ウーファーの組み合わせは理論的には優秀ですが、実際の音響性能は期待値を下回ります。MMCXコネクタの採用やオーバーイヤー装着方式は実用的な設計ですが、技術的な独創性は限定的です。現在の4BA+1DD構成の中華製IEMと比較すると、ドライバー数や音響設計の複雑さで劣っており、業界平均水準に留まっています。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.2}\]32,500円の価格に対し、同等以上の性能を持つKZ ZS10 Pro(5,700円)が存在します。KZ ZS10 Proは4BA+1DD構成でより広い周波数特性(7Hz-40kHz)を実現し、ステンレス製フェースプレートによる高い耐久性も備えています。計算式:5,700円 ÷ 32,500円 = 0.175となり、四捨五入により0.2の評価となります。Moondrop Aria(12,000円)も同等の音質を提供し、より自然な音響特性を実現しています。現在の中華製IEM技術の進歩により、SE425の価格優位性は完全に失われています。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.8}\]Shureブランドとしての長期にわたる実績と2年間のメーカー保証は評価できます。MMCX コネクタによるケーブル交換対応や、プロフェッショナル用途での使用実績は信頼性の証拠です。日本国内での正規販売網も確立されており、アフターサポートは業界標準以上です。ただし、製品自体の設計が2009年から大きく変わっておらず、現行の技術水準から見ると陳腐化している点は考慮すべきです。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.5}\]プロフェッショナルモニタリング用途を重視した設計思想は理解できますが、結果として一般的なリスニング用途では不自然な音響特性となっています。高域の早期ロールオフや低域不足は、音楽鑑賞における忠実度を損なう要因となります。また、現在では同等の遮音性能と監視用途での信頼性を、より低価格で実現する製品が多数存在しており、専用オーディオ機器として存在する必然性が薄れています。測定重視の科学的アプローチよりも、伝統的な「プロ用」イメージに依存した製品戦略となっている点も合理性を損なっています。
アドバイス
SE425の購入を検討されている方には、現在の市場状況を考慮した慎重な判断をお勧めします。32,500円の予算があれば、KZ ZS10 Pro(5,700円)やMoondrop Aria(12,000円)など、より優れた音響性能を持つ製品を選択可能です。特にKZ ZS10 Proは4BA+1DD構成で7Hz-40kHzの広帯域再生を実現し、ステンレス製筐体による高い耐久性も備えています。SE425のブランド価値や「プロ用」というイメージに惑わされず、実際の測定性能と価格を冷静に比較することが重要です。どうしてもShure製品が必要な場合でも、より新しいモデルの検討をお勧めします。現在のオーディオ市場において、SE425は技術的にも経済的にも合理的な選択肢ではありません。
(2025.7.23)