Shure SRH840A

参考価格: ? 22350
総合評価
3.2
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.5
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.6

Shure SRH840Aは従来の40mmネオジムドライバーを採用したクローズドバック型モニターヘッドホンです。同価格帯の競合製品と比較してコストパフォーマンスに課題があるものの、Shureブランドの信頼性により一定の評価を得ています。

概要

Shure SRH840Aは、プロフェッショナル向けスタジオモニタリング用途に設計されたクローズドバック型ヘッドホンです。40mmネオジムダイナミックドライバーを搭載し、5Hz~25kHzの周波数特性を持つとされています。前モデルのSRH840から、インピーダンスを44Ωから38Ωに下げ、感度を102dB/mWから97dB SPL/mWに調整するなど実用性の向上が図られました。着脱式ケーブルシステムを採用し、スタジオワークでの利便性を重視した設計となっています。老舗プロオーディオメーカーであるShureの製品として、業界における一定の認知度と信頼性を有しています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

測定性能面では重要な課題があります。Shure公式仕様書では全高調波歪率(THD)の数値が公開されておらず、科学的評価の基礎となる客観的データが不足しています。周波数特性は5Hz~25kHzと広帯域をカバーしていますが、具体的な偏差値(±dB)の記載がなく透明レベルの評価が困難です。第三者測定機関のDIY Audio Heavenによると「適度な音量では歪みは少ないが、音量を上げると急速に歪みが増加する」とされており、大音量での性能に制約があることが示唆されています。インピーダンス38Ω、感度97dB SPL/mWという仕様は一般的な範囲内ですが、透明レベルに到達するかは不明確です。

技術レベル

\[\Large \text{0.5}\]

技術的には業界標準レベルの設計です。40mmネオジムダイナミックドライバーは汎用的な技術であり、特筆すべき独自性や先進性は見られません。着脱式ケーブルシステムは実用的ですが革新的とは言えません。前モデルからのインピーダンス変更(44Ω→38Ω)は実用上の改良ですが、根本的な技術進歩ではありません。クローズドバック設計も従来的なアプローチであり、音響工学的な新しい取り組みは確認できません。設計思想は堅実ですが、他社が羨望するような独自技術や特許技術は投入されていないと判断されます。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

公式価格149USD(約22,000円)に対し、同等機能のAudio-Technica ATH-M40xが99USD(約15,000円)で入手可能です。ATH-M40xも40mmドライバー、クローズドバック、着脱式ケーブル、プロフェッショナルモニタリング用途という基本仕様が一致しており、ユーザー視点では代替可能な選択肢となります。コストパフォーマンス計算:99USD ÷ 149USD = 0.66となり、0.7と評価されます。価格競争力の改善が求められる状況です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Shureは1925年創業の老舗プロオーディオメーカーとして高い信頼性を誇ります。世界的な販売網とサポート体制を有し、業務用機器での豊富な実績があります。製品保証期間は業界標準的ですが、ブランドの信頼性により実質的な安心感が提供されています。故障率に関する具体的なデータは公開されていませんが、プロフェッショナル市場での継続的な使用実績が品質の証左となります。修理体制やアフターサービスも整備されており、業界平均を上回る水準にあると評価できます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.6}\]

設計アプローチは保守的ながら合理的です。プロフェッショナルモニタリング用途への特化は明確で、スタジオワークでの実用性を重視した設計思想は理解できます。しかしながら、測定データの非公開や科学的根拠の提示不足は、現代的な透明性の観点から改善の余地があります。クローズドバック設計による遮音性確保、着脱式ケーブルによる利便性向上など、基本的な機能要求は満たしていますが、音質向上に向けた革新的取り組みは限定的です。既存技術の堅実な運用に留まっており、より科学的なアプローチによる性能向上の余地があります。

アドバイス

Shure SRH840Aの購入を検討される方には、まず同価格帯の競合製品との慎重な比較をお勧めします。特にAudio-Technica ATH-M40x(約15,000円)は同等の機能を大幅に安価で提供しており、予算を重視される場合はこれを優先検討すべきです。一方で、Shureブランドの信頼性や長期的なサポート体制を重視し、予算に余裕がある場合には選択肢となり得ます。ただし、測定データの不足により科学的な音質評価が困難である点は理解しておく必要があります。プロフェッショナル用途では実際の使用環境での試聴を強く推奨し、特に大音量での歪み特性について確認されることをお勧めします。コストパフォーマンスを最優先とする場合は、より安価な代替製品の検討が賢明です。

(2025.7.30)