Sonos Ace

参考価格: ? 59800
総合評価
2.4
科学的有効性
0.3
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.6
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.5

Sonosの初ヘッドホン製品。TV Audio Swapなど独自機能を搭載するが、V字型音響特性と歪みの問題により科学的有効性は平均以下

概要

Sonos Aceは2024年6月に発売された同社初のヘッドホン製品です。多室オーディオシステムで知られるSonosが手がけたワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホンで、TV Audio SwapやTrueCinemaなど独自のエコシステム統合機能を特徴としています。40mmカスタム設計ドライバーを搭載し、最大30時間のバッテリー駆動時間とBluetooth 5.4対応を実現。TIME誌の2024年ベストインベンション賞を受賞しています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.3}\]

測定データによると周波数特性は典型的なV字型を示し、20-30Hzおよび50-175Hzの低域で大幅な強調(+5〜8dB)があります [1]。1,250-2,000Hz帯域でのディップにより高音域ボーカルや弦楽器の明瞭度が低下し、5,000-8,000Hz帯域の過度な強調によりシンバル等の金属音が刺激的になります。歪み測定では、高域ピーク周波数帯(5-8kHz)において対応する歪みピークが確認されており、製造仕様では「歪みのない再生」を謳うものの、第三者測定では大音量時における明確な歪み増加が検出されています [2]。ANC機能は基本的な騒音抑制は提供するものの、特定の高周波ノイズに対してアーチファクトが発生する報告があり、透明レベルを下回る性能です。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

Sonosは全世界で特許ポートフォリオを保有する技術力の高い企業です [3]。カスタム40mmドライバー設計、8つのマイクによるノイズ制御、動的ヘッドトラッキング機能など、業界平均を上回る技術実装を実現。TV Audio Swap機能は他社にない独自技術で、Sonosサウンドバーとのシームレスな音声切り替えを可能にします。Bluetooth 5.4対応とTrueCinema技術による空間音響処理も技術的な優位性を示していますが、最終的な音響結果では技術力が十分に活用されていません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.6}\]

現在の市場価格59,800円(2024年8月の価格改定後、発売当初74,800円から値下げ)に対し、同等以上の機能と測定性能を持つSony WH-1000XM5が35,760円で入手可能です [4]。Sony製品は周波数特性の平坦性(±3dB以内)、ANC性能(30dB以上の騒音抑制)、バッテリー持続時間(30時間)において同等以上の性能を提供し、35,760円 ÷ 59,800円 = 0.60となります。Sonosエコシステム統合機能は独自価値ですが、純粋な音響性能と測定データにおいてSonyが優位に立っています。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

2024年6月発売の新製品のため長期的な信頼性データは限定的です。ユーザー報告では、TV Audio Swap機能の接続問題、高域設定での音割れ、ANC使用時のクラッキングノイズなど複数の問題が確認されています [5]。カスタマーサポートに関しては評価が分かれ、一部のユーザーは30分で切断される、製品知識不足などの問題を報告しています。標準的な限定保証とExtendによる延長保証オプションは提供されていますが、初期製品としての課題が残っています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

Sonosエコシステムとの統合に焦点を当てたアプローチは既存ユーザーには合理的ですが、V字型音響チューニングは透明性や正確性を重視する科学的アプローチから逸脱しています。測定に基づく開発手法を採用しているものの、最終的な調整において問題のある周波数特性と歪みを許容している点は非合理的です。TV Audio Swap機能など革新的な機能開発は評価できますが、基本的な音響性能において科学的根拠に基づく改善が不十分です。

アドバイス

Sonosの既存スピーカーシステムを使用しており、TV Audio Swap機能に価値を見出す方には検討の余地がありますが、音質を重視する場合はSony WH-1000XM5などの測定性能が優秀な製品を推奨します。高域の歪みや接続問題を避けるため、EQ設定での高域調整と安定したBluetooth環境での使用が必要です。純粋な音響性能やコストパフォーマンスを求める場合、現時点では他社製品が優位です。初期製品としての完成度向上を期待し、将来のファームウェア更新に注目すべき製品です。

参考情報

[1] SoundGuys, Sonos Ace review: retested for 2025, https://www.soundguys.com/sonos-ace-review-116239/, 2024年, 周波数特性測定データ(MDAQS評価システム)
[2] RTINGS.com, Sonos Ace Headphones Review, https://www.rtings.com/headphones/reviews/sonos/ace-wireless, 2024年, 歪み測定分析
[3] Sonos公式サイト, Sonos Ace仕様, https://www.sonos.com/ja-jp/shop/sonos-ace, 2024年アクセス, 技術仕様
[4] 価格.com, Sony WH-1000XM5価格比較, https://kakaku.com/item/J0000038619/, 2024年8月, 市場価格データ
[5] Sonos Community, ACE treble issues, https://en.community.sonos.com/headphones-229145/ace-treble-issues-6897026, 2024年, ユーザー報告

(2025.8.9)