Sony HT-A9M2
ソニーの4.0.4チャンネル ワイヤレス シアターシステムの技術レベルは評価できるが、同等機能の代替品と比較してコストパフォーマンスに大きな課題を抱える製品
概要
Sony HT-A9M2 BRAVIA Theater Quadは、4つのワイヤレススピーカーで構成される4.0.4チャンネルのホームシアターシステムです。前モデルHT-A9の後継機として、360 Spatial Sound Mapping技術により最大12個のファントムスピーカーを生成し、物理的な配線なしでドルビーアトモス体験を提供します。総出力504W、各スピーカーに4つのドライバー(3/4インチツイーター、2 3/8インチミッドバス、3 3/8インチウーファー、3 1/8インチ上向きアトモスドライバー)を搭載し、S-Master HXデジタルアンプを採用しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]RTINGS測定によると、本システムはサブウーファー非搭載のため低域〜中低域の再生能力に制約があり、低域拡張が51.1 Hzで爆発音や808キックドラムのような低域効果音の再現に限界があります。しかし、音声帯域やシンバル音などの中高域再現は周波数特性の標準誤差3.58 dB、スロープ0.65で良好な特性を示しています。ダイナミクス性能は良好で、最大音量89.5 dB SPLでもTHD(センターチャンネルで80dB SPL時0.26)が低く純粋でクリアな音質を維持します。別売りSW5サブウーファー併用時、Sound Field機能オフで55Hz、オン時で33Hz程度まで低域拡張が可能です。ただし、SNR等の詳細測定データが公開されておらず、科学的有効性の完全な評価には限界があります。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]360 Spatial Sound Mapping技術は従来のサウンドバーとは異なるアプローチで、天井や壁面反射を活用した空間音響を実現します。S-Master HXデジタルアンプ、Bluetooth 5.2(LDAC対応)、8K/4K 120Hz映像対応など最新技術を搭載し、前モデル比で無線出力を2.5倍向上させています。4.0.4構成での完全ワイヤレス化は技術的に評価できますが、根本的な音響性能で汎用的なスピーカーシステムを大幅に上回る革新性は確認できません。業界平均を上回る技術水準ながら、最高水準には届きません。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]現在の実勢価格265,671円に対し、同等のドルビーアトモス機能を提供するHisense AX5125H(5.1.2チャンネル、約299 USD)が比較対象となります。グローバル市場価格を基準にSonyの2,499 USDに対し、299 USD ÷ 2,499 USD = 0.12で、四捨五入により0.1となります。Hisense製品はワイヤレスサブウーファーと専用ワイヤレスリアスピーカーによりより充実した低域再生と5.1.2構成を実現しており、機能的に同等以上でありながら約8分の1の価格です。ワイヤレス設置の利便性は認められますが、音響性能の観点からこの価格差を正当化することは困難です。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.8}\]ソニーは世界的なオーディオメーカーとして確立されたサポート体制を持ち、製品保証や修理対応は業界標準を上回ります。RTINGS測定では前モデルで最大SPLテスト時に2台の測定機が損傷する事例が報告されましたが、本モデルではそのような報告はなく、通常使用では発生しない極端な測定条件によるものです。ファームウェア更新対応も継続的に提供されており、信頼性・サポート面では高水準を維持しています。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.7}\]完全ワイヤレス構成による設置性向上は現実的な住環境制約への合理的アプローチです。360度音場生成技術も科学的根拠のある音響工学に基づいており、非科学的主張は見られません。ただし、同等以上の音響性能をより低コストで実現できる既存技術(有線サラウンドシステム)が存在する中で、利便性と引き換えに大幅なコスト増加を伴う設計選択の合理性には疑問が残ります。専用機器として存在する必然性は設置制約がある環境に限定されます。
アドバイス
本システムは配線制約のある環境や、従来のサウンドバーでは物足りないがフルサラウンドシステムの設置が困難なユーザーに適しています。ただし、265,671円という価格は同等機能の代替品比で約8倍であり、純粋な音響性能重視なら約299 USDのHisense AX5125Hや30,000円台のSony HT-S2000が合理的選択です。購入を検討する場合は、ワイヤレス設置の利便性に約265,000円の価値を見出せるか慎重に判断してください。別売りサブウーファーSW5の併用は低域補強のため強く推奨しますが、総額は35万円弱に達します。音響性能優先なら同価格で本格的なスピーカーシステムの構築が可能です。
(2025.8.4)