Sony NW-A105

参考価格: ? 18000
総合評価
3.4
科学的有効性
0.5
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.7

独自のS-Master HX技術を搭載したAndroidベースのハイレゾDAP。包括的なコーデックサポートを提供するが、バッテリー持続時間の短さと限られた出力パワーが弱点

概要

Sony NW-A105は、ソニー独自のS-Master HXデジタルアンプ技術と包括的なハイレゾオーディオサポートを特徴とする、Androidベースのデジタルオーディオプレーヤーです。2019年にソニーのh.earシリーズの一部として発売され、3.6インチHDタッチスクリーンとAndroid 9.0オペレーティングシステムを組み合わせ、ソニーのオーディオエンジニアリング技術を継承しながらストリーミングサービスやアプリへのアクセスを可能にしています。384kHz/32ビットまでのPCMや11.2896MHzまでのDSDサポートに加え、Wi-FiやBluetooth 5.0を通じたLDACコーデック対応の高度な接続性を提供します。本機種はソニーによって生産終了となっており、現在は中古市場で元の希望小売価格から大幅に値下げされた価格で入手可能です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.5}\]

Sony NW-A105は科学的有効性において混合的な性能を示しています。Audio Science Reviewによる89 dBのSINAD測定値[2]は透明レベルの閾値である80 dBを上回る一方、デバイスには重大な実用的制限があります。16オームで35mWという出力パワー[3]は、ほとんどのオーバーイヤーヘッドホンを効果的に駆動するには不十分であり、技術的に適切な測定値にもかかわらず実世界での使用性を制限しています。20Hz-40kHzという周波数応答仕様には第三者ソースからの偏差データが不足し、THD+N、SNR、クロストークの包括的測定値は信頼できる独立テストでは文書化されていません。保守的な評価は、利用可能なデータでSINADが透明レベルに到達しているにもかかわらず、限定的な測定透明性と実用性能に影響する出力パワー制約を反映しています。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

ソニーは独自のS-Master HXデジタルアンプ技術を通じて技術的な高度さを実証しており、従来の半導体DAC実装とは区別される完全デジタル信号処理アプローチを表現しています[4]。1.8GHzで動作するNXP i.MX 8M Mini Quad ARM Cortex-A53プロセッサー[5]は、Android 9.0統合のための4GB RAMを備えた現代的な計算能力を提供します。圧縮音源の音質向上を図るDSEE HX技術は、ソニーの独自信号処理技術への投資を示しています。Wi-Fi 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.0、包括的なコーデックサポート(LDAC、aptX HD、aptX、AAC、SBC)を含む高度な接続性の統合は、最新のワイヤレス技術の適切な採用を表現しています。レコーディングスタジオとの共同開発アプローチによって証明されるソニーのプロフェッショナルオーディオ開発における豊富な経験は、その実装の技術的信頼性を支えています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

現在の中古市場で約18,000円で入手できるSony NW-A105は、入手可能な最安価のAndroidベースハイレゾDAPとして優れたコストパフォーマンスを実証しています。同等または優れたユーザー向け機能を持つ製品を体系的に評価した結果、完全なストリーミングアプリ統合(Spotify、Tidal、Apple Musicなど)を可能にするAndroid OSエコシステムアクセスと同じ機能を提供するより安価な代替製品は存在しません。Shanling M0 Pro(19,350円)のようなファームウェアベースプレーヤーは、THD+N 0.0006%とより高い出力パワーで優れた測定性能を提供しますが、ソニーのユーザー向け価値提案を定義する重要なAndroid機能を欠いています。ソニーのAndroid OS、ストリーミングサービス互換性、32ビット/384kHzまでのDSD128対応包括的ハイレゾフォーマットサポート、確立されたS-Master HX技術の独特な組み合わせは、優れた音響測定値に関わらず専用ファームウェアベースプレーヤーでは複製できない機能を表現しています。

同等機能を持つより安価なAndroidベースDAPは現在の市場に存在しないため、CP = 1.0

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

ソニーはプロフェッショナル級サービスセンターを備えた確立されたグローバルサポートインフラを通じて標準的な1年保証カバレッジを提供しています。しかし、NW-A105はユーザーレビューで広範囲に文書化された深刻なバッテリー持続時間の問題に悩まされています[6]。報告によると、バッテリー性能はメーカー仕様を大幅に下回り、Wi-Fi有効でスタンバイ状態で24時間以内に完全放電すると記載されています。ユーザーは「前モデルと比較してバッテリー持続時間が半減」と説明し、わずか1.5時間の再生で10%のバッテリー消耗を報告する例もあります。Android オペレーティングシステムの複雑性は、専用ファームウェア実装と比較して潜在的な故障ポイントを増加させます。ソニーのサポートネットワークは有能な技術支援を提供しますが、根本的なバッテリー性能問題は長期使用性と信頼性に影響する固有の設計制限を表現しています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

ソニーはプロフェッショナルスタジオとの連携と科学的オーディオエンジニアリングアプローチを通じて合理的な測定重視の設計思想を実証しています。S-Master HX技術は完全デジタル増幅を通じた測定可能な性能向上を表現し、包括的フォーマットサポートはハイレゾオーディオ再生に対する真のユーザー要求に対応しています。Android統合はアプリエコシステムアクセスとストリーミングサービス互換性を通じて正当な機能的価値を提供します。しかし、実装はコスト効果に関する懸念を提起し、Androidの複雑性は専用ファームウェアソリューションに対して明確な音質利益なしに費用と電力消費を追加しています。DSEE HXアップスケーリング技術は技術的洗練度にもかかわらず疑問視される可聴改善を提供します。設計方向は、ソニーの確立された測定ベースオーディオエンジニアリング技術と現代のプラットフォーム期待のバランスを取りますが、一部の機能実装は測定可能な音響性能向上よりもマーケティング的魅力を優先しています。

アドバイス

Sony NW-A105は、ストリーミングサービス用Androidアプリエコシステムアクセスを必要とするユーザーにとって、現在の中古市場で優れた価値を表現しています。中古で約18,000円という価格で、この価格帯で他のDAPが提供できない独特な機能を提供し、ソニー独自のS-Master HX技術と完全なAndroid互換性を組み合わせています。35mWという出力制限内で作業できるインイヤーモニターユーザーに優れ、包括的なコーデックサポートとハイレゾフォーマット互換性の恩恵を受けることができます。しかし、購入を検討する方は実用的使用性に大幅な影響を与える文書化されたバッテリー持続時間の問題を慎重に考慮し、オーバーイヤーヘッドホン用の電力を必要とするユーザーはより高い出力能力を持つ代替品を評価すべきです。Shanling M0 Proのような専用ファームウェアベースプレーヤーは優れた測定性能を提供しますが、ソニーのAndroidストリーミング機能を複製することはできず、アプリエコシステムアクセスを優先するユーザーにとってNW-A105を最もコスト効果的な選択肢としています。

参考情報

[1] Audio Science Review - Shanling M0 Pro DAP Review, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/shanling-m0-pro-dap-review.49351/, 2025年10月14日アクセス, THD+N: 0.0006% (SE), 0.0004% (balanced), SNR: 118-119dB, 出力パワー: 90mW (SE), 236mW (balanced)

[2] Audio Science Review - Sony NW-A105 Digital Audio Player Review, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/sony-nw-a105-digital-audio-player-review.12950/, 2025年10月14日アクセス, SINAD測定: 89 dB

[3] Audio Discourse - Impressions of the Sony NW-A105 DAP, https://www.audiodiscourse.com/2020/02/impressions-of-sony-nw-a105-dap-schitt.html, 2025年10月14日アクセス, 出力パワー: 16オームで35mW

[4] Audio Science Review - S-Master HX Technology Discussion, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/s-master-hx-amplifier-exclusive-another-sony-thread.34898/, 2025年10月14日アクセス

[5] The Walkman Blog - What SoC is Sony using in the new A and ZX Walkmans?, https://thewalkmanblog.blogspot.com/2019/10/what-soc-is-sony-using.html, 2025年10月14日アクセス, NXP i.MX 8M Mini Quad仕様

[6] Sony Help Guide - NW-A105 Battery Life Specifications, https://helpguide.sony.net/dmp/nwa100/v1/en/contents/TP0002432969.html, 2025年10月14日アクセス, バッテリー持続時間仕様とユーザー報告

(2025.10.14)