Tanchjim Origin

参考価格: ? 38999
総合評価
2.8
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.3
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.4

第5世代DMT技術を搭載したシングルダイナミックドライバーIEM。製造品質は優秀だが、Truthear Gateなどの高性能低価格機と比べるとコストパフォーマンスは限定的。

概要

Tanchjim Originは、同社のフラッグシップシングルダイナミックドライバーIEMで、プレミアムなステンレススチールシェルに収められた第5世代DMT(デュアルマグネティック・デュアルキャビティ)技術を特徴としています。259.99USDで価格設定されたOriginは、優れた製造品質と洗練されたサウンド品質を求めるオーディオファイルをターゲットとしています。Tanchjimは注目すべき中国のオーディオメーカーとして確立され、特に競争の激しいIEM市場でダイナミックドライバーの実装とチューニング専門知識で認知されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

OriginはAudio Science Reviewの第三者測定によると、堅実な技術的性能を示しています。公式仕様では1kHz 94dB SPLでTHD+N <0.056%とされ、ダイナミックドライバーとして許容範囲内です[4]。ASR測定では低歪み特性が確認され、クリーンな低音再生と詳細なサウンド再生が可能です。ただし、周波数特性では深い低音域の拡張不足、上部低音域のわずかなブースト、6.4kHz付近での不足によりニュートラルターゲットから逸脱しています[1]。10mm DMT5ダイナミックドライバーは広帯域の周波数レンジ、16Ω、126dB/Vrmsと公称されており[4]、高忠実度再生のための基盤は十分です。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

第5世代DMTダイナミックドライバーは、エアプレッシャービルドアップを防ぐために戦略的に配置されたベントを特徴とする誘導エアプレッシャー設計とデュアルマグネティックアーキテクチャを組み込んでいます。ステンレススチール構造はサンドブラスト仕上げとミラー仕上げによる精密製造を活用し、有能なエンジニアリング実行を示しています。異なるアコースティックフィルターを備えた3つの交換可能チューニングノズルが含まれていますが、測定では音質特性への実用的な影響は最小限であることが示されています。6N無酸素銅銀メッキケーブルと0.78mm 2ピンコネクターは革新的なソリューションというより標準的な業界アプローチを表しています。実装は専門的に実行されていますが、基礎技術は画期的な進歩なしに確立されたダイナミックドライバー原理に依存しています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.3}\]

259.99USDのOriginは、同等以上の測定性能を示す超低価格機Truthear Gate(レビュー時USD 17)と比較すると厳しい立場です[2]。ポリシーに基づき、機能(有線IEMの再生)と測定性能で劣らない最安製品との比較を行うと、17 ÷ 259.99 = 0.065で、Originのコストパフォーマンスは大幅に不利です。ビルドや付属品の質まで重視する購入者には、同じシングルDD帯のMoondrop Kato(USD 189.99)も選択肢となり、189.99 ÷ 259.99 = 0.73でもOriginは不利です[3]。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Tanchjimは確立された国際流通チャネルで標準的なメーカー保証カバレッジを提供しています。堅固なステンレススチール構造は長期耐久性を示唆し、プレミアム素材と精密製造により潜在的な故障点を削減しています。0.78mm 2ピンコネクターによる着脱可能ケーブル設計により、必要に応じた簡単な交換が可能です。ユーザーレポートに基づく品質管理は一貫しており、製造欠陥についての苦情は最小限です。しかし、数十年の市場存在を持つ企業と比較して比較的新しいブランドとして、長期信頼性データは確立されたメーカーと比較して限定的です。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

Originの設計思想は、その価格帯で重要な合理性の課題に直面しています。チューニングアプローチは、ニュートラル性能を実現するためにイコライゼーションを必要とする周波数特性の偏差を生み出し、開封時の高忠実度再生という主張を損なっています。3つのチューニングノズルの包含は、無視できる実際の音質差を提供しながらカスタマイゼーションの錯覚を生み出し、機能的に意味のある特徴ではなくマーケティングに焦点を当てたものを表しています。259.99USDで、Originは優秀な測定性能とより合理的なチューニング決定を提供する製品と競争しています。対応する性能優位性なしに本質的に標準的なダイナミックドライバー技術のプレミアム価格設定は、コスト対パフォーマンス比の科学的最適化よりも高級品の位置づけを優先していることを示しています。

アドバイス

Tanchjim Originは、シングルダイナミックドライバーIEMでプレミアム製造品質と洗練された美学を優先し、特に最適な性能のためのイコライゼーション適用を厭わない購入者に適しています。優秀な製造品質と低歪み特性は高品質なサウンド再生のための堅固な基盤を提供します。しかし、価格重視の消費者は同様の機能と製造品質で189.99USDで比較可能な技術的性能を提供するMoondrop Katoを真剣に検討すべきです。Originはコレクターや特にTanchjimのハウスサウンド特性を好むユーザーにアピールするかもしれませんが、合理的な購入決定は同等の機能と測定性能を提供するより費用対効果の高い代替品を支持します。

参考情報

[1] Audio Science Review, Tanchjim Origin IEM Review, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/tanchjim-origin-iem-review.52707/, accessed 2025-08-12

[2] Audio Science Review, Truthear Gate 17 USD IEM Review, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/truthear-gate-17-iem-review.61784/, accessed 2025-08-12

[3] Moondrop Official Website, KATO In-Ear Monitor specifications, https://moondroplab.com/en/products/kato, accessed 2025-08-12

[4] Tanchjim Official, ORIGIN product page (specifications), https://tanchjim.com/en/products/earphones/iem/origin/, accessed 2025-08-12

(2025.8.12)