Tangzu Zetian Wu The Legend

総合評価
2.7
科学的有効性
0.2
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.9
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.3

デュアルプラナードライバー搭載の高級IEMだが、測定性能に深刻な問題を抱える

概要

Tangzu Zetian Wu The Legendは、14.2mmプラナードライバーと6mmプラナードライバーを組み合わせたデュアルプラナー構成を採用する高級IEMです。中国の女帝「則天武后」をモチーフとした紫蓮華のデザインで、アルミニウム合金シェルと5軸CNC加工による精密な筐体設計が特徴です。Flash Acousticsとの共同開発による5N LNOFCリッツ線ケーブルを標準装備し、4.4mmバランス接続に対応しています。価格は259 USDとプラナーIEM市場では高価格帯に位置します。

科学的有効性

\[\Large \text{0.2}\]

測定データによると、周波数特性は20Hz-20kHz、感度106.5dB、インピーダンス12.5Ωです。しかし、THDは1kHzで3%とされています。このTHD 3%という数値は、ヘッドホン・イヤホンカテゴリにおける問題レベル(0.5%以上)を大幅に逸脱しており、極めて深刻な欠点です。透明レベル(0.05%以下)からは論外であり、安価な製品にも劣る水準です。この一点だけでも、Hi-Fi(高忠実度)再生の観点からは科学的有効性が著しく低いと評価せざるを得ません。デュアルプラナー構成の利点は測定データ上では全く確認できず、S/N比やクロストークに関する公開データも限定的です。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

14.2mmと6mmのデュアルプラナードライバー構成は技術的に興味深いアプローチです。5軸CNC加工による筐体設計、Flash Acousticsとの協業による5N LNOFCリッツ線ケーブル、シールド構造の採用など、一定の技術投入が認められます。しかし、デュアルプラナー構成の具体的な技術的優位性や、従来のシングルプラナードライバーと比較した明確な技術革新は限定的です。業界標準レベルの設計手法を組み合わせた製品であり、画期的な技術的ブレークスルーは確認できません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.9}\]

259 USDという価格に対し、同等以上の測定性能を持つ最安製品として7Hz Timeless II(229 USD)があります。Timeless IIはTHDが0.2%以下と本製品の3%を遥かに凌駕し、感度も104dBと近く、総合的に優れた性能を持ちます。計算式は 229 USD ÷ 259 USD = 0.884… となり、四捨五入して評価は0.9となります。ARTTI T10(53 USD)はTHD性能で優れるものの、感度が96dBと著しく低く、駆動の容易さという点で基本性能が劣るため、本ポリシーにおける同等以上の比較対象とは見なせません。したがって、本製品は性能面での大きな問題を抱えつつも、価格設定自体は競合に対して極端に高いわけではないと評価されます。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

Tangzuは中国のオーディオメーカーとして一定の実績を持ちますが、グローバルサポート体制や長期保証に関する情報は限定的です。製品の製造品質は5軸CNC加工により安定していると考えられますが、プラナードライバーの長期耐久性やファームウェア更新の必要性について明確な情報がありません。新興メーカーとしての信頼性は業界平均レベルですが、確立されたブランドと比較すると不安要素があります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.3}\]

デュアルプラナードライバー構成というアプローチ自体は負荷分散などの点で理論的可能性があるものの、結果としてTHD 3%という、現代の平面駆動型イヤホンとして許容しがたい測定値に至っている点は、設計が失敗していることを示唆します。音質改善という目的に対し、採用された技術が全く貢献しておらず、むしろ基本的な性能を損なっているため、設計思想の合理性は極めて低いと評価します。高忠実度再生を目指す上で、非合理的なアプローチと言わざるを得ません。

アドバイス

Tangzu Zetian Wu The Legendは、デュアルプラナードライバーという技術的特徴を持ちますが、その音響性能、特にTHD(高調波歪率)は3%と極めて悪く、259 USDという価格に見合うものではありません。純粋な音質を求めるのであれば、より安価で測定性能に遥かに優れる7Hz Timeless II(229 USD)を強く推奨します。本製品のコストパフォーマンス評価は0.9と高いですが、これはあくまで「性能が著しく低い割には、価格が法外に高いわけではない」という相対的な評価に過ぎず、製品の購入を推奨するものではありません。デザインや希少性に特別な価値を見出す場合を除き、避けるべき選択肢です。

(2025.7.27)