Tannoy Gold 5

参考価格: ? 34350
総合評価
2.4
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.4
コストパフォーマンス
0.6
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.3

Tannoy Gold 5は5インチデュアル・コンセントリック・スタジオモニターです。合理的な設計コンセプトに基づきながらも、実際の測定性能には重大な問題があり、主要な競合製品に劣ります。

概要

Tannoy Gold 5は、5インチデュアル・コンセントリック・ドライバーを搭載した200Wバイアンプ駆動のニアフィールド・スタジオモニターです。0.75インチチタンツイーターを5インチウーファーの中央に配置する同社の伝統的な同軸設計を採用し、Tulip Waveguideを組み合わせています。音楽制作、放送、ポストプロダクション用途を想定して開発されましたが、実際の測定性能にはいくつかの重大な欠点がみられます。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

本製品は測定性能においていくつかの問題を抱えています。周波数特性は70Hz以下で急激にロールオフ(60Hz付近で-6dB)しており、5インチモニターとして低域が不足し、多くのベース楽器の基音を再生できません。第三者機関(AudioScienceReviewなど)の測定では、中域における指向性の乱れや共振、そして高い歪率(THD)が報告されています。よりフラットな特性と低い歪率を誇る競合のJBL 305P MkIIと比較して、本製品が科学的観点から明らかに劣っていることは明白です。

技術レベル

\[\Large \text{0.4}\]

デュアル・コンセントリック設計自体は点音源を実現する上で技術的価値がありますが、本製品における実装レベルは平凡です。200WのClass-ABアンプは十分なパワーを提供しますが、最大SPL 107dBは競合製品に対して特筆すべき優位性はありません。Tulip Waveguideの採用は妥当なエンジニアリングですが、指向性制御といった最終的な測定性能の向上には十分に寄与していません。総じて、技術レベルは業界平均を若干下回ります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.6}\]

現在価格229 USD(1台)に対し、JBL 305P MkIIは129 USD(1台)でより優れた性能を提供します。また、Yamaha HS5(200 USD、1台)も、より優れた総合性能を持つ強力な競合製品です。コストパフォーマンスは、より安価で優れた機能と測定性能を持つJBL 305P MkIIとの比較に基づいて算出しています。計算式は 129 USD ÷ 229 USD = 0.563 となり、四捨五入して0.6の評価です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

Tannoyは長い歴史を持つブランドであり、基本的な品質管理や修理体制は整っています。しかし、本製品に固有の問題として、一部のオンラインユーザーコミュニティでは、サーという自己ノイズ(ヒスノイズ)や個体差に関する品質管理上の問題が報告されています。保証期間や国際的なサポート体制は業界標準レベルですが、製品固有の問題の可能性が信頼性の評価を少し引き下げています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.3}\]

デュアル・コンセントリック・アプローチは音響学的に合理的ですが、その実装には決定的な性能不足が見られます。70Hz以下における急激な低域ロールオフは、音楽情報の重大な欠落を意味し、スタジオモニターとしての基本的な要件を満たしていません。より安価で明確に優れた測定性能を持つ製品が存在する現状では、本製品の存在意義が問われます。設計思想が最終製品として昇華されておらず、合理性の評価は低くなります。

アドバイス

Tannoy Gold 5の購入は推奨しません。同等以下の予算で、JBL 305P MkII(129 USD)やYamaha HS5(200 USD)といった、明確に優れた測定性能を持つ製品が選択可能です。特にJBL 305P MkIIは、大幅に安価で優秀な測定値を実現しており、より合理的な選択です。深刻な低域不足は、いかなる音楽制作作業においても致命的な欠点となります。もしデュアル・コンセントリック設計に魅力を感じるのであれば、同社のより上位のモデルや、実績のある同軸設計を持つ他メーカーの製品を検討することを強く推奨します。

(2025.7.21)