Ultimate Ears UE900

参考価格: ? 59999
総合評価
1.8
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.4
コストパフォーマンス
0.0
信頼性・サポート
0.3
設計思想の合理性
0.4

生産終了となった4基BAドライバー搭載IEMで、性能は及第点だが信頼性に問題があり、現代の低価格代替製品に大幅に劣る

概要

Ultimate Ears UE900は、元々399米ドル(約59,999円)で発売された生産終了となった4基バランスドアーマチュア(BA)型インイヤーモニターです。2基の低音用、1基の中音用、1基の高音用という2-1-1構成で配置された4基のBAドライバーと3wayパッシブクロスオーバーシステムを特徴とし、人気だったTriple.Fi 10の後継機として設計されました。UE900は補聴器用に開発されたKnowlesバランスドアーマチュアドライバーを使用し、周波数分離のためのデュアルサウンドチューブを持つカスタムイヤホン構成にハウジングされています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

第三者測定では、バランスドアーマチュア技術として堅実な性能を示しています。100dBAでのTHDは全周波数で1.5%以下を維持しており[1]、ヘッドホン用途では許容レベル内にありますが、0.05%という優秀な閾値は上回っています。インピーダンスは周波数スペクトラム全体で23Ωから52Ωまで変化し、高出力インピーダンスソースを使用した場合、800Hz以下で2-3dBの低下を引き起こします[1]。パッシブアイソレーションは26dBを計測し、30dBという優秀な閾値に接近し、10dBという問題レベルを大幅に上回っています。周波数応答は20Hz-20kHzをカバーし、バランスドアーマチュア構成としては極めて低い歪みを実現しており[1]、透明レベル境界に位置しています。

技術レベル

\[\Large \text{0.4}\]

UE900は確立されたバランスドアーマチュア技術の適用において能力を示していますが、独自の革新性に欠けています。自社技術ではなく第三者であるKnowles BAドライバーを使用し、最先端機能なしの成熟したバランスドアーマチュア実装を表しています。3wayパッシブクロスオーバーはエンジニアリング能力を示していますが、標準的な業界アプローチを使用しています。4ドライバー構成と周波数特化ドライバー配置は技術的ノウハウを実証していますが、大幅な革新なしの従来技術への依存により技術レベルスコアが制限されています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.0}\]

元の399米ドル(約59,999円)の価格帯において、Moondrop Chu IIはわずか19米ドル(約2,850円)で同等の周波数応答性能と優れた測定特性を提供します。Chu IIはHarmanターゲットに極めて近い周波数応答(UE900の測定された中域強調と比較)、極めて低い歪み(UE900の1.5%THDを下回る)、同等のアイソレーション能力を特徴としています。20Hz-20kHz応答を提供するシングルダイナミックドライバーを搭載し、現代の低価格実装で同等の音質が実現可能であることを実証しています。CP = 2,850円 ÷ 59,999円 = 0.0

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.3}\]

調査により、品質管理の問題の蔓延や購入から1ヶ月以内でのケーブル故障を含む重大な信頼性懸念が明らかになりました[2]。ユーザーレポートでは「大規模な不良品問題」や450米ドルのIEMで発生すべきでない製造品質問題が示されています[2]。製品には1年保証のみが付属し、一般的な2年標準を下回っています。生産終了製品として、継続的なサポート選択肢は限定的です。Ultimate Earsは保証期間外の修理サービスを提供していますが、生産終了モデルの交換部品入手可能性について懸念が存在します[3]。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

Ultimate Earsは補聴器応用から派生したバランスドアーマチュア技術を利用し、周波数特化ドライバー配置による測定可能なマルチドライバーアプローチを通じて科学的理解を実証しています。しかし、測定性能向上に対する高価格設定と、基本的な設計問題に対処するためのUE900s後継モデルの必要性は、最適でない費用効果を示唆しています。UE900sへの置き換えは、元の設計に修正を要する実行上の問題があったことを示し、初期アプローチの合理性を損なっています。

アドバイス

UE900はプレミアム4-BA実装の初期の試みとして許容できる音響性能を示しますが、重大な信頼性問題と極めて劣悪な価値提案に悩まされています。THDレベルはバランスドアーマチュア技術の許容範囲内に留まっていますが、Moondrop Chu IIのような現代の代替製品は、価格のわずか約1/21(2,850円対59,999円)で優れた測定性能を提供し、さらに優れた製造品質と継続的なメーカーサポートも提供します。Chu IIは全周波数で極めて低い歪みとHarmanターゲットに極めて近い周波数応答を実現し、UE900の実装よりも大幅な技術進歩を示しています。UE900の文書化された品質管理問題と生産終了状況を考慮すると、このモデルは推奨できません。同等または優れた性能を求めるユーザーは、実証された測定性能、優れた信頼性記録、継続的なメーカーサポートを持つ現行の低価格製品を検討すべきです。

参考情報

[1] Sound and Vision, Review: Logitech UE 9000, 6000, and 900 Headphones Page 4, https://www.soundandvision.com/content/review-logitech-ue-9000-6000-and-900-headphones-page-4, 2013

[2] Head-Fi, Ultimate Ears UE 900 Discussion and Impressions Thread, https://www.head-fi.org/threads/ultimate-ears-ue-900-discussion-and-impressions-thread.624973/page-93, 2012-2015

[3] Ultimate Ears, Service - IEM Repair, https://backstage.ultimateears.com/out-of-warranty-repair-request.html, accessed 2025-09-24

[4] Audio Science Review, Moondrop Chu II IEM Review, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/moondrop-chu-ii-iem-review.55179/, 2024-06-16

(2025.9.25)