Ultrasone Signature Master MK II

参考価格: ? 115000
総合評価
2.0
科学的有効性
0.5
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.2

測定データの開示が限定的で、コストパフォーマンスに課題のあるスタジオヘッドホン

概要

Ultrasone Signature Master MK IIは、ドイツのUltrasoneが展開するSignatureシリーズの最上位モデルです。40mmチタンコートドライバーを搭載し、独自のS-Logic3テクノロジーとULEテクノロジーを組み合わせたスタジオ向けヘッドホンとして位置づけられています。前モデルから快適性とバランス接続対応を改良し、699ユーロという価格で提供されています。マスタリング・ミキシング用途を想定した設計となっています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.5}\]

周波数特性は6Hz-42kHzと幅広いレンジを謳っていますが、32オーム仕様でありながら詳細な測定データが限定的です。S-Logic3テクノロジーによる音場制御は独自のアプローチですが、透明レベルの達成度合いが不明確です。スタジオモニター用途では重要なTHD、SNR、クロストーク等の具体的数値が公開されておらず、科学的検証に基づく評価が困難です。チタンコートドライバーの採用は技術的には意味がありますが、可聴範囲での測定優位性が明示されていません。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

40mmチタンコートドライバーの採用と独自のS-Logic3テクノロジー、ULEテクノロジーの組み合わせは技術的な独自性を示しています。ドライバーを耳内で中央配置せず僅かにオフセットする設計思想は興味深いアプローチです。FGCテクノロジーによる装着感改善や4.4mmバランス接続対応など、実用性向上への取り組みも見られます。ただし、これらの技術が最終的な音響測定性能にどの程度寄与するかの定量的データが不足しており、業界最高水準には及びません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

699ユーロ(115,000円)に対し、同等の機能と用途で測定データが公開されている代表的製品であるSony MDR-7506が10,000円で入手可能です。計算式:10,000円 ÷ 115,000円 = 0.087となり、0.1に四捨五入されます。MDR-7506は32オーム仕様で同様のスタジオモニター用途に設計されています。Audio-Technica ATH-M50xも20,000円で入手でき、装着感と音響隔離性能で評価されています。Ultrasoneの独自技術による付加価値を考慮しても、価格差は大きいです。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

Ultrasoneは老舗のドイツ系ヘッドホンメーカーとしての実績があります。一方で、本製品に関する保証期間や故障率(RMA)、MTBFの公式データは確認できません。公開情報に基づき、保証・サポート水準は業界平均相当と評価します。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.2}\]

S-Logic3テクノロジーやULEテクノロジーなど、独自技術への言及は多いものの、これらが科学的に検証可能な音質改善にどの程度寄与するかが不明確です。測定データの開示が不十分でありながら高額設定となっており、「オーディオ用」として価格を押し上げる従来型のアプローチに留まっています。同価格帯では汎用機器の組み合わせで大幅に優れた測定性能が実現可能であり、専用機器として存在する必然性が薄弱です。マーケティング重視で科学的根拠に基づく設計合理性が不足しています。

アドバイス

本製品は独自技術に魅力を感じる愛好家向けの製品です。しかし、スタジオモニタリングが主目的であれば、Sony MDR-7506やAudio-Technica ATH-M50x等の実証済み製品がコストパフォーマンスで大幅に優位です。115,000円の予算があれば、MDR-7506と高品質なヘッドホンアンプやオーディオインターフェースの組み合わせが可能で、測定性能と実用性において格段に優れたシステムを構築できます。Ultrasoneブランドへの特別なこだわりがない限り、より合理的な選択肢が多数存在します。技術的好奇心よりも実用性と費用対効果を重視する場合、推奨しません。

(2025.8.8)