Yamaha GT-5000

参考価格: ? 1170000
総合評価
2.1
科学的有効性
0.2
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.9
設計思想の合理性
0.2

1,170,000円のベルトドライブターンテーブル。アナログとして良好な測定性能ですが、vinyl固有の限界によりデジタル比較で忠実度が低く、73,000円のFluance RT85が同等アナログ性能を提供し、コストパフォーマンスは低いです。

概要

Yamaha GT-5000は、同社の5000シリーズに属する最高級ベルトドライブターンテーブルです。7,999USD(約1,170,000円)という価格設定で、5kgの重量級アルミニウムプラッター、24極2相ACシンクロナスモーター、クリスタルロック正弦波電源を特徴とします。223mmの直線トーンアーム、ワウフラッター0.04%以下という公称性能を誇ります。ヤマハピアノと同じ塗装工程による美しい外観も特徴的です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.2}\]

独立機関による実測値では、Newport Test Labs測定でワウフラッター0.06%(RMS無重み付け)、0.08%(CCIR重み付け)、7Review測定でワウ0.08%、フラッター0.04%、総合0.05%(DIN重み付け)となっています。SN比は公称90dBですがvinyl再生では典型的65-76dB、THDは0.5%以上です。これらはアナログとしてはまずまずですが、複数指標で失敗:ワウフラッターがデジタル0%に対し高い、SN比が105dB透明レベル未達(80dB以下問題)、THDが0.01%理想超え、ダイナミックレンジ105dB未達。最新デジタル技術のSN比120dB、SINAD 100dBクラス、ワウフラッターゼロと比較すると、アナログフォーマットの限界が忠実度を大きく損ないます。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

ACシンクロナスモーターのクリスタルロック正弦波電源、5kg重量級プラッター、直線トーンアーム設計など、独自の技術的アプローチが見られます。酸素フリー銅配線やピアノと同等の塗装工程など、製造品質も高水準です。業界平均を上回る技術投入が確認できますが、基本的にはベルトドライブターンテーブルの既存技術の延長線上にあり、デジタルオーディオの革新的進歩に比べて劣ります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

499USD(約73,000円)のFluance RT85がワウフラッター0.07%、SN比76dB(重み付け)を実現しており、GT-5000の実測値0.05-0.08%ワウフラッターと同等です。計算式:73,000円 ÷ 1,170,000円 = 0.062となり、四捨五入で0.1です。約16倍の価格差に対して測定性能の改善は認められず、コストパフォーマンスは低い評価となります。さらに、100USD以下のDACとストリーミングで優れた忠実度が得られるデジタル代替が存在します。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.9}\]

ヤマハは世界的に確立された音響機器メーカーであり、充実したサービスネットワークと保証体制を持ちます。製品の製造品質も高く、長期使用における信頼性は期待できます。5000シリーズとしてのブランド価値も確立されており、サポート面では業界平均を上回る水準です。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.2}\]

アナログ性能が高い点は認めますが、ノイズ・歪み・摩耗のあるvinylフォーマットに1,170,000円投資するのは非合理的です。デジタルで優れた忠実度を安価に実現できる現在、アナログの「暖かさ」主張に科学的根拠はなく、専用機器の必然性がありません。

アドバイス

GT-5000の購入を検討される方には、まずFluance RT85(73,000円)での試聴をお勧めします。ワウフラッター0.07%という同等性能を約1/16の価格で体験できます。1,170,000円の予算があるなら、高性能DACとデジタルストリーミングシステム(例: 20,000円以下のセットアップ)の構築により、はるかに優れたSN比・ゼロ歪み・利便性を得られるでしょう。アナログへのこだわりがある場合でも、まず安価な高性能ターンテーブルで満足度を確認することが賢明です。測定可能な音質改善は極めて限定的であり、アナログ神話を避けデジタルを選択するのが真の高忠実度です。

(2025.7.26)