Yamaha A-S801
ヤマハA-S801は100W/chのプリメインアンプで、ESS製DAC内蔵、DSD対応など同等機能を持つ製品中で高い価格競争力を実現し、優秀なコストパフォーマンスを持つ
概要
ヤマハA-S801は2014年に発表された100W/chのプリメインアンプで、32bit ESS SABRE ES9010K2M DACを内蔵し、PCM 384kHz/32bit、DSD128(5.6MHz)まで対応します。ヤマハ独自のToP-ART(Total Purity Audio Reproduction Technology)設計により、信号経路の最適化と筐体の防振設計を実現しています。同社の伝統的なHi-Fi製品ラインナップの中級機として位置付けられ、アナログ6系統入力にフォノ(MM)入力1系統、デジタル入力3系統を備えます。重量26.7ポンド(12.1kg)の堅牢な筐体と、12,000μFのブロックコンデンサーを搭載したカスタムトランスを採用しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.7}\]実測データに基づく評価では良好な透明度を実現していますが、理想レベルには達していません。THD 0.019%(定格出力時)は透明レベルに近い性能を示しますが、S/N比99dB(入力ショート時、200mV)、104dB(CDダイレクトモード)は105dBの閾値に届かず中間水準です。周波数特性10Hz-100kHz +/-1.0dBは可聴域を上回る拡張性を持ちますが、±0.5dBの理想偏差を超過しています。ダンピングファクター240により優秀なスピーカー制御能力を実現しています。内蔵DACのTHD+N -106dB@1kHz、ダイナミックレンジ116dBは現代的な高性能DAC水準に達しています。アナログ入力経由でチャンネル間偏差±0.043dB、デジタル入力経由で±0.008dBという優秀な測定結果を示し、一部で科学的に可聴な改善効果を提供しますが、全体として中間レベルです。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]ESS SABRE ES9010K2M DACチップの採用とPCM 384kHz/32bit、DSD128対応は当時としては先進的な仕様です。ToP-ART設計による対称アンプレイアウトと防振設計、カスタムトランスと大容量ブロックコンデンサーの組み合わせは技術的に合理的なアプローチです。ただし、DACチップは既製品の採用であり、アンプ回路も基本的にはAB級の従来設計を踏襲しています。2025年現在の視点では、より高性能なDACチップや効率の良いD級アンプ技術が一般的になっており、相対的な技術レベルは標準的な水準となっています。独自技術の投入度合いは中程度で、業界標準を満たしますが画期的な要素は限定的です。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]A-S801の約150,000円という価格は、同等機能・性能を持つ製品中で高い競争力があります。100W/ch出力、USB DAC内蔵、DSD5.6MHz対応、PCM384kHz/32bit対応という仕様を満たす競合製品を調査すると、Denon PMA-1700NE(約340,000円)、Cambridge Audio CXA81 MkII(約178,000円)、Arcam A15(約163,000円)といずれもA-S801を上回る価格設定となっています。これらの製品はより高性能なDAC(PMA-1700NEはDSD11.2MHz対応)や追加機能を持ちますが、基本的な100W出力とDSD対応DAC内蔵という同等機能においてA-S801より安価な選択肢は市場に存在しません。したがってコストパフォーマンスは最高評価の1.0となります。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.5}\]ヤマハブランドとして業界標準的な信頼性を持っています。メーカー保証1年間、国内正規代理店によるサポート体制は一般的な水準です。2014年発売の製品として十分な市場実績があり、重大な品質問題の報告は見当たりません。ただし、新興メーカーと比較して特別に優れたサポート体制や長期保証があるわけではなく、業界平均的な対応となっています。部品供給やアフターサービスは大手メーカーとしての安定性がありますが、近年のファームウェア更新対応などの先進的サポートは特に提供されていません。総合的に見て標準的な信頼性・サポート水準を維持しています。
設計思想の合理性
\[\Large \text{1.0}\]アナログとデジタル両対応による汎用性の確保、測定性能の透明レベル接近は合理的なアプローチです。AB級アンプ回路とトロイダルトランス採用による安定動作の実現も技術的に妥当です。特筆すべきは、100W出力とUSB DAC内蔵、DSD対応を同価格帯で実現している点で、これは他社製品がより高額で提供する機能を競争力のある価格で提供する極めて合理的な設計思想です。汎用機器(スマートフォン+外付けDAC/アンプ)では、同等の出力とDSD対応を実現するために複数の機器が必要となり、総コストや設置スペース、操作性の観点で専用機器としての優位性が明確です。価格競争力のあるアプローチによって高性能を民主化している設計思想は、現代的な合理性の観点から最高水準の評価に値します。
アドバイス
A-S801は100W/ch出力、USB DAC内蔵、DSD対応という仕様を持つ製品として高い価格競争力を実現した優秀なコストパフォーマンスを持つプリメインアンプです。同等機能を持つ競合製品がより高額で販売される中、約150,000円で購入できる価格設定は競争力があります。特にDSD対応のUSB DAC内蔵により、パソコンからの高音質再生が可能で、別途DAC購入の必要がありません。測定性能も透明レベルに近く、技術的に妥当な設計です。100W出力により中大型スピーカーの駆動も可能で、長期使用に耐える汎用性があります。同等機能でより安価な代替品が存在しない現在、A-S801はコストパフォーマンスに優れた選択肢として推薦できる製品です。
(2025.8.5)