YAMAHA HS5
業界標準として長年愛用されてきた白いウーファーを採用したヤマハのニアフィールドモニター。70Wの十分なパワーと54Hz-30kHzの広い周波数特性を持つが、測定データでは低域でのTHD増加と背景ノイズの存在が確認される。単体価格16,260円に対し、PreSonus Eris E5が15,180円で同等の測定性能を提供するため、コストパフォーマンスは良好な評価となる。
概要
YAMAHA HS5は、1970年代から業界標準として君臨してきた白いウーファーを採用した5インチのニアフィールドスタジオモニターです。70W(45W低域+25W高域)のバイアンプ構成で、54Hz-30kHzの広い周波数特性を持つ2ウェイベースレフレックス設計となっています。プロフェッショナルおよびホームスタジオ用途において、正確なリファレンスモニタリングを目指したヤマハの伝統的な設計思想を継承しており、音楽制作者に対して楽曲の問題点を正直に伝える「フラットな」特性を標榜しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]スピーカー専用基準に照らすと、HS5の性能は優秀レベルです。中域でのTHD 1%以下はスピーカー基準では優秀(0.1%以下)に該当します。低域100Hz付近でのTHD上昇もスピーカーの物理的制約を考慮すると、1%以上の問題レベルには達していません。周波数特性の意図的操作はスピーカー基準では±3dBが標準であり、この範囲内です。背景ノイズの存在は問題ですが、スピーカー基準のSNR 80dB以上を満たしていると予想されます。199.99USDという価格帯での5インチスタジオモニターとしては、測定性能は優秀レベルです。
技術レベル
\[\Large \text{0.6}\]HS5は5インチウーファーと1インチツィーターを組み合わせた標準的な2ウェイバイアンプ構成を採用しており、技術的には業界平均レベルの設計です。ヤマハ独自のノイズリダクション技術により、従来品比で6dBのノイズ低減を実現したとされていますが、依然として背景ノイズの存在が報告されている点で完全な解決には至っていません。Room Control機能により500Hz以下を2dBまたは4dB減衰させる機能、High Trim機能により2kHz以上を調整する機能を搭載していますが、これらはハードウェア的な周波数特性の問題を補正する後付け的な機能に留まっています。最新の技術水準から見ると、特に革新的な技術は見当たりません。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.9}\]HS5の単体価格は16,260円で販売されていますが、同等の5インチスタジオモニターとして、PreSonus Eris E5が15,180円で販売されており、基本的な測定性能では同等レベルです。JBL 305P MkIIは149USDで販売されており、0.2%のTHD性能、49Hz-20kHzの周波数特性、108dBのピークSPLを実現しています。最安同等製品であるPreSonus Eris E5との比較では、CP計算で15,180円÷16,260円 = 0.93となり、コストパフォーマンスは良好な評価となります。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.8}\]ヤマハは長年にわたりプロフェッショナルオーディオ機器を製造してきた実績があり、HS5についても基本的な信頼性は確保されています。故障率やRMA比率についての具体的なデータは公開されていませんが、業界での長年の使用実績から見て、物理的な耐久性は平均以上と考えられます。保証期間やサポート体制についても、ヤマハの国際的なネットワークにより一定水準のサービスが期待できます。ただし、設計上の背景ノイズの問題については、これが仕様の範囲内とされる可能性があり、完全な解決は困難な場合があります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]スピーカー専用基準で再評価すると、設計思想は部分的に合理的です。周波数特性の意図的操作はスピーカー基準では±3dBが標準であり、この範囲内であるため許容範囲です。スタジオモニターとしてのルーム補正機能は実用的な設計判断です。背景ノイズの存在は改善の余地がありますが、スピーカー基準のSNR 80dB以上を満たしていると予想されます。ただし、最新のデジタル信号処理技術やノイズキャンセリング技術の導入により、さらなる性能向上が期待できる価格帯です。
アドバイス
YAMAHA HS5は業界標準として長年愛用されてきた歴史と実績を持つ製品ですが、現在の技術水準と価格競争の観点から見ると、推奨度は限定的です。特に測定性能を重視する場合、同価格帯でより優れた選択肢が存在します。JBL 305P MkIIは119USDでより良い測定性能を提供し、PreSonus Eris E5はペア価格200USDでより高いコストパフォーマンスを実現しています。もしHS5の「伝統的な音」に特別な価値を見出す場合でも、背景ノイズの存在と意図的に操作された周波数特性が、精密なモニタリング作業に与える影響を十分に理解した上で選択することが重要です。限られた予算で最高の測定性能を求める場合は、他の選択肢を検討することを強く推奨します。
(2025.7.8)